【第47話:激突】
獣人の老将・グラウスが、地を穿つように大槍を突き出す。
対するクロナはその動きを読み、絡みつく木の根を盾にしながらかわす。
「……ずいぶんと動けるじゃねぇか、年寄り」
「ほう、舐められたものだな。お前がどれほどの異形か、この老いぼれに見せてみろ!」
槍と枝が激しくぶつかり合い、爆ぜるような衝撃音が森に響いた。
クロナの踏み込み。
その足元から根が蠢き、まるで獣の脚のように地を蹴る。
飛び上がったクロナが、空中から拳を振り下ろす。
「喰らえ――ッ!」
しかしその一撃を、グラウスは難なく槍で受け止めた。
「小手調べは済んだな」
瞬間、グラウスの周囲の空気が変わった。
大地を踏みしめる一歩が、大気を押し出す。
「王族に手を出すなど、万死に値する。だが――貴様らを処するのはこの手で十分だ!」
グラウスの大槍が、稲妻のごとく連撃を繰り出す。
クロナはそれをすべて捌きながら、地面の根を操って牽制し続ける。
だが、力と経験の差は如実に表れていた。
「ぐっ……!」
かすった一撃で肩を裂かれ、クロナは後方へ跳ぶ。
その隙を突き、獣人たちの一部が森の奥へ回り込む。
「包囲は完了しました!」
「敵の逃げ道は断った。――全滅させる!」
グラウスの号令が響く。
ゴブリンたちがざわついた。
「クロナ様……!」
「こいつら、本気で殺しにきてやがる!」
クロナは息を吐き、背後にいる仲間たち、そしてティナに目をやる。
「……ここで退いたら、また森に血が流れるだけだ」
獣人たちの牙が剥き出しになり、矢が番えられ、槍が突き出される。
「徹底抗戦、だな」
クロナは静かに言い、地面に手をついた。
地中の根がうねり、仲間たちの周囲を包むように展開する。
「守るぞ。俺たちの居場所と、……ここにいる命、全部だ!」
森が再び吠える。
獣と異形の怒声が重なり、激戦の幕が切って落とされた。




