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断絶のクロニクル⑥


 


 ざくり。嫌な音と共に体を貫く刃の感触。その数瞬の沈黙の後、どすどすどすと体中を貫く衝撃が、立て続けに鴉の体を襲った。



 口から溢れ出した鮮血のお陰で、ようやく自分が刺されてから立て続けに撃たれたのだと理解した。痛みはない。ただ、薄れる意識の中で、体から溢れる血の赤だけがとても鮮明だった。



 倒れる音が、やけに遠く聞こえる。誰かが叫びながら鴉を揺すっていた。多分、同行した奴だろう。逃げろと言ってみたが、果たして聞こえたか。



 もう、自分は駄目だ。不意にそう思った。呆気なさすぎる死の予兆に苦笑しか浮かばない。本当にあっさりとしている。



 人の命は儚いとよく言うが、確かにそうだった。自分で体験して、初めて理解した気がすると、鴉は他人事のように思った。



(さて、地獄へと行きますか)



 手が見えなくなるほど、真っ赤に染まった自分が、天国に行けないことぐらい分かってる。



(けど、1度で良いから……平凡に暮らしてみたかった)



 この世に生まれてから数十年。物心が付いた時には人を欺き、殺していた。訳など無い。ただ単に、そうしなきゃ生きていけなかっただけだ。



 でも、街でたまに見た家族の平凡な生活というものに、鴉は少なからず憧れていた。利害一致で一緒に行動する奴はいたが、所詮それだけだ。それに、家族と呼べる者達はもう、手が届かない場所まで行ってしまった。



「けど……」



 もしも、神様。自分の最後の願いを叶えてくれるなら。



「来世は……」



 姉さんと兄さんと幸せに、平凡な日常を過ごせますように。そう呟いた自分の声を聞きながら、俺は意識を闇へと葬った。




 


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