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道慈と緋踏  作者: ゆうすけ


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だがそんな簡単にはいかない。


炎を放つ斬撃の前、彼の肩の筋肉がピクリと動くことに気がついた。


彼の体が赤く輝くと、俺は彼の肩に注視した。


ピクリと彼の肩が動いた。


今だ!俺は、炎の斬撃をかいくぐると、全力で緋踏に近づき、刀を振った。


彼の首元を刀が通り過ぎる。かわした、そう思って彼は笑った。嘲りの笑みだ。


だが次の瞬間、彼の首から鮮血が溢れ出した。

苦痛に顔を歪めて、彼は左手で首を押さえる。


足元がふわりと揺れる。機会を逃さず刀を振った。

彼は右手で刀を振り、防ごうとしたが刀は吹っ飛んで遥か後方に飛んでいった。


丸腰になった彼の左肩をめがけて俺は刀を振り下ろした。


ガツン‼︎


町田緋踏を切り裂くはずだった刀は彼の左手の中にあった。


首元を押さえていた手を離し、手のひらで刀を受け止めたのだ。

ちぎれかかった手で刀を握り締め、凄まじい力で自分のほうに、俺を引き寄せた。


耳元に口を寄せると彼は囁いた。


お前を認めるよ。初めて俺と対等の存在と出会えた…


そう言って彼は微笑んだ。


彼は口を大きく開くと、俺の肩と首の間に強く噛みついた。


俺は耐えられずに悲鳴を上げた。すさまじい痛みだ。俺の首元から大量の血が噴き出す。どさりと、俺は地面に尻もちをついた。


彼はペッと噛み切った俺の肉片を吐き出した。そして地面に倒れている俺から目をそらさずに、ゆっくりと後方に向かい、落ちていた自分の刀を拾った。


俺は立ち上がろうともがいたが、思ったように力が入らない。目もかすむ。


彼は刀を鞘に収めると居合の姿勢をとる。彼の体が異様に赤く輝く。


まずい。やられる。俺は覚悟を固めた。


凄まじい炎が放たれた。


1877年(明治10年)の諏訪之瀬島の噴火。


一般にこの噴火は、前後2つの噴火に比べると大したことない、とされている。


だがそれは事実と異なる。


1813年(文化10年)の文化大噴火。

1884年(明治17年)の明治大噴火。


むしろその2つよりも規模は大きかった。


その噴火は凄まじく、緋踏を吹き飛ばし、宇宙の彼方まで追放してしまったほどであった


約70〜80km離れた種子島など周辺の島々において、3日間にわたり鳴動(爆発音・地鳴り)が聞こえたと伝えられている。


気がつくと俺は、美智の漕ぐ船の中に乗せられて島を離れていた。美智は俺を必死で担いで船まで乗っけて、島から助け出してくれたのだ。


美智は突然、嫌な予感に襲われたという。そして居ても立ってもいられなくなり、俺のもとへ駆けつけた。そのおかげで間一髪で島から脱出することができた。


美智に巨大な借りができてしまった。


今まではむしろ「お前は俺に借りがある」と言って無茶な要求でも通してきたのだが、これからはむしろ、そういう風に言われる側になってしまった。


俺はすぐに医者の元に連れて行かれたが、俺を見て医者は首を振り、助からないだろうと言った。だが俺は奇跡的に一命を取り留めた。


1877年、夜空に異常に輝く星が目撃され、西南戦争で敗れて自刃した西郷隆盛の姿が、その赤い星の中に見えるという噂が広まった。


人々は、その星を「西郷星」と呼んだ。


その正体は地球に異常に接近した、火星によるもの、というのが学者の定説だが、真実は異なる。


それは事実を隠蔽するための政府によるカバーストーリー(偽の物語)であり、宇宙へ追放された男の怒りによるものというのが、真実である。 



自分の中に一つ疑問がある。


彼を捕らえようとしたのは、本当に住民の安全のためだけなのだろうか? 


権力者たちが不老不死に興味を示さなかったとは考えにくい。


なんとかして自分たちも不老不死の力を手に入れようとしていたのかもしれない。


だが不老不死というのは、そんなにいいものだろうか?


永遠に生きるというのは孤独なものだ。


栄華を誇った権力者たちもみな亡くなった。しかし自分は今もまだ生きている。


年も取らず永遠に若いまま。


あの時に噛みつかれたせいだろうか?

何かが注入され、感染したのだろうか?


不老不死もまた、感染するのだろうか?


あれ以来、頻繁に名前を変え、国籍を変え、住む場所を変えながら生きてきた。


俺と命の奪い合いをしながら、彼が微笑んだ理由が少しわかった気がした。


不老不死というのは孤独なものだ。


対等に向き合える存在がいなかったら、人間は果たしてその孤独に耐えられるものだろうか?


自分はいつまで耐えられるだろうか?



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