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15話 ビズ国へ

遅くなってすみません! 矛盾の修正に加え、伏線の回収も一つ忘れていたので、その部分を突っ込んでいて遅くなりました。

私が読み手の場合、週末に一気に掲載されるのが読むには嬉しいのでそうしているのですが、予告したくせに遅くなってしまったので、たまには毎日一話ずつ載せてみます。

それではどうぞ!



 ビズ国 王宮 王の間。


この王の間は、上部に窓が多く、しかも開け放たれており、風通しの良さを考えられているようだった。そして、王座は、ソファーのように横に長く、きちんと腰掛ければ三人は座れそうな幅だ。


そこに、年の頃は五十代後半だろうが、まだまだイケメンと言えるような精悍な顔つきの男性が、頬杖を突きながら座っている。


ビズ国王、ナバーン。


若き日に、勇猛果敢で鳴らした男だ。今は、厳しいながらも、賢王と国民に慕われている。


「聖騎士(パラディン)に聖女か。すばらしい。俺の国には、残念ながらそのような希少職業(レアクラス)はいない」


 片膝を突いて跪(ひざまず)いていた本条太陽と前原香織は、そのまま頭を下げた。


「護衛に、騎士、斧騎士、槍騎士か。アスカ国の戦力は飛んでもないな」


 ナバーンは笑った。鈴木元気、丸山太一、田中学も頭を下げる。


「贈り物には感謝する。アスカ王にこちらからも何か送りたいが……釣り合う物があるかな……?」


 ナバーンは、人差し指でこめかみをくりくりとしながら考える。すると、本条が顔を上げた。


「よろしければ、塩を頂きたいと思います。アスカ王 ゲア様も喜ぶかと」


「塩か……。良いだろう。好きなだけ持って帰るが良い……」


 本条に続き、前原、鈴木、丸山、田中も頭を下げた。





 本条達が王の間を去った後、ナバーンの元へ白髪の側近が近づく。


「ナバーン様、いかがで?」


「狙いは、俺の国への圧力だろうな。聖騎士(パラディン)に聖女だが、間違いなく本物だろう。やはり、勇者召喚に成功したのは間違いないな」


「異世界より来たのは、四十人程だと言う事ですが……」


「半分の二十人をアスカ王城の守りに残し、俺の国を含む周辺の四つの国に、五人ずつ送ったのだろう。塩を欲しがったのも戦争を連想させるためだ」


「アスカ国には海が無いですからな。……となれば、こちらも戦争の用意を?」


「いや、すぐに戦争を始めるのであれば、さすがにあの愚王ゲアも塩を欲しがるなど露骨な事をしてこないだろう。となれば、逆に、最低 半年の猶予はあるだろうな」


「しかし、四十人の希少職業(レアクラス)ですぞ。アスカ国に有利な状況で、なぜ半年も?」


「……少し前にあったと言う、魔獣大氾濫(スタンピード)が影響しているのか、もしくは、勇者の実力不足だな」


「では、先ほどの勇者達の力量は、それほどでも無かったと?」


「ああ。俺も鈍(なま)ったが、それでもあの聖騎士(パラディン)には負ける気がしないな」


「ナバーン様。若き日のような無茶はなさらないように願います……」


「分かっている。だが、愚王の好きにはさせん。あと、この事は、我が国の最高戦力にも伝えておけ」


「御意に。拳聖を一度呼び戻します」


 ビズ国王 ナバーンは、厳しい顔のまま頷いた。





「ちっ……。蒸し暑い国だよなぁ。日本の夏を思いだすってんだよ」


 鈴木の言葉に、丸山と田中は頷く。ぽっちゃり体系の丸山は、汗をだらだらとかき、口を開けてゼイゼイと息をしている。鎧を着ているのが厚さに拍車をかけているのだが、ここは安全な王都とは言え、他国なので万が一の為に脱げない。


 そんな三人の前を歩く本条と前原は、ビズ王都の街並みを、楽し気に眺めながら歩いている。


「アスカ国は、ヨーロッパ中世そのままって感じだけど、ビズ国は、そこにアフリカっぽいテイストが少し入ってるよね」


「うんうん、わかる! 服の生地も薄いよね。でも、人種は殆ど一緒かなぁ」


「まあ、アスカ王都からそこまで離れていないしね」


 本条と前原は、まるでデート中のカップルのように足取りが軽い。そんな二人を、鈴木達三人は、足を引きずりながら羨まし気に見て歩いている。


「しっかし、俺達 もてねーよな。なんでだろ」


「男女半々なんだけどなぁ。ってか、ぼちぼちカップル誕生してるよな」


「山下と高宮だろ? あと、倉木も怪我の看病してくれた大沢と良い感じだって話よ」


「俺が腕を折った時、女子 誰も看病してくんなかったけど……」


「倉木もたいがい性格悪いのにな。女ってだけで得だよな」


「ストレス溜まるよなぁ」


「オタ一号と二号を王都から追い出すんじゃなかったよな。あいつらで発散したいわぁ」


 蒸し暑さ、更には、アスカ国から距離にして三百キロ、馬車で計二十時間揺られた事で、鈴木達は疲労が濃かった。傷なら聖女の前原が治せるが、気力を回復させる魔法は無い。


「けどよ、さっき肉串屋のおっさんに聞いたんだけど、塩をもらいに行く村って、犯罪者の村らしいんだよ」


「え? やべえの?」


「いや、犯罪者の子孫? みたいな。今は大人しいらしい。だから、犯罪者なら、……ちょっとぐらい触ってもいいかなぁって」


 丸山がそう言うと、鈴木と田中は下卑た笑いをする。


「そりゃー良いや。前原みたいな巨乳がいればいいけどなぁ」


「オタ二号みたいな絶壁は勘弁だぜ」


 三人は、街の女性を、いやらしい目で見ながら歩いた。






「ふぇーっくしゅん! こんちきしょう連邦軍っ!」


 豪快なくしゃみに、田渕は唖然とした。


 大家は、人差し指で鼻を擦りながら嬉しそうに言う。


「どこかで、ショワ少佐が私の事を噂しているお」


「どこかも何も、アニメだから……全五十話、決まった場所で決まったセリフを話しているんじゃ?」


「アニメは実話だお」


「……え……哲学?」


 一見、大家がおかしいようだが、アイドルの話となれば、突っ込みとボケが逆転するので、お互い様だったりする。


 二人は、森の中の冒険者道(みち)を進んで行く。馬車が通れる程には広くは無く、徒歩の冒険者や商人が歩く道だ。


「ガンガンガン、ガイグダぁーン! 眠れる獅子を起こすのわぁ、憎き連邦のぉ♪」


「いつも歌ってるのと違うね?」


「これは三番だお!」


「へぇ、三番まで歌があるんだ?」


「いや、私が作ったお」


「…………さすがだね」


 田渕と大家は、ナンの村の素材屋店主ガワから、海沿いにあるエンと言う村へお使いを頼まれていた。かなり距離があるので最初はジープで走っていたのだが、趣が無いと大家の提案で、今はジープを下りてハイキング気分で歩いている。


「ふぅ。ビズの国って、暑いよね。大家さん、水 もらえるかな」


「あいよっ!」


 大家が右手のスマホを操作すると、田渕の目の前に銀の水筒が現れた。田渕はその水を飲み干す。


大家が今はタブレットを使っていないのは、スマホの逆側の手には、ソフトクリームがあるからだ。田渕と大家は、手に持ったソフトクリームをぺろぺろと舐めながら、エンの村を目指す。特に急ぎのお使いでは無かった。



「へー。おいしそうな物 食べてるねー」


 突然、そんな声がしたので大家が隣を見ると、髪の長い金髪の女性の顔があった。


「ぐぁじあdzさこrぞるそぶcふじこ!」


 大家は、ソフトクリームを放り投げて驚いた。その宙を舞うソフトクリームを、金髪の女性はキャッチする。


「あまーい匂い! 一口貰って良い?」


 大家は口をあんぐりと開けながら、首を縦に振った。


「おいし! 何これー!」


 女性は、ほっぺを押さえながら飛び跳ねた。


 現れた金髪の女性は、一人旅のようだった。背嚢(リュック)を背負っているが、行商人なら護衛を付けているはずなので、冒険者かもしれないと田渕は思った。


背は田渕よりも高く百七十センチ程で、体は引き締まっている。この世界の女性は、恐らく縫製の難易度の関係かワンピースを着用している事が多いのだが、この女性は薄手のシャツに胸当て、下はショートパンツだ。美脚がすらりと伸びている。


「私はアリア! あなた達はー?」


「田渕です」


「お……大家……」


 当然だが、大家の人見知りが発動した。


「タブチにオーヤ? 変な名前って事は、アスカ王国の人ね?」


 アリアに言われて、田渕ははっとした。そう言えば、イーノ、スルギ、ヤーラ、そしてガワにルム、と、アスカ国の人の名前は微妙におかしい。異世界だからそうだと思っていたが、周辺の国の人からも妙だと言う印象がある事をこの時に気付いた。


「アリアさんは冒険者ですか?」


「いやー、自由気ままにしてるから、冒険者だと認められているかどうかねー。今だって、たまにはギルドに顔を出せって事なのかー、呼び出されたんで近くの村のギルドへ行くところなのー」


 アリアは小さな紙を摘まんで見せる。魔法を使った呼び出し方法なのかもしれないと田渕は思った。


 アリアは結局、食べかけのソフトクリームを丸ごと貰って、田渕達と別れた。お互いの行き先は、まったくの別方向のようだった。



 また新しいソフトクリームを出して食べる大家に、田渕は言う。


「一人で旅するって事は、アリアさんって結構強い冒険者なのかな?」


「いや、上位冒険者なら、ワタシ達が殆ど荷物を持たずにいる事を不思議に思うはずだお。よっぽどの天然でなければ、多分駆け出しの冒険者だお」


「そっか。歳も僕達とそれほど変わら無さそうだったしね。まあ、少し上かな」


 田渕と大家は、南西へ向かって進む。荷物は、タブレットが入っているショルダーバッグ一つだけだ。だが、大家の技術(スキル)でこのタブレットに、食料だけでも二人で消費する一年分が収納されている。


 更には、


「もうハイキング体験は十分だお。次は、キャンプ体験するお」


 と、大家が言うと、タブレットからはBBQ用グリルや炭までもが出て来る。大家の技術(スキル)は、異世界生活で万能に近い。


「BBQって、なんだかんだで、大家さんってリア充に憧れがあるんじゃ?」


「ショワ少佐がいつBBQに誘ってくれても良いように、足手まといにならないように練習するんだお。これは妻としての嗜(たしな)みだお」


 どうやら、ジムオン軍が地球に降下した時、宇宙育ちのショワ少佐が慣れないキャンプにて肉を焦がしてしまうコメディシーンがあったとの事だ。


 早めの夕食を終わらせると、大家は、ガイグダンにてスパイのミナミが弟達と住んでいた木造一戸建てを出す。そして田渕が「♪わたし達以外は誰も入れない恋の結界♪」を張り、二人はふかふかのベッドで安心して就寝した。


もはや手が付けられない無敵な二人だった。


 


次話は 5/16 21時投稿です。

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