実は
悶々とした日々を過ごしていると、家に柚湖さんがいた。
ちょうどトイレから出てきたみたいだ。
「今日は…兄貴と勉強?」
「はい、もちろんですとも」
…
もちろんなんだ…
てかさ、勉強だけなんだよねー⁉︎
それって、恋の勉強じゃなかろうね⁉︎
「ねぇ、それって…ちゃんと勉強してるの?」
「そりゃ、…もちろんですけど?」
「恋の勉強とかしてたりして…なんてね」
「それはもう、終わりましたけど?」
⁉︎
マジかよ…
兄貴のやつ‼︎
いい加減にしやがれってんだよ‼︎
夕食どき、兄貴にガツンと言ってやることにした。
「あのさ、兄貴」
「うん?どうしたの?そんな怖い顔して」
「彼女…」
「彼女?」
「いい加減さ、三股とかやめた方がいいんじゃないかな」
「あー、うん。実は、にいちゃんさ、愛海ちゃんと付き合ってるよ。」
⁉︎
え?
いつのまに、あの二人と別れたんだよ⁉︎
てか…
さっき柚湖さん言ってなかった?
恋の勉強終わったって。
……
え、終わったってその終わったなの?
終了のお知らせ?
そういうこと⁉︎
それにしても…ずいぶんと平然としてたね?
あんまり兄貴に執着してなかったのかな?
「え、てことは…あの二人には、もう勉強教えないの?」
「ううん、恋以外の勉強なら教えるよ。」
「なんだよ…それ」
「まぁ、色々あるのよ」
「なにがだよ」
「それは、企業秘密ってやつよ。弟くんには、難しい問題よ」
…
兄貴のやつ、オレのことバカにしやがって。
「で、言ったの?」
「なにを?」
「兄貴が家政婦扱いしてる菜美さんに愛海さんのこと」
「まだだよ。てか、家政婦はないだろ…」
「めっちゃ家政婦じゃんかよ‼︎ボケが‼︎」
「どうしたんだよ…そんな怒んなって。」
「普通、怒るだろ」
……
「とりあえず飯食おうぜ。冷めちまう」
兄貴は、何かをごまかすかのように、ご飯をガブガブと口に頬張った。
そして、少し微笑んだ?
やっぱり兄貴、おかしいって。
カチャカチャと食器の音だけが部屋に響き渡った。
オレが菜美さんに直接言ってやろうかな。
あいつは、愛海さんを選んだんだって。
でも、オレから言われてもな…
やっぱり兄貴が直接いうべきなんだよな。
次の日の夕方、菜美さんがやってきた。
今日は、菜美さんが勉強を教わる日らしい。
兄貴は、オレがまだ部屋に入ってもないのに、俺さ愛海ちゃんと正式に付き合うことになったよと、軽く言っていた。
…なんでそんなに軽いんだよ。
すると菜美さんもなぜか、普通におめでと〜と、祝福しているんだけど?
なに、この二人…
意味わかんな…
もしかして、菜美さんの強がり?
ほんとは、泣きたいのにオレがいるせいで、本音がぶつけられない?
オレは、黙って部屋に入ったんだけど…
なんか普通に勉強してるっぽい。
菜美さんって…いまどんな感情なわけ?
よくわからないが、勉強が終わって兄貴は、出かけてくるねとどこかへ行ってしまった。
菜美さんは、普通にエプロンをつけた。
⁉︎
「なっ、なにしてんだよ?」
オレの言葉に菜美さんは、夜ご飯作るんだよ?と言ってきた。
けなげかよ‼︎
「もういいじゃん。兄貴は愛海さんを選んだんだぞ?それでも兄貴に尽くすのかよ⁉︎」
…
菜美さんがきょとんとしながら、
「え?別にそんなんじゃないよ?」
と、不思議そうにした。
えっ?
「だって、あんた…兄貴と付き合ってんだろ?好きなんだろ?」
「あー、あれね。付き合うってか、ふり?練習的なね。そもそも、愛海ちゃんも柚湖ちゃんも、恋のお勉強を教わってたの。でも、愛海ちゃんは、本気で好きだったのかもね!てか、わたしが尽くしたいのは…弟のほうだよ?」
⁉︎
はい⁉︎
弟って…
「え、…オレ?」
「うん。わたし、ずっと待ってたんだよ?なんてね…」
……
「え、マジ?」
「うん…でも、それが嫌ならもう来ない。なんか、ごめんね。年上おばさんが押しかけてご飯作るとか、キモいよね。わたし、帰るね。」
…
「キモくなんかない。オレさ…菜美さんが不憫で仕方なかった。ずっと、オレなら幸せにしてあげれるのにって、ずっと思ってた。だから…オレ年下で頼りないけど、生涯菜美さんを幸せにしたいと思ってる。」
「あり…がとう。生涯とかプロポーズみたいだよ、でも、嬉しい」
「オレ、無意識にプロポーズしてんじゃん…そんな重く受け止めてもらわなくてもいいんで、これからよろしくお願いしますでいい?」
「うん、よろしくお願いします!」
兄貴の三股は、オレの誤解に近かったようだ。
そのあと、きちんと兄貴とは和解して、平和に暮らしている。
菜美さんは、よくよく知ると同い年ではないけど、兄貴の幼馴染で、同じマンションに住んでいたオレの憧れの女性だった、なぁさんだったことが判明した。
しばらくばあちゃんちに住んでいたから、菜美さんを生徒会長兼、兄貴の三股彼女としか認識していなかったオレの浅い脳みそに驚くばかりだった。
——
「生徒会長、今日帰りデートしない?」
「んもー、その呼び方やめて」
「じゃあ、通い妻?」
「いやだ…」
「「あはは」」
オレたちは、手を繋いで笑い合った。
おしまい♡




