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第40話 残るもの

 ――問題ありません。


 そう言った直後だった。


「……本当に?」


 エルナの声が、すぐ近くで落ちる。


「……」


 女は、答えない。


 ただ、歩く。


 流れの外へ。


「……」


 中央市場のざわめきが、少しずつ遠ざかる。


 だが。


 音は消えない。


 むしろ――


「……増えてる」


 エルナが呟く。


「……」


 さっきより、人の声が増えている。


 怒号ではない。


 呼び声。


 確認。


 報告。


「……」


 流れている。


 完全に。


 止まらずに。


「……」


 ミレイユが静かに言う。


「……維持されています」


「……」


「完全に」


 その一言は、評価だった。


「……」


 カイルが、軽く息を吐く。


「……やり切ったな」


「……」


 誰も否定しない。


 これは。


 明確な結果だ。


「……」


 だが。


「……」


 エルナが、女を見る。


「……」


「……ねえ」


 小さく。


「……大丈夫じゃないよね」


 その問い。


「……」


 女は、止まる。


 わずかに。


「……」


「……」


 沈黙。


「……」


「……問題ありません」


 もう一度、言う。


 同じ言葉。


「……」


 だが。


 今度は。


 少しだけ、遅い。


「……」


 エルナが、何かを言いかける。


 その時。


「……」


 足音。


「……」


 振り返る。


 あの男だ。


「……」


 ゆっくりと近づいてくる。


「……」


「……通したな」


 低く言う。


「……」


 女は、何も言わない。


「……」


「……止めなかった」


 一拍。


「崩さなかった」


「……」


 その評価。


 重い。


「……」


「……」


 男は、さらに言う。


「……この規模でやるとは思わなかった」


「……」


「……」


 カイルが、笑う。


「……だろうな」


「……」


「俺も思わなかった」


 正直に言う。


「……」


 エルナが、少しだけ胸を張る。


「……」


 ミレイユは、無言。


 だが、目は細い。


「……」


 男は、女を見る。


「……」


「……名前は」


 もう一度問う。


「……」


 女は、少しだけ間を置く。


 そして。


「……必要ありません」


 同じ答え。


「……」


 男が、わずかに笑う。


「……そうか」


「……」


「……なら」


 一歩、近づく。


「……次も来い」


 その一言。


「……」


 エルナが、目を見開く。


「……」


「……まだあるの?」


 思わず言う。


「……」


 男は、視線を外さない。


「……この街は、一つじゃない」


 一拍。


「……今日みたいなことは、何度でも起きる」


「……」


 現実だった。


「……」


「……」


 女は、何も言わない。


 ただ。


 少しだけ、目を伏せる。


「……」


 そして。


「……」


「……」


 小さく、息を吐く。


「……」


 その瞬間だった。


「……」


 視界が、歪む。


「……」


 ほんの一瞬。


「……」


 足元が、揺れる。


「……」


「……!」


 エルナが、気づく。


「……」


「……っ」


 女の体が、わずかに傾く。


「……」


 支える。


 反射的に。


「……」


「……大丈夫じゃないじゃん!」


 強く言う。


「……」


 女は、何も言わない。


 ただ。


 静かに、呼吸を整える。


「……」


「……」


 ミレイユが、一歩前に出る。


「……限界です」


 はっきりと言う。


「……」


「これ以上は」


 一拍。


「維持できません」


「……」


 その言葉。


「……」


 カイルが、頷く。


「……まあ、当然だな」


「……」


「一人でやる量じゃない」


「……」


 男が、少しだけ目を細める。


「……」


「……そうか」


 一言。


「……」


「……」


 沈黙。


「……」


 エルナが、女を見る。


「……」


「……ねえ」


 小さく。


「……これ、続けるの?」


「……」


 問い。


「……」


 女は、答えない。


 ただ。


 ゆっくりと、顔を上げる。


「……」


 視線は。


 再び、街へ。


「……」


 流れている。


 止まっていない。


 だが。


「……」


 このままでは、持たない。


「……」


 それを、理解している。


「……」


 そして。


「……」


「……」


 小さく、言う。


「……仕組みにします」


 その一言で。


 空気が変わる。


「……」


 エルナが、目を見開く。


「……」


「……一時的ではなく」


 一拍。


「維持できる形に」


「……」


 ミレイユが、静かに頷く。


「……構造化」


「……」


 カイルが、笑う。


「……やっと本題か」


「……」


 男が、ゆっくりと口を開く。


「……それは」


 一拍。


「ここでは簡単じゃない」


「……」


 その言葉。


「……」


 女は、静かに答える。


「……知っています」


「……」


「……」


「……だから」


 一歩。


「……やります」


 その一言で。


 次の戦いが、始まった。

流れは作れた。


でも、それを“残す”には、また別の戦いが必要になる。


ここからは「一度きりじゃ終わらせない」話です。


もし続きが気になったら、ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。

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