プロローグ
はじめまして、お越しいただきありがとうございます。
本作は、気になる相手との「最初の第一歩」を踏み出せずに悶々ともがく、等身大の葛藤から始まる物語です。
ほんの数メートルの距離が、果てしなく遠く感じられるもどかしさ。頭の中でシミュレーションを繰り返しては空回りする主人公の姿に、少しでも共感していただけたら嬉しいです。
二人の距離がどう縮まっていくのか(あるいはすれ違うのか)、ぜひ最後まで見守ってください!
「おい……マジで言ってるのか?」
鏡に映っていたのは、見慣れたボサボサ頭の自分ではなく、きちんと整えられた黒髪の女の子——今まで話したこともなかった、同じクラスの白石だった。正直、下の名前も覚えていない。なんか現代的な名前だったような気もする。
これまで話したことがないのは、なんか、話し掛けにくそうなオーラを放っているからだ。それと、彼女には何の用事もなかったし、部活などで一緒になることもなかったからだ。
━━それはそうと、僕が彼女になったとうことは、彼女の方はどんな状態でいるのだろう?
興味があったというより、もし彼女が僕になっているのだとしたら、何かわからないこと、困ったことはないだろうかという心配の方が先立つのだ。
「ねえ、そこの君——なんて、初めての会話で言う言葉じゃないよな」
頭の中で繰り返す言葉があまりに不自然で、思わず自嘲気味に息を吐いた。
━━うむ。確かに、鏡に映った自分自身、というより白石の顔を見て、僕は瞬間的に恋に落ちてしまったようだ。 だけど、よくよく考えてみれは.僕が彼女だということは彼女は僕の姿をしている考えて間違いない。してみれば、僕が彼女に、告白するということは、彼女が特に告白するということになるまいか?
いや、必然的にそうなる。これが彼女の本意でなかったらしたなら彼女にとっては迷惑な話でしかないのだ。
だが、そうかと言って、僕の体になってしまった彼女を放っておくわけにはいかない。何か突発的な 困りごとがいつ起こるかわからないのだ。よし、彼女を守ろう!次に入れ替わりが起きてお互いの元の体に戻るまでは
いきなり話しかけたら警戒されるだけだし、かといってタイミングを伺いすぎれば、永遠にこの距離のままだ。
「『あのさ、ちょっといい?』……いや、怪しすぎるだろ」
ノートの隅に走り書きした言葉を、ペン先でぐしゃぐしゃに塗りつぶす。
日常の自然な流れを装うか、それとも素直に偶然を装って挨拶してみるか。胸の鼓動が早くなるのを感じながら、彼女の背中を遠くから見つめ、次の言葉を必死に手探りしていた。
そこで決定的な、思考の矛盾にぶち当たってしまった。
━━━彼女になっているということは、彼女の方は僕になっているということ なんじゃないのか?きっとそうだ。の場合 この彼女の見た目をしている僕が、彼女(僕の姿をした)に話し掛けるというのはどういうことだ?それは、強制的に 彼女(中身僕)に僕の姿をした彼女に告白させるようなものじゃないか。いや、僕の気持ち的にそういう茶番は受け付けられない。僕はこの入れ替わりをきっかけとして彼女に興味を持ち始めはしたが、僕の姿をした彼女に興味あるわけではなかった。自分自身に告白する気はない。しかし、何とかして彼女を救ってあげなければ……。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
姿が入れ替わってしまった二人が、これからどんな距離感で関わっていくのか……。ぎこちなくも不器用な二人のやり取りを、あたたかく見守っていただけたら嬉しいです。
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それでは、また次のエピソードでお会いしましょう




