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断絶のクロニクル④



 鴉はたった1人、空を見上げていた。その空は灰色で綺麗な空なんて見えない。と言うより、鴉が産まれてから数十年、灰色以外の空を見たことがなかった。



 太陽の光なんて浴びたことはない。青々とした草木も見たこと無い。周りに広がるのは、壊れかけた灰色の建物と干からびた土地だけ。まるで、モノクロのまま時が止まってしまったようだと鴉は思った。



「やぁ」



 そんな声が後ろから聞こえてそちらを見ると、笑みを浮かべた青年がいた。生まれたてで路地裏に捨てられていた自分を助け、姉と育ててくれたのが彼だ。義姉が殺され、自分が復讐のため、そいつの下についていたのをきっかけに、離れ離れになってしまっていたのだが、つい最近再開したのだ。



 まさか、生きて会えるとは思ってもいなかったので、人生でこれほど驚いたことはあっただろうか、と思うほど驚いたのは、記憶に新しい。



 それから、たまにこうやって会っている。たわいの無い話をして、色々な情報を交換して別れる。それが彼らのパターンだった。本当は一緒に住みたいと互いに思っているのだが、義兄をリーダーとした窃盗グループが鴉を怖がるのだ。新たに出来た彼の家族を壊さない為、鴉は自ら距離を置く事を決め、今に至る。



「じゃあな、また」



「うん」



 笑みを浮かべながら、手を振る義兄は、ふと思い出したかのように、とある事を口にした。



「そうだ、明日宝石店に盗みに入ろうと思ってんだ」



「宝石、店?」



「ほら、この前お前が代表取締役を殺した。そのせいかさ今警備が手薄なんだよ。そのついでに宝石をぬすもっかねって」



「そう、なんだ」



「まぁ、罪滅ぼしでもあるんだけどな」



「?」



「ちょっと前に子分になった奴がいるんだけど、そいつが付けてたネックレス勝手に盗んで売っちまったんだよ。どうしても、姉さんの墓にあげる花が買いたくて。

 けどさ、最近になって後悔し始めてさ。あいつに返そうと思ってんだ。それで捜してたら、運良くあの宝石店にあるっていうから」



 あいつ、喜んでくれるかな。そんな事を言いながら笑う義兄は、この世界では稀な位のお人好しだ。義兄はそれを言うと違うと怒るが、誰から見てもそうとしか言いようがない。じゃなきゃ、あんな城など作らないだろう。



 この世界では関わらない方が良いと嫌われ、利用される人種。けど、鴉はそんな義兄が嫌いではなかった。



「他の宝石を売ったお金で、何か食べよう」



「うん」



「じゃあ、またここでな」



 今度こそ行ってしまった義兄を見送った後、鴉は空を見上げる。憂鬱に見えていた空が、少しだけ綺麗に見えたのは、きっと気のせいではないだろう。



 

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