第69話 欠陥奴隷は魔族に対抗する
俺は未使用のスキルを確認する。
まずは消費した魔力を【魔力増幅】で補うと、複合して生み出した【紅岩殻鱗】を発動した。
その途端、体表が紅色の甲殻に浸蝕されて、あっという間に全身を覆い尽くしてしまった。
質感としては岩石に近く、まるでゴーレムのようになっていた。
今度は甲殻の表面に鱗が生えてきて、僅かな隙間を埋めるように増えていく。
(まるで化け物みたいな外見だな……)
俺は自分の身体を見下ろしながら苦笑する。
元のスキルが魔物由来なので当然だろう。
その身体的な特徴を奪い、さらに複合させているのだから。
まあ、前方にいる魔族を倒すにはぴったりだ。
化け物を殺すのは化け物に限るだろう。
俺はついでに【魔力結晶】も有効化させた。
鱗の上に半透明の結晶が張り付いて固まり、疑似的な鎧と化す。
(これだけやれば、生半可な攻撃は通らないはずだ)
俺はある種の確信を抱いていた。
甲殻と鱗と結晶の三重構造に加えて、スキルによる無数の補正がかかっている。
本来なら増えた重量のせいで動けなくなるが、強化系のスキルのおかげでそういった心配は無用だ。
"鉄壁"のダンのスキルも残らず発動しているので、防御能力は万全だろう。
魔族ともぶつかり合えるだけになっているはずだった。
仕上げに【炎角】で額に燃える一角を生やして【骨鉄刃】を再び有効化させた。
俺は両手に骨刃を作って打ち鳴らす。
「てめぇ……そいつは一体どういうことだ! まさか人間じゃねぇのかっ!?」
一連の準備を見ていた魔族は動揺する。
俺が人間ではないという誤解も仕方ない。
これだけの能力を使いこなす存在なんていないのだ。
英雄ですら一つの技に絞って特化させていくものであり、様々な能力を乱用するなんて本来はありえない。
それを知った上で、俺は魔族を挑発する。
「戯れ言はそれだけか?」
「クソがああああぁぁッ!」
魔族がはち切れんばかりの筋肉から魔力を発散し、大地を蹴り砕きながら突進してくる。
俺は立ち向かうように駆け出した。
振り下ろされた左右の拳を掴むと、押し切るように踏み出す。
互いの膂力で拮抗しかけるも、僅かばかりの差で魔族が後ずさった。
信じられないとでも言いたげな顔で背中を反らして、やがて膝を地面についてしまう。
跳び上がった俺は、憤怒に染まる魔族の顔面に膝蹴りを叩き込んだ。




