第六話
予想外の答えに驚きもしたが、それ以上に自分の思った言葉が来なかったことのほうに怒りを覚えている。
「なんだ。言ってみろ」
口から出まかせだろう、と今にもいいそうな程自信に満ち溢れている顔だ。
「手札に何か印をつけておく」
「なっ!悪計ではないか」
驚きのあまり思わず立ちあがってしまう。その行動に驚く宇喜多と秀秋。だが、吉継は何ともないようにどしりと座り、三成をじっと見ている。一触即発の状態だ。
「二人とも落ち着こうよ…。」
宇喜多の申し出に秀秋は、首がもげそうな程頷く。
この状態をどうにかしたいようだが、こんなことしかできない。
宇喜多の申し出など聞こえていないようで、二人とも反応を示さず状態は変わらない。
沈黙を破ったのは吉継であった。
「悪計ではない。これも戦略ぞ」
「悪計である!そんなもので勝利しても豊臣家に顔向けできぬわ!」
声を荒げる三成につられ、吉継の声も大きくなっていく。
「西軍が不利であることはわかっておろう!」
「今、貴様も悪計と認めたな。そんなことはできん!」
「悪計も戦略の一つであろう!この戦、負けてしまえば全てが終わるのだぞ!」
「ねぇ、面白そうだし大谷殿の戦略ってやつにのってみようよ」
時間も経ち、陽気な宇喜多に戻り空気も読まず、話に入ってきた。
が、三成が反応し上からぎろりと睨んだことで宇喜多の勢いは失われた。
「大体、関ヶ原入りせず戦に持ち込んでいけば良いもの。それもこれも勝手に城入りした『やつ』のせいであろう」
今更言ってもどうしようもないことを言いながら、宇喜多のほうを見る三成。
まるで、宇喜多のせいと言いたいようである。
「それは無理があるであろう。こちらに戦が出来る兵量はなかろう。」
「え、待って。僕のせいなの?僕が最初に入ったってこと?」
宇喜多が焦り始める。だが、吉継も三成も気にせず無視をしたせいで、尚焦ってしまう。
「兵量の問題ではなかろう!豊臣に誇れる戦いをするべきであろう!」
「誇れる戦いをしても、勝利出来なければ終わるのだぞ!」
言い争いをする二人の横で、宇喜多は焦って頭を抱えている。
小早川はただただ怯えているだけだった。
「勝利を持ち帰っても、誇りがなければ負け同然だ!」
「待って、待って。僕は三成が関ヶ原入りしたって聞いたから入ったんだけど、え?」
また空気を読まず、話に入ろうとする。というか、自分の疑問と不安をどうにかしたいだけである。
当然、相手にされていない。
「戦えぬ状態で、どのように戦うよ」
「何があっても最後まで戦うのが武士であるぞ!」
「聞いてる?僕が先陣きったんじゃないんだけど。え、三成だよね?」
「戦略がなければ、勝てるものも勝てぬ!だからこそ、戦略を練ろうと言っておる!」
「お前のは戦略ではない!悪計であると言っておろう!」
「うそうそ。僕、責任とりたくないよ!?」
「小早川殿は黙っていてくだされ!」
「何もしゃべってないよ!?」
「はははっ。秀秋ちゃんは怒られてばかりだなぁ」
さっきの不安はどこに行ったのか。怒られてしまった秀秋を笑う。
「もう知らん!戦略は某一人が考える!」
そういって、三成は部屋を出て行ってしまった。
三成の後姿を見送ると、吉継も大きなため息をつき部屋を出た。
「あれ?出て行っちゃったね~」
こんな状況になっても陽気なままである。
対照的な秀秋は態度もそうで、今後の状況に怯え、不安を隠せなかった。
この会議で、西軍は大きな亀裂を生んだ。
何より、大将である三成とその右腕である吉継の間に亀裂を生んだことは
西軍にとって大きな損害といえる。




