第60話 欠陥奴隷は英雄の活躍を傍観する
戦況は未だに拮抗していた。
魔物の増援が途切れたことに加えて、こちら側が積極的な反撃を止めたからだ。
冷静になった王国軍と冒険者達は、堅実な陣形を築き上げている。
魔術を利用した守りの構えだ。
何重にも結界を展開し、相手からの攻撃を凌ぎつつ、休息を挟みながら的確に対処している。
全体的な攻撃力は低下したものの、被害は劇的に抑えられていた。
(さすがに戦い慣れているな)
やはり俺が加勢せずとも問題なかったようだ。
時間をかければ、このまま魔物達を殲滅できるのではないか。
もしくは魔物達が先に撤退すると思う。
となると、問題はあと一つだ。
俺は死体に触れながら移動を再開した。
その場を動こうとしないサリアを置いて、森林側に近い戦場へと向かう。
>スキル【偵察】を取得
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>スキル【跳躍】を取得
>スキル【平衡感覚】を取得
>スキル【読書】を取得
>スキル【学習】を取得
>スキル【飛翼】を取得
ほどなくして、英雄と魔族が見える位置に到着した。
当初は距離を取っていたウィズも他の二人に合流し、三人がかりで対応している。
放たれた霧の刃が連続で攻撃を仕掛けていた。
魔族には防御手段がない。
衝撃波と黒い雷撃で掻き消しているも、明らかに間に合っていなかった。
霧の刃はすぐに復活して、魔族の体力を削っている。
近接攻撃はダンが防いでいた。
おかげで魔族の反撃は完全に無意味なものとなっている。
無論、あれだけの猛攻を前に平然としていられるダンが異常なのだが。
魔族を助けるためか、周囲から魔物達は迫っていた。
しかし、彼らは血の縄で縛られて養分になるか、霧の刃で切り刻まれている。
ウィズの操る血液を増やすばかりで、加勢としては何も役に立っていなかった。
(完璧な連携だ……)
あれが英雄の真骨頂なのだろう。
強力な魔族ですら為す術もないようだった。
近くの兵士や冒険者は眺めているだけだ。
ただの見物客と化している。
彼らは助力が不要だと分かると、他の場所の支援へと向かっていった。
ここで手出しするのは却って邪魔になる。
俺もそうだと思ったから、気配を殺して大人しく見守っている。
ついでに【観察】を有効化させておく。
英雄の動きを間近で学べる機会だ。
少しでも糧にするべきだろう。
その後、戦いの流れは大きく変わることなく、英雄達が一方的に優勢だった。
ついには瀕死となった魔族が崩れ落ちて、それに気付いた兵士と冒険者が歓声を上げるのであった。




