第82話 新米貴族は賭け試合を観る
二人の戦士の殺し合いは、禿げ頭の剣士が勝利で終わった。
鋭い一撃が長身の男の胸を穿ったのだ。
鉤爪を粉砕するほどの破壊力だった。
その直前、蹴りで虚を突いたのも大きかったろう。
全体的に見応えのある試合展開で、個人的には満足できた。
観客も大いに盛り上がっている。
その後も賭け試合が行われた。
人間同士での殺し合いが主で、最初のような一対一ばかりでなく二十人が同時に殺し合うような試合もあった。
かと思えば、魔物と人間が戦ったりする。
奴隷や剣闘士が死ぬ様を観客は楽しんでいた。
悪趣味な娯楽だと思うが、オレも殺戮が大好物なので彼らを否定できる立場ではない。
それに、こういった催しで国は機能している。
民衆の息抜きは大切だとラトエッダが言っていた気がする。
(ロードレスなんて常に戦争状態だったからな)
オレが侵略し始めた時期から沈静化しているものの、悪名高きロードレス領では殺し合いなんて日常茶飯事だ。
一応、五人の王を配下に置いて制圧したが、末端では相変わらず戦いが繰り広げられている。
面倒な上に止める義理もないので放置していたが、理に適った判断だったのかもしれない。
あまり厳しく取り締まってしまうと、ロードレスの住民は暴走しそうだ。
そういったことを考えながら観戦していると、やがて兵士達が部屋にやってきた。
先ほど案内役だった二人組である。
「ルード・ダガン様。そろそろお時間です」
「ああ、分かった」
オレは立ち上がると武器の収められた容器に近付く。
そこから鉈を抜き取った。
刃が厚く、うっすらと血の染みが付いているものだ。
あまり砥がれていないものの、人体くらいは切断できるだろう。
鉈を腰に吊ると、続けてサーベルを掴み取った。
片刃は切っ先に進むにしたがって緩やかに反っている。
目立った特徴はないが重心がちょうどいい。
純粋に扱いやすそうだ。
サーベルを片手に握る俺は、小さなナイフを懐に仕舞う。
ちょうど投擲に使える大きさで、不意を突くのに最適である。
準備のできたオレは兵士達について移動する。
暗い廊下を進んで連れられた先は石造りの空間だった。
いくつもの長椅子が並べられている。
その空間の奥は扉もなく開放されていた。
闘技場の中央部が見える。
ちょうど戦いが佳境に差し掛かったところだ。
ここがどうやら最終的な待機場所らしい。
今は長椅子に誰もいない。
本来は出場する戦士達が待っているのだろう。
オレは長椅子の一つに腰かける。
ランクレイの姿はない。
こことは正反対の位置に同じような待機場所があるそうなので、そこにいるのだと思う。
位置的に見えないのが残念だ。
向こうも覚悟しているに違いない。
(あの女はどうやって対抗してくる?)
こうして滞りなく進行しているのを見るに、ランクレイも準備が整っているはずだ。
まともにやり合えば勝てないと分かっていると思うので、きっと何らかの策を打ってくる。
それが何なのか不明だが、オレの期待を裏切らないでほしいものである。




