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翡翠の焔が世界を焦がす  作者: 借屍還魂
大罪スキル

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34.反動

 戦いには勝ったものの、四人に勝利を喜ぶ余裕は全くなかった。


「オレ、ちょっと、限界かも……」

「蓬莱くん!?」


 にこり、と笑顔を崩さず言った輝夜の顔が、じわじわ赤く染まっていく。前髪は汗で額に張り付き、呼吸も短く、少し上がっている。


 御門は困ったような輝夜の顔を一瞥して、淡々と告げた。


「スキルのデメリットか。【怠惰】なら、状態異常の解除もできたはずだ」


 辛いなら試すか、という問いに、輝夜は首を横に振る。我慢できないわけじゃないから、と笑って荷台に移動した。


「蓬莱くんの言う通り、ひとまず先に進もう。どこかに野営地があるはず」


 御門が眠ってしまうと、御者がいなくなる。鏡花が動けない現状、安全地帯に移動する方が先だろう。


 御門は納得し、頷いた。


「僕は眞金さんを馬車に乗せるから……」

「ああ、頼む」


 その間に、御門も馬車を動かすために準備しようとして、気付く。縮んだ体では、踏み台なしに、御者台に登ることができないことを。


「__八月一日、補助を頼めるか」

「……僕も、御者台に乗るよ」


 鏡花を荷台に乗せた京の手を借り、御門はようやく、御者台に乗ることができた。


 優秀な馬は姿の変わった御門に驚くことなく、ゆったりと歩みを進め始めたのだった。


「この辺りか」


 木々の開けた空間で、御門は馬の足を止めた。街道沿いに整備された野営地に到着したのだ。


「まばらだけど人気はあるし、簡易だけど窯もあるね」


 共同で利用しているのだろう、窯や水場があり、そこから少し離れた場所にテントが点在している。


「見られると微妙だし、早くテント建てちゃおう」


 京は他のテントの向きを確認し、見られにくい場所を選んで縄を張った。馬を止め、荷台からテントを下ろし黙々と設営していく。


「手慣れてるな」


 御門の言葉に、京は頬をかいて笑った。


「ベンチャー立ち上げる人って、アウトドア好きな人多いし、付き合いでね」


 後は任せて、二人を呼んできてもらえるかな。子供の体では大した手伝いもできないと納得した御門は、荷台にぶら下がるようにして、中の二人に声を掛けた。


「眞金、蓬莱、移動できるか」


 御門の声に、鏡花は体を起こして答えた。


「大丈夫」


 既に【無感動】の反動は消えており、怠さはあるが、体は思い通りに動く。でも、と鏡花は視線を隣に向ける。


「ごめ、ちょっと、動けない、かも……」

「肩貸そうか?」


 未だスキルの反動に苦しむ輝夜は、顔も赤く、息も上がりっぱなしだ。


 発熱しているのではないか、と心配になった鏡花は転ばないよう提案する。しかし、輝夜は困ったように眉を下げて微笑む。


「えっと、御門くん、来てくれる、かな?」


 輝夜が手招くと、御門は荷台によじ登り、輝夜の口元に耳を寄せた。そして、暫くしてから、子供らしくない尊大な溜息を吐き、頷いた。


「__典型的な症状だな」


 だが、スキルを試す価値はある。御門は輝夜に手を差し出した。テントまでは移動しろ、と。


 私じゃ、駄目なのかな。ふとそう思い、鏡花は頭を横に振る。御門は医者だ。補助の仕方にもコツがあるのかもしれない。


 全員でテントに移動すると、御門は腕を組んで立ち、言った。


「先に、八月一日から治療するぞ。俺も今日は体が戻りそうにないからな」


 ゴブリン戦で【傲慢】を使った時間が長かったこともあり、御門の姿が戻る気配はない。


 何かあっても戦力にならないだろう、と先に京を治療することになった。


「お願いします」


 御門が京に手を翳し、【怠惰】と短く宣言をすると、淡い緑の光が京を包んだ。


「どうだ?」

「わ、手の皮剥けてたの治った。凄いね」


 手を握っては閉じてを繰り返し、違和感がないことを確認した京が頷く。


「かなり、眠気がくるな。蓬莱、の方も……」


 ふらふらと頭を揺らしながらも、御門が輝夜に手を翳す。そして、先程と同じ光が輝夜を包むが、パチ、と光が弾けた。


「スキルの、効果がない?」

「駄目かぁ……」


 輝夜の表情は、辛そうなままだ。スキルを使っていた御門も、手応えの違いがあったらしい。


 ぐらぐらと揺れる頭を手で押さえながら、御門は舌ったらずに輝夜に指示を出す。


「仕方が、ない。なるべく、体をひやして、マメに、みずを__」


 言い切る前に、御門はその場にうずくまる。


「黛くん?」


 鏡花が膝をつき、肩に手を置くと、そのままころんと鏡花の膝に転がってきた。


 先程まで深々と刻まれていた眉間の皺は、すっかり消えており、外見年齢相応のあどけない寝顔だった。


「寝ちゃったか……」


 失敗しても、スキルの反動はしっかりあるらしい。御門はそのまま寝かすことにして、先に輝夜について話さなければ、と鏡花は口を開く。


「輝夜くん、良かったら、私が看病__」


 言い切る前に、鏡花の言葉は遮られた。


「ごめん、鏡花ちゃん。今日は、京くんに頼むよ。鏡花ちゃんは、御門くんをお願い」


 鏡花は、わずかに、目を見開いた。本当に、付き合いの長い輝夜でしかわからないほど、少しだけ。


 その輝夜も、体調不良があって、その表情を見逃した。


「そうだね、僕も、それがいいと思う」


 明るく、僕に任せてと笑う京に、鏡花はすぐに表情を戻して頷いた。


 輝夜は細身だが、鏡花より背が高い。体格の良い京に任せる方が安心だろう。少し考えればわかることだ。納得して、再び、小さく頷く。


「__わかった。何かあったら呼んでね」


「眞金さんも。大丈夫と思うけど、何かあったら叫んでね」


 御門はすっかり寝ている。大丈夫だよ、と伝えれば、京が輝夜に肩を貸しテントを出ていく。


 鏡花は御門を抱き上げ、寝袋に移動させて。その隣に自分の寝袋も敷き、すぐに、眠りに落ちた。

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