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イケメン恐怖症の呪い  作者: 西形ゆうな
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2/2

後編

難産……。

兄から札を受けとった翌日、私はご機嫌で街を歩いていた。

今日のランチもお店に来てくれたブライアンに、話があるからと街外れの丘に夕方来てもらうようお願いした。

札の効力のおかげか、多少目眩がしたものの普通に話すことができた。

兄からもらった札を胸に押し当てる。


なんて素晴らしい札!


顔がニヤついて止まらない。絶望の日々から一転、我が人生のなんと輝いていることか。


赤く光る夕日の中、丘に向かって今にもスキップせんと片足を大きく踏み出したその時。


「シルフィー」


背後から声をかけられた。振り返ると、そこには兄と同じ神官服を着た一人の青年。


「クリフさん!」


私は笑顔で応じた。

クリフさんは兄の同僚で、男子人口三割に入るイケメンだ。その中でもかなり上位に入るだろう繊細な顔立ち、やや長めの水色の髪を斜めに流した、正統派美男子である。


私は彼と初めて会った時から感じていたことを今日も思った。

惜しい!と。

神の愛し子である兄の顔を見慣れた私には、クリフさんの顔は超絶イケメンにあと一歩届かない。かつ大人の色気ムンムンのワイルド系イケメンが好みの私としては、正統派イケメンである彼はいまいち物足りないのである。正統派イケメンは兄で食傷気味だ。


幼少期からの癖でそんな失礼なことをツラツラ考えてしまう私だが、クリフさんは世の女性からすれば十分に魅力的な男性であることは間違いない。

兄に一歩届かないながらもかなりのイケメンで、兄に一歩届かないながらも優秀で、兄に一歩出遅れてはいるが高神官候補という優良物件だ。

……兄め。小癪な奴。

妹にとんでもない呪いをかけておきながら自分は卒なく人生の勝組街道まっしぐらとか、許しがたいにも程がある。

脱毛剤でもぶっかけてやろうかしら。

私が不穏なことを考えているとは知らず、クリフさんは優しげな顔を綻ばせた。


「久しぶりだね。シルフィー。元気だったかな?」


「はい!とっても。クリフさんはお元気でしたか?」


私が親しみを込めて元気いっぱいに尋ねると、クリフさんはクスクス笑いながら答えてくれた。


「相変わらずシルフィーは可愛いね。僕も元気だよ。ただ、今は勉強が大変でね」


そう言って首を揉むような仕草をする。


「ああ、高神官になるための試験ですね。兄から聞いてます」


高神官になれればエリートコースに乗ったも同然だ。そもそも高神官候補に選ばれるだけでも相当大変で、今年試験を受けられるのは兄とクリフさんの二人だけと聞いている。四十代になってようやく、という神官達も多いみたいだ。

兄とクリフさんは現在二十二歳、高神官になるための試験は三年に一度、合格者は一名のみと決まっている。今年落ちても次回受かれば早い出世に違いはないだろう。


「君のお兄さんが相手だからね。僕が選ばれるためには相当頑張らないと」


「大丈夫ですよ!クリフさんなら三年後は絶対受かりますって!」


「……ありがとう」


私は力一杯応援した。


「そういえば、さっき君のお兄さんから聞いたよ。彼がずっと作ってた例の札、今シルフィーが持ってるんでしょう?」


そう聞かれ、よくぞ聞いてくれました!とばかりに頷いた。


「そうなんです!だからこうしてクリフさんと話していても全然平気です!」


そう、先ほどからクリフさんと話していても、いつものような動悸息切れ眩暈を感じない。


ああ!イケメン万歳!!


「長時間はダメみたいなんですけどね。あ!でもそれは兄基準なんで、クリフさんなら長く話しても大丈夫かもしれないです!」


「……そうかな」


「はい!きっと!それに、札を破けば触ることもできるんですよ!!」


ブライアンのあの体に触れられるなんて、考えただけでも幸せすぎる!


「あ、でも愛し子じゃないクリフさんなら、破かなくても触れられるかもしれません」


「……じゃぁ試してみる?」


「え!?いいんですか?」


ひゃっほう!!

イケメンに堂々触れるなんて、胸がときめいて止まらない。


私は鼻息も荒く、しかし慎重に腕を伸ばし、そっとクリフさんの手首を掴んだ。


「……どう?」


「……だ」


「だ?」


「……大丈夫です!全然余裕です!」


私ははしゃぎながらクリフさんの腕をブンブン振り回した。


「ありがとうございます、クリフさん!」


「僕は何もしてないよ」


苦笑しながら応えるクリフさんに、私はもう、何言ってんの!と焦れったく身をよじった。


「そんなことないです!超絶イケメンだとやっぱりちょっとは具合悪くなりますよ!クリフさんだから全然平気なんですよ!」


感謝と興奮と喜びを全力で伝えた私に、クリフさんはニッコリと笑った。


「それは良かった」


そう言って繋いでいない方の腕も取られた。


「クリフさん?」


コテンと首を傾げたと同時に、周りの景色がぐにゃりと歪んだ。


あれ?これ転移の術じゃ……


そう思った瞬間、体に強い衝撃を感じた。










「…痛った!!」


転移の着地の衝撃で床に倒れこむ。お尻を強かに打ちつけた。


「……つぅ。お尻が腫れそう……」


お尻をさすりながら立ち上がる。そこは古臭い石壁の部屋だった。天井近くの小さな窓から光が弱く差し込むだけの暗い部屋。あまり掃除がされていないのか埃っぽい。


「ここ、どこ?クリフさん?」


そう口にした瞬間、フッと目の前にクリフさんが現れた。


「クリフさん!」


ホッとして駆け寄ると、クリフさんは笑顔で私の頭を撫でた。


「良かった、無事着いていたね」


私は多少混乱しながら尋ねた。


「ここ何処ですか?これってクリフさんの転移の術ですよね?」


「そうだよ。ここは僕の親戚が昔住んでた家なんだ。引越しで使わなくなるって聞いて、僕が譲り受けたんだ。術の勉強や研究場所にしようと思って。しばらく来てなかったから埃っぽくてごめんね」


「そうなんですか。あの、それでなんで私をここに……?」


私のその問いに、クリフさんは晴れやかな笑顔で応えた。


「何って、君を僕のものにするためさ」


「え?」


私はポカンとした。

混乱する私をよそに、クリフさんは朗々と語り出した。


「君を初めて見たときから、僕に相応しい女性とようやく巡り会えたと思ったよ。君のその美貌。神の愛し子と呼ばれる女性など、世界中を探してもそういないだろう。やはり特別な僕には、特別な女性が相応しい。君もそう思わないかい?」


そう邪気のない表情で問いかけられて、私は頭の中を疑問符で支配されながらも、今言える一つの事実を口にした。


「え、でも、クリフさんは神の愛し子じゃないですよね?」


「……」


クリフさんは嫌そうに眉を顰めた。


「……男の神の愛し子など、たかが十人に一人の割合じゃないか。然程珍しいわけでもないくせに、周りにチヤホヤされていい気になって。僕の生まれた町には五人の愛し子がいたが、所詮は顔だけ。馬術や剣術、頭の出来、果ては気持ちを寄せられる女性の数すら、僕の足元にも及ばなかったよ。わかるかい、シルフィー。僕こそ特別と言われるのに相応しい」


そう言って諭すよう微笑んだクリフさんに、私は未だ混乱から抜け出せないながらも、やはり単純な事実だけは口から出すことができた。


「え、でも、兄の方が優秀ですよね?」


だってクリフさんより後から神官になった兄が、クリフさんと同時に高神官候補になってるし。


「あ、それに、馬術と剣術も兄の方が上でしたよね?」


昨年行われた剣術大会で、確かクリフさんは兄に負けている。まぁ兄も、本職であるブライアンには負けてしまったのだが。もちろん大会はブライアンが優勝した。メチャクチャ格好良かった。


「あ、そうそう、それに女性の数も」


「もういい!!」


突如叫んだクリフさんに私は驚いた。


「口が過ぎるよ、シルフィー」


これまでの優しげな様子から一転、憎しみを湛えたギラギラした目で睨みつけられ、私は恐怖を感じて慌てて弁明した。


「な、何か怒らせるようなこと言いました?ご、ごめんなさい。でも、事実をお伝えしただけです!」


だから怒らないで!間違ったことは言ってないはず!っと胸の前で手を組んでみた。多少あざといが、上目遣いも忘れない。


クリフさんを見ると、何故かプルプル震えていた。


「君達…君達兄妹はいつもいつも僕を馬鹿にしてくれるね」


その言葉に驚いて目を見開く。


「そんな!馬鹿にしたことなんかありません!!」


「どの口が言うか!!」


怒鳴り返され咄嗟に口を噤む。


「君のお兄さんと出会うまで、僕は常に一番だった。賞賛も羨望の眼差しも、常に僕に向かっていた。それが今はどうだ。君のお兄さんがいるせいで、それらはいつも僕の横をすり抜けていく。彼がただ神の愛し子というだけで。僕は不当に惨めな思いをさせられている。そう思わないかい?」


「え…でも、顔以外も」


クリフさんの一睨みで思わず黙った。


「僕は努力した。毎日毎日、勉強も剣術も馬術も、一切手を抜かずに血の滲むような努力を重ねた。そんな僕に君のお兄さんはなんて言ったと思う?」


「な、なんて言ったんですか?」


「『少しは肩の力を抜け。でないと禿げるぞ』って。僕の家系が代々禿げだと知っての暴言か!?」


その言葉に私は目を見開いた。

あ、あいつ、なんてことを。

自分は若白髪疑惑の癖に!


「それは酷いですね!!」


「君もだよ!!」


え!?私も?

失礼な。私は兄のような無神経ではない。

ムッとする私の前で、クリフさんは昔を思い出すように遠い目をした。


「そう、あれは君と初めて会った時だ。幼いながらも完璧な美貌の君に、僕はその場でプロポーズしたんだ。『可愛いシルフィー。将来僕のお嫁さんになってくれるかい?』って。もちろん、すぐに結婚できると思ってたわけじゃないからね。予約のようなものさ。そんな私に君はこう言ったんだ。『え!?ロリコン!?』って」


私、そんなことを言ったのか。全然覚えていない。

でもそれって……


「事実じゃないですか!」


「僕はロリコンじゃない!!」


その言葉に納得いかない。

初めて出会った頃といえば、兄が神官になった時だから私が十歳の時。

結婚適齢期を迎えた十六歳の今の私と二十二歳の男性なら全然ありだが、十歳と十六歳はないだろう。


「さらに君は『超絶イケメンじゃないとイヤ。でもあなたの顔、惜しいね。お兄ちゃんと並ばない方がいいよ。余計残念だから』と言ったんだぞ!!」


「だから事実しか言ってないじゃないですか!むしろクリフさんの事を考えた適切なアドバイスです!!」


そんなことで兄と一緒くたにされたくない。兄の言葉は訪れてもいない未来の中傷だが、私は事実しか述べてないのだから!


クリフさんは再びプルプルし始めた。


「君達兄妹はいつもそうだ。チクチク、ネチネチ僕を攻撃する。周りを見下してさぞ気持ちいいだろう」


「いいがかりです!少なくても私はこの呪いをかけられてから清く正しく謙虚に生きてきました!昔は超絶イケメン以外はゴミ位に思ってましたけど、今はクリフさん程度でもちゃんとイケメンって思えるようになったんですよ!?」


「だからそれだよ!」


どれよ!?もう訳がわからない。


「まあいい。屈辱の日々は今日終わる。僕は君を手に入れる。どんな気分だい?コケにした相手のものになるのは。君のお兄さんもさぞ悔しがるだろうな。可愛がってきた妹が散々見下してきた相手のものになってしまうのだから」


そう言ってクツクツと嗤った。


「でも、安心していい。君達兄妹が愚かなだけで、僕はこの通り完璧な男だ。君もすぐに自分の幸運に気づくだろう」


その言葉に恐怖が背筋を駆け上った。

この男……


「ロリコンの上にナルシスト!?嫌だ!!救いようがないじゃない!!」


「煩い!救いようがないのは君だ!このブラコン!!」


ブラコン!?誰がブラコンよ!しかも相手はあの兄よ!?失礼にも程がある。


「さあ、観念して大人しく僕のものになるんだ」


言葉と共に一歩近づかれ、私は無意識のうちに後退した。


「わ、私には触れられないわ。触れたら兄のもとに強制転送されるもの」


私の強がりにクリフさんがクスリと笑う。


「そう、いつもならね。でも今の君には例の札がある」


ハッとして胸にしまった札を押さえる。


あれ、ない!?


「ああ、札ならここにあるよ」


そう言ってクリフさんが服の中から取り出した札は、見事に二枚に破れていた。


「念のため、転移するとき君から奪って破いておいた。知ってた?札を破るのは誰でもいいんだよ。この札はいわば君専用。君がこの札を身につけた段階で、この札の効力は全て君に向かうのさ。この札が出来上がるのを僕もずっと待っていたよ。君に触れられるチャンスをね。さあ、これで万が一にも君に逃れる術はない。時間も限られているし、始めようか」


始めるって、何を!?


その声は言葉にならなかった。ようやく自分の置かれた状況が相当まずいことに気づく。札を持っていたことがこんな風にあだになるとは。


「君のお兄さんも馬鹿だよねぇ。君を虎視眈々と狙っている僕に札の話をするなんて」


その言葉に唇を噛む。

兄め……次に会うときは覚えてなさいよ。


「さあ!君は喜んで僕を受け入れればいいんだ!!」


クリフさんに襲いかかられ、私は思わず叫んだ。


「お兄ちゃん!助けて!!」


その瞬間、私は力強い腕に抱き込まれた。

腕の中から目上げると、そこには大好きな黒の眼帯。


「ブライアン!!」


「よう、シルフィー。遅いから迎えに来てやったぞ。それにしても、お兄ちゃんはねえだろう。こういう時は、愛しい男の名前を呼ぶもんじゃないのか?」


「仕方ない。シルフィーは無自覚だが極度のブラコンだ」


その聞きなれた声に振り返ると、クリフさんの腕を捻り上げてる若白髪……もとい、銀髪の兄。


「お兄ちゃん……二人とも、なんでここに?」


私の疑問に、ブライアンが溜息混じりに答えた。


「それはな、シルフィー。お前の兄ちゃんが妹を心配するあまり、札が破られたと同時に危険伝達と居場所探知、それから救出者召喚の呪文が発動準備に入るようにあらかじめお前に術を施してたからだ」


初めて知る事実に、驚いて兄を見つめる。

兄は嫌そうな顔で私の疑問の視線に応えた。


「お前は昔から危なっかしい。なんの保険もかけずにあんな札を渡すわけがないだろうが。案の定、こんな危険な目にあってるしな」


「でもよう、術の発動条件が『お兄ちゃん、助けて!』はないだろう』


「それは困った状況になった時のシルフィーの口癖だ」


そう言って兄は溜息を吐いた。


「シルフィーからお前の話を聞いてようやく兄離れのチャンスかと思って札を渡したが、発動条件をお前の名前にしなくて良かった」


「へいへい。すみませんね」


二人のテンポの良いやり取りを聞きながら、とりあえず危険を脱したとホッと肩の力を抜いた。

そして改めて疑問に思ったことを訪ねた。


「なんか……二人とも仲良し?」


私の言葉に二人は顔を見合わせた。


「まあ、仲良しっつーか飲み仲間みたいなもんだな。剣術大会で知り合ってから、なんとなく街で見かけると話すようになって。お互い神の愛し子同士だし、色々人には理解されない苦労とかもあるわけよ」


「ふーん」


兄ってば、私からブライアンの話を散々聞いてたくせに、当のブライアンと飲み仲間だったなんて一言も言ってなかった。


「まあ、こいつは大切な妹を預けるのに問題ないか、俺を観察する目的もあったみたいだけどな」


「そうなの?」


私の問いに、兄は躊躇いながらも頷いた。


「で?どうよ。この札をシルフィーに渡したってことは、俺は合格でいいんだよな?」


「……ああ。但し、遊びで俺の妹に手を出してみろ。一生解けない呪いをかけてやるからな」


兄の呪いを身をもって体験中の私はその台詞に震え上がった。


「分かってるって。シルフィーは俺の理想の女だ。一生大事にしてやるよ」


ブライアンの思いがけない言葉に、私は胸を大きく高鳴らした。


そんな私達を見て兄は溜息を吐いた。


「こいつを役所にしょっぴかなくちゃならないし、もう俺は行くから後は好きにしろ」


そう言って兄は喚くクリフさんを無理やり引っ張って転移の術で消えた。


兄が立っていた場所を呆然と眺めていると、耳元で低く甘い声がした。


「シルフィー」


ビクン。

思わず肩が跳ねる。そういえば、私ってばずっとブライアンの腕の中!!キャァ!恥ずかしい!!


そっと顎を取られてブライアンに向き直させられる。ああ、相変わらずカッコいい……。


「シルフィー。今日俺を呼び出したのは、なんか言いたいことがあったんじゃないのか?」


ハッ!そうだ。私ってば予想外の出来事に大切なことを忘れていた。

恥ずかしさで逃げたくなる気持ちを叱咤し、私はゴクリと唾を飲み込んでブライアンを見つめた。


「ブライアン、さっき言ってたことは本当?私のこと理想の女だって」


「ああ。そうだ。シルフィーは俺にとってまさに理想の塊だな」


喜びが胸に溢れる。


「わ、私の何処が理想なの?」


「顔」


「え?」


「だから、シルフィーのそのズバ抜けた美貌だよ。やっぱり人間なんだかんだ顔だろ?だから女神もイケメンだらけの世界にしたんだろうし。女の神の愛し子なんて探しているもんじゃねーし、愛し子は歳食っても美人なのは男の愛し子で証明されてるしな」


そう朗らかに笑ったブライアンに、私は思った。


……この人、思った以上に気が合うわ、と。


「わ、私もそう思う。そうよね!いくら綺麗事並べても、やっぱり顔が大事よね!!兄に呪いをかけられて、そりゃ超絶イケメンじゃなくてもイケメンはイケメンって思えるようになったけど、やっぱり恋人や結婚相手となると話は別!!超絶イケメン以外はありえないもん!」


そう力強く同意した私に、ブライアンは嬉しそうに頷いた。


「話がわかるな、シルフィー。見てみろよ、これ」


そう言ってブライアンはいつもつけている黒の眼帯を外した。


「こ、これは!」


ブライアンの普段は隠された右の瞳の中に浮かび上がる女神の呪印。


「美女恐怖症の呪文のもっと強力なやつだ。何回呪文をかけられてもひたすら美女以外目に入れないようにしてたら、神官達め、大神官まで呼び出してこんな呪文をかけやがった」


大神官とは、高神官の更に上、王都の大神殿にしかいないお偉い神官様達である。


「おかげで右目をいつも隠してないと、美女を見るたんびに頭が割れるように痛むんだ」


そう言ってブライアンは慌てて眼帯を元に戻した。

可哀想なブライアン。自分の好みに正直で何が悪い。


「ま、俺はシルフィーと違って右目使わなきゃいいだけだから、まだラッキーかもな」


そう言って笑ったブライアンに、私はなんて強い人なんだろうと感銘を受けた。


「で?シルフィーの気持ちはどうなんだ?まあ、聞かなくてもわかるけどな」


私を見下ろして少し意地悪気に目を細めたブライアンを見て、急激に顔が赤くなるのを感じた。


「わ、私は…」


「私は?」


「私は…ブライアンが好き」


そう言ってブライアンに抱きついた。そんな私をブライアンも抱きしめ返す。


ああ、イケメン恐怖症になって六年間。イケメンと結ばれることはないのではと絶望と悲嘆にくれた日々に、ようやく終止符が打たれた。


「シルフィー」


「ブライアン」


私達は自然と見つめ合った。

ブライアン。私の理想のひと。なんてイケメンなの……。

私はうっとりと幸せに浸った。

ブライアンの顔が徐々に近づき……。


私は鼻血を吹き出して意識を手放した。

時間切れである。







「お兄ちゃんの馬鹿!!」


そうして、またいつもの日常に戻った。









〜おまけ〜

兄「クリフ、お前にはシルフィーは荷が重い。兄の俺が言うのもなんだが、あいつは徹底した超絶イケメン至上主義で、無自覚のブラコンだ。おまけに無神経で気が利かない。お前みたいな完璧主義者じゃいずれシルフィーに愛想を尽かす。シルフィーを嫁にやれるのは、ブライアン位徹底した顔重視の奴じゃないと」











シルフィー = 超絶イケメン至上主義。無自覚ブラコン。無神経。顔以外取り柄のない色々残念な子。

ブライアン = 徹底した美女好き。その信念にブレはなし。実はシルフィーが住む街の騎士団副隊長で、かつ神の愛し子なので、極端な美女好きを除けば優良物件。

クリフ = ナルシスト。見た目は優しげな好青年。シルフィー達に出会わなければ幸せになれただろう、不憫な人。

兄 = この作品でただ一人まともな人。世話焼きの苦労人。特別美人じゃないが、優しく癒し系の彼女がいる。シルフィーを嫁がせて早く自分も幸せになりたいと思っている。



お読み頂きありがとうございました。難産の末、無理やり完結まで持ってきてしまいました。う〜ん、書くのはやっぱり難しいですね。楽しんで頂けた方がいればとても嬉しいです。

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