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六劇目 「男っ?女っ?ミノタウロスを手引きした男装娘2」

「お前、女だろ」



俺はミノタウロスを劇場に誘導した犯人が、女だったと推測した。

たしかにぱっと見の外見は男だ。

ただそれは「マントにバンダナ」という男姿から推測された固定概念に依るもの。



首根っこを掴んだ時の体重の軽さ。

肩を触った時の肉感と華奢さ。

そして声色。



これらの体感的な事実から、俺は女であると推理した。

どうだ、ちっこい江戸川にも負けるとも劣らない名推理だろ。



☆



「・・・・・・・・・!!!」

ミノタウロスの誘導した犯人は目を泳がせ、貧乏ゆすりをし始めた。

分かりやすい反応(リアクション)。

「もう一度聞く。お前、女だろ」

ビクっとその体躯を震わせる。

なにこいつ、ドM体質っ?素直すぎんだろっ!!

俺は面白くなってきて、少し遊んでみる事にした。

「お前、女だろっ」

ビクッ!!!

「お前、おん」

ビクッ!!ビクっ!!

「お前」

ビクゥッ!!

俺がニヤニヤしていると、リリラルが「ザゥ、良い加減にするニャ」と小声で突っ込んだ。



閑話休題。



「俺は男だ!!」

まだ言うかこいつ。



良かろう、ならば奥の手(せんそう)だ。



俺は某蜂起集会の名言を引用して犯人に女と認めさせる殺し文句を言い放った。

「じゃあ、ここで服を脱いでもらおうか?」

俺がそう言い放つと先のクダリから犯人(そいつ)が女である確信したのか、リリラルが「ちょっと何言ってるニャ!?」と同性を庇うかの如く、突然俺の前に立ちはだかった。

「聞いただろ?こいつは男だと言い張ってる。だったら問題ないだろう?」

犯人は頬を赤らめながら俺を睨みつける。



クズ?あ、はい。そうですクズです。



言い訳に聞こえるかもしれないが、別に俺は裸体が見たいわけではない。

ただ、なぜ嘘をつき何を隠そうとしているのか知りたかったのだ。

「どうした?脱げないのか?やっぱりお前、女だろ」

すると犯人はバンダナを石床に叩きつけ

「分かったよ、脱いでやろうじゃないか。愚民め!!」

と次々と衣服を脱いでいった。

「もう、良いニャ!!分かったニャ!!」

マントを取り、ボロボロのシャツに手をかけたところで、リリラルオロオロとしながらそう声をかけた。

双丘の下側、つまり下乳が見えあともうちょっとのところで、犯人は苦虫を噛んだような表情を浮かべ敗北を認めたのだ。



ちっ、あともう少しだったのに。

あ、いや、何でもないっす。



☆



「貴様の言った通り、俺は女だ」

ミノタウロスを誘導した男、もとい男装女子は「マリアだ」と自分の名前を告げる。

なぜか一人称を「俺」と男のまま戻さずに。

「俺の質問は二つだ。

どうしてミノタウロスを劇場に誘導したのか?

どうして男装をしているのか?」

俺はそう問うと、マリアはフッと笑って供述を始めた。

「ミノタウロスを誘導したのは、俺が最終戦線の操り人形だからだ」

最終戦線。残酷ピエロのギルドだ。

そしてマリアは胸元をグイと開き、自分の胸元を見せた。

「すばらしい谷間ですね」

マシュマロのようなタユンッとしたすべすべの肌の盛り上がりが、俺の視覚を心地よく刺激する。

「違うっ!!!そうじゃないっ!!!」

マリアは頬を赤くしながらそう言うと、胸部の中心に埋め込まれたルビーのような石を顎でしゃくった。

それは鼓動と共にドクリドクリと動いている。

「これは俺の行動を監視している魔石だ。もし命令を遂行出来なかったり失敗したりすれば、俺の心臓を抉るように出来ている」

「まさか・・・冗談だろ?」

俺はその言葉に耳を疑った。が、マリアの動揺ぶりと絶望感は眼の光に現れており、とても信用できないとは思えない表情をしていた。

「私は最終戦線の命令を遂行出来なかった」

「命令って何ニャ?」

「残酷ピエロを危険に脅かす存在の削除。とくに忘却街にS級(ハイエスト)が現れた時の抹殺。失敗した私は・・・じき、この魔石に貫かれて死ぬだろう」

すらっと伸びる鼻とシャープな目つきを次第に歪ませ、マリアは悲痛な顔で必死に堪えていた。

泣けてしまえば楽なのだろう。

「それと、あぁ、なぜ男装をしているからと聞いたな?」

「あぁ」

俺は第二の問いの答えを待った。

きっとこれもやむにやまれる事情があるに違いない。



男として育てられた家系。

そうしなければ生きていけなかった境遇。



分かる。マリア。お前の過去は辛かったであろう。



「趣味だ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・にゃ?」

それまでマリア擁護派だったリリラルも呆気にとられた顔をした。

「今、なんて?」

「だから趣味だと言っている」

とても堂々とした態度でそう言い放った。

「も、もう一度確認しよう。ミノタウロスを誘導したのは?」

するとマリアは深刻な顔をして胸元の魔石を見せた。

うん、それは理解できるんだ。

「じゃあ、その男っぽい格好は?」

「趣味だ」

マリアはさっきまでの深刻な顔から一転、あっけらかんと言う。



え?何、そのギャップ。

次回は、マリアの魔石の摘出です。

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