四六劇目 「効くか161連打の拳!?仲間の思いを背に!!」
遂に”巨満児”ブーチャカとの決着の時です。
「ほう、悪くねぇ目つきだ」
ブーチャカは俺を見て、そう言った。
「槍、剣、銃弾。俺はこの巨満体で、今まであらゆる武器を止めてきた。お前にそれが打ち破れんのかぁぁぁぁ??」
力士よりもさらにデカく、山のような体躯を有する“巨満児”ブーチャカ。
その重厚な肉体と皮膚は、象のそれよりをも軽く侮る程の分厚さを有していた。
そしてそこから繰り出された“分厚肉張手”と称された業は、三人の人間を一瞬で壁に叩きつけた。
その壁にはヒビが入るほど、強力な張り手だ。
魔物戦とは違う恐怖感と不安感が俺を襲う。
「大丈夫ニャ!!ミノタウロスも一瞬で持ち上げたザゥなら楽勝のはずニャ!!」
俺があまりにも不安な顔つきをさせていた事を、察したのだろうか。
リリラルがネコ耳をクルクルさせながら、俺に声援を送った。
確かに俺はその実績がある。
しかしその後の不可触タイプのケロベロスも、ショタ腐肉喰マリオンも倒しては居ない。
圧倒的とは言え、たった一度の勝利。
それに比べ、敵は、最終戦線の幹部に位置する百戦錬磨。
勝てるのか?
「どうした?脚がブルってるぜ?」
前世では何にも挑戦せず、交通事故で32年の生涯に幕を降ろすまで、ロクに勝負をしてこなかった俺。
そんな俺が。
そんな俺が。
そんな俺が。
そんな俺が。
そんな俺が。
そんな俺が。
「じゃあもう一発、GOOD NEWSを教えてやろうか?」
ブーチャカはにたぁと歯茎を剥き出しにして、笑いながら言った。
「ミノタウロスなんて雑魚はなぁ。俺だって片手で捻り潰せんだよ」
俺はそれを聞いた時に、心が果てしない闇に落ちる感覚に陥った。
唯一の勝利実績を。
唯一の心の拠り所を。
唯一の俺が俺で在れる証左を。
簡単に潰されてしまった。
「大丈夫ニャ!!ザゥなら出来るニャ!!」
俺は絶望しながら、ふと後ろを振り向く。
すると。
そこには獣人幼女が、ネコ耳をクルクルさせて俺を見ていた。
そこには男装娘が、胸をタユンとさせて俺を見ていた。
そこには女軍人が、ブルマのゴムをパチンとさせて俺を見ていた。
そこには片翼天女が、ワンレンの髪を掻き上げて俺を見ていた。
その瞬間。
俺の脚の震えが。
ピタリと止んだ。
☆
「そんなに泣け叫びたいならよぉ。死闘とやらを、おっ始めようか・・・」
山のような男。
“巨満児”ブーチャカが、大型テレビのような掌を開いて、腰を落とした。
「“分厚肉ぶちかまし”!!!」
ブーチャカは、両手を出し突進するように俺に向かってきた。
「ヤバい!!」
俺はギリギリで回避し、ブーチャカは壁に激突した。
しかしそれでも、奴自身にはなんのダメージもない。
ただ、ライブハウスの壁が破壊され、隣のトイレルームと繋がっただけだった。
水道管が破裂し、一面を水浸しにする。
「なんだ、腰抜け。それじゃあ勝てんぜ!?」
そのとおりだ。
しかし奴の放つ雰囲気は、今までのどの敵が纏っているものよりも威圧的だった。
否応無く腰が引けてしまう。
しかし。
チコとネネを見ると、ここでブーチャカを倒さなければ、少なくともチコの命は無くなってしまう。
今までにない熱気が、俺の身体を駆け巡っていった。
☆
「どうした?こないならこちらから行くぞ!?“分厚肉張手”っっっ!!!!!」
その時。
俺の仲間の顔が。
脳裏を過ぎった。
その刹那、意識が飛び、俺は奴の張り手を直視しながら、一歩踏み込んだ。
ブンと風圧が、俺の頬を撫でた。
が。
俺は奴の懐に侵入した。
目の前にあるのはガラ空きになった体躯のみ。
ブーチャカは予想外の敵の侵入に、一瞬身体を強張らせたが、百戦錬磨の精神力で立ち直ると歯茎を剥き出しにして、にたぁと嘲笑う。
「良く踏み込めたな腰抜け。褒めてやろう。だが俺の肉体をどう破るつもりだぁぁぁぁ!?」
そう。
象をも卓抜した肉厚な皮膚と、その下に隠された重厚な肉体。
鋼のような筋肉と。
無神経な贅肉と。
密度の高い脂肪とが。
ファイバー合金のように入り混じった、何物も吸収する鎧。
だが、俺は。
逃げないことを理解した俺は、吠えた。
「それがどうしたーーーーーーーーーーっっっっっっっっ!!!!!!!!」
そして。
何も恐れず。
何も考えず。
唯、拳を繰り出す。
ドゴン!!!
重みのある音が響き、その衝撃は俺の骨に浸透する。
「ぐっ!!」
「ふははは!!!どうした!!!!!!」
だが俺はまた懲りずに、拳を繰り出した。
だって、俺はそれしか出来ないから。
でも、それだけは出来るから。
そう。
誰にも負けなければ。
なんの問題も無いんだ。
俺はS級の脳筋。
上等じゃねえか。
ドゴン!!!
—————————ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ズガガガガガガガガガガガガガガガガ————————
まだだ。
まだ足りない。
意識を飛ばせ。
意識を飛ばせ。
飛ばせっっ!!!!
「ぅぐるぁあああああああああああああああ!!!!!!!!!」
俺は、まるで自分の身体が誰かに動かされている感覚がしだした。
ふわっと浮いたような、不思議な感覚だった。
次第に俺の拳が速度を上げる。
それは風を斬るように、空気の層が筋を引き始めた。
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガ—————————
するとブーチャカ腹の肉が、次第に波紋を広げながら凹み出した。
歪み、変形し、体内へと拳がめり込んでいく。
「ぐはぁ!!き、貴様ッッ!!」
「まだだあああああああああああああああああああああ」
——————————ドゴガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!——————————
「やめっ、やめっっ!!やめろ、やめてくれ!!悪かった!!俺が、俺の敗けだ!!!」
しかしすでに意識が飛んでいる俺には、何も聞こえなかった。
“ただ目の前にある肉壁を討ち滅ぼす。”
“それまで停止しない。”
俺自身を支配しているのは、この二つの概念だけだった。
そして突然拳の感触が変わるのを感じた。
適度に柔らかい、“捉えている”という手応え。
そして。
161打目の拳を放ったその時。
ドパン!!
ドパパパンッッッッッ!!!
今までの拳の衝撃が、トンネルを開通したように、ブーチャカの体躯を貫く。
内臓部分に決定打を与えた。
「げへあああああああああああ!!!!!!!!!」
“巨満児”ブーチャカは吐血し、その大きな山のような身体を吹き飛ばした。
次回、敵を倒したのでおっぱい描写に移行するかもしれません。




