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52話 ジルコンのダンジョン09

 第六十一階層。

 八岐大蛇

 

 第五十階層のフロアボスとして出現した、一つの体に八つの頭を持つ、全長二十メートルの巨大なヘビである。

 高い再生能力を持ち、八つの頭を同時に斬り落とさなければ、無限に首が復活する魔物である。

 

「どけやゴミ!!」

 

 つまり、同時に八つの頭を落とすことのできるバリオンの前では、一撃で消滅する魔物の一種でしかない。

 第六十一階層の攻略は、時間の問題である。

 

「さあさあ、皆も連携し、倒してみなさい。伝説級の魔物の討伐訓練など、そうはできませんよ」

 

 フランダースは手をたたき、各隊の隊員を鼓舞する。

 

 一番隊――王女親衛隊。

 全員が、剣術と魔法を使うことのできる、十の小隊で最強と呼ばれる隊。

 あくまでもプリンセスの守護に徹し、フランダースの言葉に揺れることなく、プリンセスの周りを守る。

 

 第六十一階層、突破。

 

 二番隊――特攻隊。

 バリオンの管轄する小隊にして、全員がバリオンの拾ってきたスラム街の孤児という特殊な隊。

 フランダースの言葉を挑発と受け取り、全力で八岐大蛇を攻撃する。

 剣で、素手で。魔法で、自身の得意な攻撃をひたすらに叩き込む。

 

 第六十二階層、突破。

 

 三番隊――守備隊。

 盾を駆使して、本隊を守る隊。

 フランダースの言葉に揺れることなく、本隊の最も外側に立ち、魔物の攻撃を警戒する。

 

 第六十三階層、突破。

 

 四番隊――魔法隊。

 フランダースの管轄する小隊にして、ハリーウィンス国の宮廷魔法団。

 フランダースの言葉を、指令と受け止め、本隊を離れて八岐大蛇へ魔法を叩き込む。

 

 第六十四階層、突破。

 

 五番隊――結界隊。

 防御魔法の結界を使い、本隊を守る隊。

 守備隊の内側に構え、結界を張り続ける。

 

 第六十五階層、突破。

 

 六番隊――召喚師隊。

 召喚師を集めた小隊。

 ゴーレム、スライム、ドラゴンと言った、隊員それぞれが特定の魔物を召喚することができる。

 八岐大蛇に自身の召喚する魔物がどの程度通用するのか、次々と力試しに挑んでいく。

 

 第六十六階層、突破。

 

 七番隊――弓矢隊。

 弓を射って、遠方から八岐大蛇の急所を冷静に貫いていく。

 首の太い八岐大蛇にとって致命傷にはなりえないが、目や喉を潰されて動きが止まる。

 

 第六十七階層、突破。

 

 八番隊――回復隊。

 回復魔法の使い手たちは、本隊の中央で待機し、負傷者が運ばれてくるのを待っている。

 もっとも現在は、アンデット系魔物のアンチテーゼであるトリリアントの回復を主軸にしている。

 

 第六十八階層、突破。

 

 九番隊――商人隊。

 ギルドの運営資金を稼ぐことを主目的とした隊であり、ダンジョンの討伐には不参加である。

 

 第六十九階層、突破。

 

 十番隊――盗賊隊。

 ハンターの中でも、財宝を見つけたり罠や仕掛けを見抜くことに特化した隊である。

 盗賊とはいえ、実際に町の襲撃や略奪行為を行ったことはない、と公式ではされている。

 

 

 

 第七十階層、突入。

 

 フロアボス――神獣ウロボロス 。

 全長五十メートルを超える巨大なヘビで、自身の尾の先端に噛みつき、円をかたどって浮かんでいた。

 黄色い腹に、赤い鱗が、心に警告を叩き込んでくるほどに毒々しい。

 真っ黒に塗りつぶされた眼球がギョロギョロと動き、ミックスのハンターたちを見下ろしていた。

 

「はっ!!」

 

 真っ先にバリオンが駆け、接近する。

 未知であろうと、恐怖も観察もない。

 まずは斬る、それだけ。

 

 ギョロギョロと動いていたウロボロスの眼球が止まり、その視線が接近してくるバリオンへと止まる。

 バリオンとウロボロスの視線が交わる。

 

「……ああ??」

 

 バリオンが違和感を感じたのは、走り出して数秒後。

 バリオンとウロボロスとの距離が、一向に縮まらない。

 走っても走っても、目に見える光景が変わらない。

 

 奇妙な感覚に襲われ、バリオンは足を止める。

 

「おい!! フランダース!! これ、どうなって!!」

 

 バリオンが後ろを振り向く。

 

「……ああ?」

 

 そこには誰もいなかった。

 第七十階層に共に下りてきたミックスの隊員たちが、誰一人いなかった。

 再び前を向く。

 辺りを見渡す。

 無限に続く空間の中に、バリオンとウロボロスだけが存在していた。

 

「どうなってんだこれは!!」

 

 その不可思議な状況に、声を荒げる。

 

 

 

 そしてそれは、他の隊員も同様。

 

「ふうむ。おかしいですな」

 

 フランダースはつぶやいた。

 いくら魔法を撃ちこもうと、魔法が届かない。

 放った魔法は確実にウロボロスへ向かっている。

 そう見える。

 しかし、一向にウロボロスの場所へ到達する気配を見せない。

 

「百一番、転移」

 

 転移の魔法でウロボロスの近くへ転移を試みるも、近づけない。

 確かに転移に成功はしたが、転移元と転移先の位置が変わってないようにさえ思える。

 

「はてさて。いったい何が起きているのやら」

 

 

 

「おお神よ、一体何が起こっているのでしょう」

 

 レイディエントも。

 

「フランダース? 皆、どこにいるので御座いますか?」

 

 プリンセスも。

 

 ボスフロアの空間に、ウロボロスとともに独りで立っていた。

 

 

 

 ウロボロスは、それを見下ろす。

 それらを見下ろす。

 攻撃もしなければ、身じろぎ一つしない。

 ただただそのままで、宙に浮かんでいた。

 

 何もない広い空間。

 何も動きのない空間。

 それは確実に、ミックスの隊員から感覚を奪っていった。

 

 どれだけ近づこうとしても近づけない、変わらない景色に、距離感が失われる。

 時間感覚が失われる。

 

「……いま、どれくらい経ったんだ」

 

 一人の、あるいはすべての隊員の口から、同時に、あるいはばらばらに、呟きが漏れる。

 体内時計が知らせる。

 第七十階層に突入してから、数分、あるいは数十分、あるいは数時間が経過したのではないかと教えてくれる。

 

 ひたすらにウロボロスへの接近を試み続ける者。

 どうにもならないと立ち止まる者。

 空腹を感じて栄養補給をする者。

 大胆にも、眠気を感じて眠る者。

 行動は様々。

 

「これは、まずいかもしれませんな」

 

 九百六十九番、時計。

 フランダースだけは、固有魔法により、正確な時刻を知ることができる。

 

 第七十階層突入から、二十四時間が経過した。

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