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関ヶ原  作者: 花野 夢
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最終話

とうとうこの日が来た。

関ヶ原の戦い、当日である。

両軍の代表者である、家康、輝政、三成、秀秋。

家康と三成はじっと睨み合い、お互いの間にびりびりと火花が散っているようにみえる。

秀秋はそれを見て、怯えているように見える。

それぞれ面持ちが違い、感情も違うだろう。

だが、目的は同じ。

勝利することだ。



伊達政宗が札をきり、それぞれに札を配っていく。

緊迫した空気の中、その音だけが聞こえる。

そのとき、まっすぐ札を見つめていた左目が、少し家康の方にずれた。

だが、西軍は一切それに気づくことなく、札は配り終わった。

この時のために予習してきたそれぞれ。

最初の方はつまずくことなく、進んだ。

今の現状としては、それなりに札が並んでいる。ある種をのぞいて。

このとき、家康は政宗と手を組み悪計を働いていた。

それは、家康が持つ札の先のほとんどを三成が持っているということだった。

家康がその手札を出さぬ限り、三成の手にはいつまでたっても札が残り、結果三成の負けとなる。

当然、それを知って、家康は札を出さずにいた。段々、三成は悔しそうな顔をしている。嬉しかった。あの三成を今、追い詰めているのだ。

もう自分の手札も少ない。

ここで出して、自分が勝利をつかむのだ。

そう思い、ずっと止めていた札を出した。

家康の手札は残り一枚だった。

「あ、やっと、ここの札が出せまする」

そういったのは横にいた輝政だった。

何故だ。反射的に政宗の方を向く。

話が違うじゃないか、そう目で訴えると政宗は頬杖をつきながら、ふっと笑った。

騙されたのだ。家康がずっと止めていた札は全く関係のない札だった。

だが、もういい。そう、自分に言い聞かせた。

悔しさが残り、冷静さを失ってはいけない。

あとは自分の手札を出せば、勝ち。

東軍の勝利だ。

自分の手札を置く場所を見つけ、確認を取る。そこで、家康の大誤算が見つかった。

己が出すはずの場所の前に、札が置かれていない。三成を追い詰めることに必死でそこの確認を忘れていたのだった。

しまった。もうだめだ。

そう諦め掛けた時。

三成が悔しそうに小さな声で言葉を発した。

「飛ばせ」

出す札がなくなったのだ。

これは思わぬ出来事だ。

誰かは分からない。

だが、誰かが三成の手札を止めているのだ。

まだ勝てるかもしれない。

そのとき、三成が小さく舌打ちをうち、呟いた。

「水仙さえ、でれば…」

三成は水仙の札を欲しがっている。

自分の手札を確認すると、そこには水仙の札。しかも、無意識のうちに自分が止めてしまっていたようだ。

すぐに出さねば。怒られる。

ちょうどいい具合に自分の番が回ってきた。

今、今、だせばっ!!

「秀秋、一緒に見に行った花を覚えているか?あれは本当に綺麗だった。お前が横にいたからであろうなぁ。儂はあれをもう一度見たい」

まるで秀秋の手を止めるかのように突然、思い出話をした。

最初は訳がわからなかったが、家康を見てすぐにわかった。

家康は向日葵の話をしているのだ。

だが、それだけではない。

考えろ。こんなときにただの思い出話をするような者ではない。

「あっ…」

思わず、声を出してしまった。

分かったのだ。

家康の手札は残り一枚。

そして、向日葵の札はある札を境に止まっている。

ふと、自分の札を見るとそこには向日葵の札が。


つまり、どちらの軍が勝利するかは秀秋の手によって決まる。

どちらの札を出すのか。

段々と冷や汗が酷くなってきた。

だらだらと汗が出てくる。

家康がふと秀秋に声をかけた。

「お前ならできる」

その言葉が秀秋の心に落ちた。

それは当たり前のように、秀秋の手から札が落ちた。コツッと小さな音を立てて、黄色の花が描かれた、向日葵の札が手から滑り落ちた。

「貴様っ‼」

三成が秀秋の胸ぐらをつかむ。

秀秋の体が宙に浮かぶが、その目から殺気が放たれていた。

「そ、某は!君の言いなりにはならない!」

様々なことに縛られてきた秀秋の解放の時だった。こんなにも気持ちがいいことがあるのか、秀秋はそう思った。

「これで最後じゃ」

家康が最後の札をおく。


「東軍、徳川殿の勝利」


たった一枚の札で日本を分ける関ヶ原の決着はついた。

だが、これがこの日本の歴史なのである。

その後、朝廷から征夷大将軍の座をもらった家康は、徳川幕府を開いた。

天下はもう豊臣ではなく、徳川が納める世となった。



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