第70話 欠陥奴隷は死力を尽くす
「ウオオオオァァッ!」
叫ぶ魔族が吹き飛ぶ。
しかし、背中から衝撃波を発して回転し、体勢を戻して器用に着地してみせた。
背中を破裂させながらもすぐさま復帰する様には感心させられる。
(だけど甘い)
そこに俺は容赦なく飛び込んだ。
懐に潜り込むと、破れた腹に向かって骨刃を打ち込む。
既にぼろぼろの鱗と肉を抉りながら、さらに魔術を使った。
その瞬間、骨刃が炎上して魔族を体内から焼き焦がす。
戦闘前にサリアから習った炎の魔術だ。
細かい調整はできないため、ひたすら魔力を注いで火力を底上げした。
消耗は大きくなるが、とりあえず困りはしないだろう。
追加の呪毒も流し込んで、徹底的な破壊を招く。
「止め、ロォ……ォッ!」
半狂乱の魔族が、残る片腕を振り回してきた。
豪快だが鋭い一撃に対し、俺は腕を交差させて防御を選ぶ。
前腕の結晶の鎧が砕けて鱗が割れて甲殻が粉々になった。
それでも衝撃は殺し切れず、俺は後方へと滑っていく。
(まだこれだけの力を……ッ!)
俺は満身創痍の魔族を睨みながら驚愕する。
既にあちこちが壊死して、再生能力も機能していない。
いつ死んでもおかしくない状態だというのに、魔族は底力を発揮してくる。
まるで俺を道連れにしようとしているかのようだった。
「オオオ、ォォオオオオッアガアッ!」
血反吐を飛ばす魔族が追撃を仕掛けてきた。
腐敗しつつある両脚で疾走し、猛烈な勢いで腕を叩き付けてくる。
霞むような速度で、紫色の炎を散らせて迫る。
次の瞬間、魔族の腕が宙を舞った。
俺が両手の骨刃で挟み込んで切断したのだ。
腕は肘辺りで断たれている。
噴き上がる鮮血はどこか粘質で黒ずんでいた。
魔族が全身から流す血は、いつの間にか全てそれになっている。
呪毒が浸透し、もう手遅れの段階に至っているのだ。
間もなく魔族の両脚が腐り落ちて、泡を立てながら液状化した。
ついに四肢を残らず失った魔族は虚しく地面を転がる。
「これで、ようやく、終わりだ……」
俺は大きく息を吐く。
右手の骨刃を掲げて振り下ろそうとしたその時、魔族の体内から紫色の極光が放出された。
余すことなく傷付いたその肉体が高速で振動して、失われた四肢の断面が蠢く。
そこから弾けるように飛び出したのは、光沢のある赤い触手。
幾本にも及ぶそれは、目にも留まらぬ速さで俺に巻き付いてきた。




