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特設短編:恐怖と共に、彼女を崇めよ

薄暗く、静寂が支配する告解室こっかいしつの中で、神父はがたがたと同じ足の震えを止められずにいた。呼吸は酷く乱れ、異常な速さで脈打つ自らの心臓の音と競い合うようにして喘いでいる。聖なる神職の衣は冷や汗でびっしょりと濡れそぼり、まるで氷の川から這い上がってきたばかりのように、彼の肌にねっとりと張り付いていた。

「……あなたが告白したい罪とは、何ですか?」

木格子の向こう側から、静かな声が響く。神父は足元の木の床を見つめていたが、その視線はあの葬儀の夜という過去の記憶に釘付けになっていた。

「私は……見てしまったのです。お目にかかってしまったのです、あのお方を」

「それは、誰のことですか? あるいは、何のことですか?」

「わ、私にも分からないのです。あれが悪魔なのか、天使なのか、あるいは現世うつしよに降臨された女神なのか……私には、さっぱり分かりません!」神父は狂わんばかりの苛立ちを爆発させるように声を絞り出した。「私は恐怖のあまり、あのお方を『悪魔』と呼びました。しかし、あのお方は聖水に対して、何一つとして拒絶の反応を示されなかった……」

「あなたが罪の意識を抱いているのは、自らの無知のせいですか? それとも、あのお方から目を背けてしまった(逃げ出してしまった)からですか?」

「あのお方の御光臨は、月によって祝福されていました。それなのに……私はあのお方から目を背け、逃げ出した。私は、あのお方が恐ろしかった……っ!」

「ならば、答えは最初から、ただ一つしかありません」

「……答え、ですか?」

「もしあのお方が女神であるならば、ただその身を捧げて崇めなさい。そして――もしあのお方が『悪魔』であるならば、その圧倒的な恐怖と共に、ただ盲目的に彼女を崇め奉りなさい」

あとがき:

これにて、第1章は無事に幕引きとなります。皆様に第1章を楽しんでいただけたなら、作者としてこれ以上の喜びはありません。現在、第2章を鋭意執筆中ですので、ぜひ楽しみにお待ちいただければ幸いです!

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