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62話 十二大ダンジョン05

 世界の中心の空洞には、一つのテーブルと十二の椅子が置かれている。

 十二の椅子のうち、七の椅子が埋まり、それぞれにダンジョンが座っている。

 

 アクアマリンのダンジョン。

 ガーネットのダンジョン。

 トパーズのダンジョン。

 エメラルドのダンジョン。

 アレキサンドライトのダンジョン。

 サファイアのダンジョン。

 ルビーのダンジョン。

 

「ジルコンもやられたか。きやつは無限の命をもつ故、敗北はないと思っておったが」

 

「生物としての肉体を持った時点で、無限が有限になったと気づくべきでありんしたな。ジルコンも……わっちらも……」

 

 アレキサンドライトのダンジョンとガーネットのダンジョンが、顔をしかめる。

 

 ジルコンのダンジョンは、無限の試練を司る。

 その命は無限。

 否、無限だった。

 しかし、魔物化し、エネルギーが有限となったことで、その命も有限となっていたのだ。

 そして、有限となった命は、ラウンドとバリオンという高い生命力を持つ有限の生物の前に屈し、消滅する結果となった。

 

「貴様の能力にも影響が出そうだな、ガーネット?」

 

「黙りんさい。言われなくとも、わっちが一番理解しているでありんす」

 

 アレキサンドライトのダンジョンの言葉に、ガーネットのダンジョンが不快そうに返す。

 そう、エネルギーが無限から有限になった事実は、なにもジルコンのダンジョンにのみ影響がある話ではない。

 それは、無限のエネルギーを前提とした戦い方をするダンジョンに、等しく訪れる弱体化である。

 ガーネットのダンジョンにも等しく。

 

「まあ、余には関係のないことだがな。がっはっは!」

 

 アレキサンドライトのダンジョンは、大声で笑う。

 空洞に、笑い声が響く。

 誰もそれを止めない。

 誰も一緒に笑わない。

 ただ、笑い声が響く。

 

「がっはっは!……さて、ではそろそろ本題と行こうか」

 

 ひとしきり笑った後、目線をアクアマリンのダンジョンへと向ける。

 

「勝機はあるのか? アクアマリン。貴様の能力は、ベリドットの能力によく似ておる。何の策もなくば……滅ぶのは貴様ぞ?」

 

 アクアマリンは、目を閉じていた。

 青い長髪を自身の膝にかけ、手でさらさらと撫でる。

 まるで、自身の髪を慈しむ様に。静かに手を動かす。

 

「聞いているのか、アクアマリン?」

 

 返答がないことにいら立ちを感じ、アレキサンドライトのダンジョンが少々声を荒げる。

 プライドの高さゆえに、アレキサンドライトのダンジョンは、自身の言葉を無視されることを嫌う。

 怒りの読み取れる表情で、アクアマリンのダンジョンを見る。

 

 もっとも、プライドが高いのは、アクアマリンのダンジョンも同様。

 髪をなでていた手を止め、ゆっくりと目を空ける。

 青い瞳が、アレキサンドライトのダンジョンの姿を捉え、一言放つ。

 

「耳障りよぉ」

 

 甘く、冷酷な声が、静かに響く。

 アクアマリンのダンジョンから放たれた声は、四方八方へと散り、壁に反射し、散った声が再び集まる。

 そして、集まった声の一つが、アレキサンドライトのダンジョンの耳に入る。

 まるで、何度も話しかけられたように、重なる一言が、アレキサンドライトのダンジョンの耳を潤す。

 

 アレキサンドライトのダンジョンの表情が歪む。

 

「貴様!! 誰に向かって!!」

 

 アレキサンドライトのダンジョンが立ち上がる。

 怒りで歪んだ表情を、アクアマリンのダンジョンは退屈そうに眺め、溜息を一つこぼす。

 

「騒がしい男は嫌われるわよぉ」

 

 一言と共に。

 

 アレキサンドライトのダンジョンの目に力が入り、握る手に力が入り、ぎりぎりと歯ぎしりが大きくなる。

 もしもダンジョン同士での争いが可能であれば、すぐにでも始まっていただろう程の怒りが、ぴりぴりとした雰囲気を作り出す。

 

「それは、勝機あり、ととらえて良いでありんすな?」

 

 代弁するガーネットのダンジョンの言葉に、アクアマリンのダンジョンは薄く微笑んで返す。

 ガーネットのダンジョンはそれを肯定ととらえる。

 

「死なないで欲しいでありんす。わっちらは、仲間を減らしすぎた……」

 

 アクアマリンのダンジョンは多くを語らない。

 その心を明かさない。

 語らないことが、秘密を持つことが、自身を美しくするのだと疑わないから。

 

「行ってくるわぁ」

 

 アクアマリンのダンジョンの体が、地面へと沈んでいった。

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