五劇目 「男っ?女っ?ミノタウロスを手引きした男装娘」
銀河の彼方、一等星よりも強い光を放ち夜空の彼方へ消えたミノタウロス。
俺はその直前に『誰がこの劇場に自分を向かわせたのか』と問うと、奴は身内の一人を指差したのだ。
確かに俺とリリラルが話しているのを盗み聞きしていた人物が居た。
そうすればミノタウロスが劇場内に入れたのも理窟が通る。
そもそもギルド・ゲームでは『勝利者権限で得たもの』しか私物化出来ない。忘却街の人々が有している土地である劇場に、魔物が入り込むなど手引きがなければあり得ないのだ。
それが聖王無きこの世界の新しい『ルール』。
逆に言えば、それさえ守れば何でも手に入る。
そう、歌姫セルフィス嬢は残酷ピエロ率いるギルド“最終戦線”に連れて行かれたように。
☆
俺はパンパンと掌を払うと、リリラルが身を隠す方へと歩いて行った。
「やっぱりザゥはS級のスキルオーナーだったニャっ!!」
その事実に、やたー、と顔を綻ばせぴょんぴょんと跳び跳ねてはしゃぐリリラル。
緊張がほぐれた雰囲気に、他の人たちも恐る恐る戻って来た。
そしてリリラルが俺をS級スキルオーナーでミノタウロスを倒した張本人だと紹介すると、周囲はどよめき出した。
「にいちゃんやるな」「すごいねぇ」などと、俺の周りに集まり肩や腕をベシベシと叩かれる。
「あ、ども。ありがとっす」
俺はその惜しみない賞賛にくすぐったさを感じながら、会釈をしながら受け答えた。
というか、本当にあのミノタウロスは強かったのだろうか。
俺は自分が実感した感覚をリリラルに言うと、喜んだような呆れたような複雑な顔をしながら一度ため息をついた。
「それは、ザゥがS級だからニャ。あそこまでデッカいミノタウロス、持ち上げるなんて無理中の無理中の無理中の無理だニャ」
そこまで無理を掘り下げなくても良くないかっ!!?
俺は心の中で突っ込んでから「なら、仲間集めも問題無いね」と話題を変えた。
仲間集め。
俺らはブルマ軍曹と片翼天女を仲間にし、残酷ピエロに勝負を挑まなければなら無い。
彼女たちは実力が上のものに従う強者至上主義を掲げているらしく、本当ならば二人すれば残酷ピエロにも勝てるのに、奴の勝手を許しているのはなんとも融通が利いていない感じもするが。
「つまり、俺がその二人を倒し、蹂躙し、調教すれば良いんだろ?」
「最後の二つはアウアウなヤツにゃ。これ18禁じゃないニャ。15禁でよろニャ」
と「中の事」にツッコミを入れられ俺は我に返った。
☆
「じゃ、犯人探しと行きますか」
「ニャ」
俺らはミノタウロスが指を指した男に近づくと、そいつはソワソワと体を動かし明らかに動揺しだす。
「待て!!」
俺はソイツの首根っこを掴むと、思ったよりも軽いことに気づく。
「リリラル。こいつ軽いぞ」
「何言ってるニャ。ミノタウロスも投げ飛ばすんだから何持っても軽いに決まってるニャ」
まぁ、一理ある。
が、そういう事でもない。
俺だってもし歯ブラシが鉛で出来てたら重いと思うし、そういう比較は出来ると思う。
俺は首を傾げ疑問を胸にしまうと、その男のバンダナとマントを引っぺがす。
すると男は腕を組み足を組んで、壁に寄りかかった。
「で?なんでミノタウロスなんて誘導したんだ?もし俺が居なかったら全滅だったぞ?」
「そうニャ!!危ないところだったニャ!!」
二人で詰め寄ると、その男はむすっとした顔のままそっぽを向いていた。
「おい!何か答えろ!!」
と俺が男の肩を抑えると「うるさい愚民っ!!」と男が発声した。
「く、くみん?」
いや、狐っ子。それは香辛料だよ。
俺にはリリラルに心の中で突っ込んでから、さっきから引っかかっていた事に合点が行く。
今の甲高い声。
肩を触った時の肉感。
持ち上げた時の軽さ。
「お前、女だろ」
そいつは肩をビクリとさせた。




