数千年ぶりの来訪者
人は、忘れていく生き物だ。
英雄も。
災厄も。
祈りも。
時が流れれば、
やがて全ては伝承へ変わっていく。
けれど。
忘れられた側だけは、
ずっと覚えているのだ。
――これは、
数千年を生きた黒姫が、
まだ“人間だった頃”の話。
あれから、半年ほどが経った。
魔王を討伐した。
世界を救った。
――なのに。
人々は、その力を恐れた。
「災厄だ」
「化け物だ」
気付けば私は、国を追われていた。
他国へ行ってみても、結果は変わらない。
門へ近付くだけで、怯えた目を向けられる。
石を投げられた事もあった。
槍を向けられた事もある。
……まあ、仕方ないのかもしれない。
魔王を倒した力なんて、
普通は怖いものねぇ。
「……人間なんて、食べないのになぁ」
小さく呟きながら、私は空を見上げる。
こう見えて、ちゃんと人間なのだけれど。
……たぶん。
「ねえ、神様〜?」
ふわりと風が吹く。
すると、頭の奥へ直接響くような声が返ってきた。
『……妾に聞かれても困るのじゃが』
呆れたような声音。
もう随分長い付き合いになる、“神様”の声だった。
「だってぇ。
このままだと、野宿生活なのだけれど」
『お主、妙なところで図太いのぅ……』
神様は小さく溜息を吐いた後、
少しだけ静かになる。
そして。
『……まあ、こんな事になったのは、妾の責任でもある故な』
「……?」
『想像魔法を与えておく。
好きな場所へ、好きに家でも建てるがよい』
数秒。
私は黙った。
「……はい?」
今、なんて?
「想像魔法ってなに?」
『想像魔法じゃ』
「いやそれは聞こえてるのよぉ」
『想像したものを、具現化する魔法じゃな』
「…………」
いや、待って。
「え、それヤバくない?」
『そうか?』
「そうでしょうよ」
小説とか漫画とか、そういうレベルの話では?
そんな物を、そんな軽い感じで渡して良いのかしら。
『まあ何とかせい』
「雑ぅ……」
思わずそんな声が漏れる。
けれど。
ふと確認した視界の先には、確かに新しい文字が増えていた。
スキル――想像魔法。
「……増えてる」
本当に渡したのね。
にしても。
「とんでもない物をくれたわねぇ、神様……」
『妾なりに、詫びておるのじゃ』
その声音は、少しだけ申し訳なさそうだった。
だから私は、小さく笑う。
「……ふふ」
「じゃあ、せっかくだし」
「好きに生きてみようかしらねぇ」
それから私は、森へ足を向けた。
かつて、魔王が住んでいた場所。
魔素は濃く、
生息する魔獣達も危険極まりない。
人々から“死地”と呼ばれ、
近付く者すらほとんど居ない森。
その最奥。
そこには、崩れかけた城が残されていた。
魔王との戦いで半壊したのだろう。
周囲の木々も薙ぎ倒され、
とても人が住めるような場所には見えない。
「……想像魔法、試してみようかしら」
私は静かに目を閉じた。
思い浮かべる。
遥か昔。
まだ日本に居た頃、
祖母が暮らしていた屋敷を。
畳の匂い。
障子から差し込む柔らかな光。
木造の静かな廊下。
春になれば、庭へ桜が咲いていた。
――懐かしい場所。
次の瞬間。
ずどどどど、と。
大地そのものが揺れるような音が響いた。
風が吹き荒れ、
魔力が森を震わせる。
やがて音が静まり。
私はゆっくりと目を開けた。
「……まあ」
思わず声が漏れる。
そこには。
記憶の中にあったままの屋敷が、存在していた。
木造の家屋。
長い縁側。
柔らかな畳。
まるで、時間ごと切り取ってきたみたいに。
「……ふふ」
懐かしさに、自然と頬が緩む。
それから数年。
私はその森で静かに暮らしていた。
お茶を飲み。
お菓子を作り。
時々、映像魔法で外の世界を眺めながら。
そんなある日。
森が、騒がしかった。
魔獣達の気配がざわついている。
何かあったのだと察し、
私は静かに森の奥へ足を向けた。
そして。
「――あら」
そこには、少女が倒れていた。
十歳にも満たないだろう、小さな子供。
泥に塗れ、傷だらけで、
呼吸も浅い。
そして、そのすぐ近くには。
――人だったものが転がっていた。
魔獣に食い荒らされたのだろう。
原形すら残っていない。
森の空気へ、濃い血の匂いが混ざっていた。
少女は小さく震えていた。
その瞳には、恐怖だけが残っている。
「……まあ」
私は静かに少女の前へしゃがみ込んだ。
「こんな森の奥まで、どうして来てしまったのかしらねぇ」
少女は、何も言わなかった。
いや。
言えなかったのだろう。
小さな身体を震わせながら、
ただ怯えた目でこちらを見上げている。
……まあ、無理もない。
血塗れの森の奥。
そこへ現れたのが、黒髪に狐面の女なのだから。
「……まあ、そうよねぇ」
私は小さく苦笑する。
「怖いわよね」
そのまま少女へそっと手を伸ばした。
次の瞬間。
空間が静かに揺らぐ。
淡い光が少女の身体を包み込み、
ふわりと姿が消えた。
転移先は、近くの村の入口。
これなら誰かが見つけるでしょう。
「……さて」
少女を見送った後。
私は、その場へ残された“人だったもの”を静かに埋葬した。
魔獣に食い荒らされ、
もう誰なのかすら分からない。
けれど。
きっと誰かにとって、大切な人だったのだろう。
土を被せながら、私は小さく目を伏せる。
森は静かだった。
まるで何事も無かったかのように。
「……」
やがて埋葬を終えると、
私はゆっくりと屋敷へ転移した。
見慣れた畳。
静かな部屋。
いつもと変わらないはずなのに。
その日は、不思議と何も言えなかった。
それから私は、
想像魔法と結界魔法の試作を始めた。
森全体を覆うほどの、大規模な結界。
誰かが森へ入れば、すぐに分かるように。
魔獣達が、人を襲わないように。
そして。
――もう、“迷子さん”が死なないように。
結界は少しずつ形を変え、
やがて森そのものと一体化していった。
人を拒む森。
魔獣達すら怯える場所。
そんな風に呼ばれるようになるまで、
そう時間は掛からなかった。
年に一度。
数年に一度。
数十年に一度。
時が流れるほど、
人は森へ立ち入らなくなっていく。
やがて人々は、こう呼ぶようになった。
――魔の森、と。
それから数百年が過ぎた。
千年を超えた辺りで、
私は数えるのをやめた。
どうせ。
きっと私は、
世界が滅ぶその時まで生き続けてしまうのだから。
季節は巡り。
国は滅び。
人は生まれ変わる。
けれど私は、
ずっと変わらずこの森に居た。
魔の森。
そう呼ばれるようになったこの場所で、
ただ静かに時を重ねていく。
最近では、
森へ近付く人間すらほとんど居ない。
結界へ反応がある事も、
もう何千年も無かった。
――そのはずだったのだけれど。
「あら?」
いつものように映像魔法で外の世界を眺めていた時、
ふと結界が揺れた。
誰かが、森へ入った。
しかも、
近くには魔獣が潜んでいる場所へ。
「……まあ」
久しぶりの反応だった。
私は少しだけ目を丸くする。
魔獣達ですら怯えるこの森へ、
わざわざ入って来る人間なんて、
もう居ないと思っていたのに。
なんだか少し、
わくわくしてしまう。
私はそのまま、
静かに転移した。
次の瞬間。
鬱蒼とした森の中へ、
ふわりと降り立つ。
そこに居たのは、
一人の少年だった。
金色の髪。
透き通るような金の瞳。
整った顔立ち。
そして、
王族特有の洗練された空気。
「ああ、この子……」
最近、映像魔法で見た気がする。
確か。
「王子様、だったかしら?」
ハルモニア王国の第一王子。
社交界では、
“完璧な王子”と呼ばれていた気がする。
けれど。
そんな王子様が、
どうしてこんな森の奥まで?
迷った……訳ではないわよねぇ。
でももしかすると、
うっかり迷子になってしまったのかもしれない。
そう考えた私は、
ふわりと笑った。
「あらぁ、迷子さんですか〜?」
鈴のように軽い声が、
静かな森へ溶けていく。
その瞬間だった。
王子様の表情が、
ほんの僅かに揺らいだ。
――ああ。
やっぱり、
怖がらせてしまったかしら。
まあ、無理もない。
魔の森の奥で。
黒い髪に、
狐のお面を付けた女が突然現れたのだから。
私は出来るだけ警戒させないよう、
口元へ柔らかな笑みを浮かべ続ける。
すると王子様は、
静かにこちらを見つめながら口を開いた。
「……貴方が、“災厄の黒姫”ですね?」
「……まあ」
思わず瞬きをする。
予想外だった。
てっきり悲鳴でも上げられると思っていたのに。
逃げるでもなく。
怯えて動けなくなるでもなく。
この王子様は、
私へ問い掛けてきた。
しかも。
「伝承によって語られ方が違うものでしてね」
なんて、
穏やかに笑いながら。
「国を救った英雄」
「災厄をもたらした怪物」
「どちらが本当なのか、
少し興味が湧いたんです」
「――」
私は数秒、
言葉を失った。
……いやいや。
普通、
そんな理由で魔の森へ来るかしら?
しかも、
興味が湧いたからって。
この王子様、
随分おかしな子なのでは?
人間も。
王族も。
今まで何人も見てきた。
けれど。
こんな人は、
初めてだった。
それから私達は、
お茶を飲みながら色々な話をした。
王宮のこと。
最近の貴族達のこと。
映像魔法で見た街のこと。
王子様は穏やかに話していたけれど、
時折ほんの少しだけ、
疲れたような空気を見せる時があった。
きっと。
ずっと気を張って生きているのだろう。
そんな事を考えながら、
私はふと気付く。
……あら、そういえば忘れていた。
「あぁ、いけない。」
そうだ。この森は
「大変な事を忘れていたわ」
この森は、
普通の人間が長時間居られる場所ではない。
濃密な魔素。
危険な魔獣。
長く居れば、
身体を壊してもおかしくない。
けれど王子様は、
平然としているように見えた。
もちろん、
表情へ出していないだけかもしれないけれど。
我慢していたのねぇ。
私は小さく瞬きをする。
状態異常無効を持つ私と違って、
この人は普通の人間なのだから。
苦しくない訳がない。
そう思った瞬間、
ふと昔の事を思い出した。
――随分と昔に作った物。
いつか。
もしも誰かと仲良くなれた時。
私と長く話してくれる人が現れた時。
その人へ渡せるように、と。
……数千年も前の話だから、
半分くらい忘れていたけれど。
「ちょっと待っていてねぇ」
そう呟き、
私はそのまま、
空間へ手を差し入れた。
アイテムボックスの奥を探る。
随分長く生きているせいで、
何をどこへ入れたのか分からなくなる時があるのよねぇ。
「あら、違う」
「これも違うわぁ……」
古い魔導具や、
昔作ったお菓子の型なんかが次々出てくる。
そして。
「あ」
見つけた。
私はぱっと表情を明るくする。
取り出したのは、
繊細な銀細工のネックレスだった。
月光を編み込んだような細い鎖。
中央には、
夜空みたいな黒い石が揺れている。
幾つもの術式を重ねた、
魔導具。
これならきっと、
王子様が感じる魔素を和らげられるはず。
私はそのまま、
当然のようにネックレスを差し出した。
「はい、どうぞ〜」
すると王子様は、
僅かに目を見開く。
……あら?
もしかして、
急に渡されるとは思わなかったのかしら。
「……簡単に、
渡して良い物ではないでしょう」
王子様は、
差し出したネックレスを見つめながら静かに言った。
私はきょとんと瞬きをする。
「そう?」
だって。
苦しそうだったのだもの。
それ以外に、
理由なんて必要かしら?
そう思いながら首を傾げると、
王子様は数秒だけ黙り込んだ。
やがて。
「……ふふ」
小さく笑う。
「今日はよく笑うのねぇ?」
思わずそう言うと、
王子様は口元へ手を添えながら、
どこか困ったように笑った。
「貴方のせいですよ」
「まあ」
私、
そんなに面白い事を言ったかしら。
不思議に思いながら見つめていると、
王子様はまた肩を揺らす。
その笑い方は、
最初に森で会った時よりずっと柔らかかった。
王宮で見た、
完璧な王子様の笑顔とは違う。
もっと年相応で。
自然で。
肩の力が抜けたような笑い方。
……なんだか、
そっちの方が素敵ねぇ。
そんな事を考えていると、
王子様はネックレスへそっと触れながら、
穏やかに微笑んだ。
「有難く、
お借りしますね」
「え?」
私は思わず瞬きをする。
借りる?
どうして?
「私は、
あげるつもりだったのだけれど」
「――っ」
次の瞬間。
王子様の肩がぴくりと震えた。
そして。
「……ふふっ」
とうとう耐えきれなかったように、
笑い声が零れる。
私はますます不思議になる。
……本当に、
今日はよく笑う日なのねぇ。
けれど。
その笑顔は、
見ていてなんだか心地良かった。
ふと、
窓の外へ視線を向ける。
「あら」
柔らかな橙色の光が、
障子越しに差し込んでいた。
いつの間にか、
空は夕暮れへ染まり始めている。
「もうこんな時間なのねぇ〜」
思わず小さく声が漏れる。
……随分長く話していたみたい。
お茶を飲みながら、
色んな話をした。
王宮のこと。
人のこと。
国のこと。
こんな風に、
誰かと長く話したのはいつぶりだったかしら。
もう、
思い出せないくらい昔かもしれない。
数千年。
あるいは、
もっと前。
私は静かに窓の外を見つめる。
不思議だった。
たった半日程度しか話していないはずなのに、
随分長く一緒に居たような気がする。
それに。
――楽しかった。
そんな風に思ったのは、
本当に久しぶりだった。
私はくすくすと小さく笑う。
「早く帰らなくては、
護衛さん達が倒れてしまいますわよ〜?」
すると王子様は、
僅かに目を見開いた。
……やっぱり、
護衛を撒いて来ていたのねぇ。
まあ、
そんな気はしていたけれど。
王子様は小さく苦笑する。
「……そうですね」
「随分、
長居をしてしまいました」
「あら」
私はふわりと笑った。
「私は退屈しなくて、
嬉しかったわよ?」
本心だった。
だって。
こんなに楽しかったのは、
本当に数千年ぶりなのだから。
王子様は少しだけ驚いたようにこちらを見る。
私はそんな彼を見ながら、
ふと思う。
……また、
来てくれるのかしら。
もし来てくれたなら。
今度は、
別のお菓子も出してみようかしら。
そんな事を考えていると、
なんだか少しだけ楽しくなる。
私はそのまま、
ふわりと笑った。
「じゃあ、
また来てくれるのを楽しみにしているわね」
次の瞬間。
空間が静かに揺らぐ。
王子様の姿が、
淡い光へ溶けていく。
そして。
部屋の中には、
静寂だけが残った。
「……ふふ」
私は一人、
小さく笑う。
数千年。
ずっと退屈だった世界が。
ほんの少しだけ、
色付いた気がした。
静かな部屋へ、
ふと声が響く。
『……お主、
とんでもない拾い物をしたのう』
「あら、神様」
私はくすくすと笑いながら、
茶器へ口を付ける。
『それに』
『あれを渡して良かったのか?』
「あれ?」
『ネックレスじゃ』
神様は呆れたようにため息を吐いた。
『あんなもの、
この世界のどこを探しても存在せぬぞ』
『国宝級どころの話ではない』
『もしかすると、
欲しがった国が戦争を仕掛けるかもしれぬほどの代物じゃ』
「まあ」
私は小さく瞬きをする。
……そうだったかしら。
確かに、
色々術式は編み込んだけれど。
でも。
「仲良くなれたもの」
ぽつりとそう零すと、
神様は数秒黙り込んだ。
『……お主なぁ』
呆れたような声。
私は思わずくすくすと笑う。
「でも、
少し驚かせてしまっていたわねぇ」
突然渡されたら、
びっくりするのも当然かしら。
すると神様は、
半ば諦めたように言った。
『当たり前じゃろう』
『お主、
自分の作る物の価値が分かっておらんのじゃ』
「そうかしら?」
『そうじゃ』
即答だった。
私はまた小さく笑う。
……でも。
王子様、
ちゃんと受け取ってくれたのよねぇ。
—翌日。
私はいつものように、
映像魔法を眺めていた。
……と言っても。
今日はなんとなく、
王子様の映像を多めに見てしまう。
「忙しそうねぇ」
映像の中では、
王子様が会議をしていた。
重厚な机。
並ぶ貴族達。
難しそうな顔。
いかにも“お仕事”という感じ。
王子様は穏やかに笑っているけれど、
時折ほんの少しだけ、
面倒そうな空気が見える。
すると。
『最近、
あの貴族の噂が増えておりまして……』
『ですが、
決定的な証拠がありません』
映像の中で、
誰かがそう口にした。
王子様は静かに目を細める。
『奴隷売買の件にも、
関わっている可能性があります』
「あら」
私はぱちりと瞬きをする。
奴隷売買。
人身売買。
随分嫌な事をしているのねぇ。
しかも王子様、
困っているみたい。
私は映像の中の貴族を見る。
脂ぎった笑み。
妙に隠し事をしていそうな顔。
……なんだか、
見ていたら少し気になってきた。
私はくすりと笑う。
「――楽しそう」
次の瞬間。
映像魔法の数が一気に増えた。
屋敷。
廊下。
地下室。
馬車。
貴族の行動を、
片っ端から映していく。
すると。
「あらぁ」
見つけてしまった。
机の引き出しの奥。
隠すように入れられていた封筒。
そこへ刻まれていた紋章は、
違法オークションのものだった。
中には、
招待状が二枚。
やっぱり関わっていたのねぇ。
私は静かに瞬きをする。
その時だった。
貴族が部屋を出ていく。
「あ」
私は小さく笑った。
そして次の瞬間。
ふわりと空間が歪む。
――誰も居なくなった部屋へ、
私は静かに降り立っていた。
「失礼しまぁす」
こっそり引き出しを開ける。
そして。
招待状を二枚、
そっと抜き取った。
「……ふふ」
なんだか、
悪い事をしているみたい。
けれど。
王子様、
きっと困っていたものねぇ。
私はそのまま、
招待状を屋敷へ持ち帰った。
誰にも見つからないよう、
机の引き出しへそっと仕舞う。
「……ふふ」
小さく笑みが零れる。
王子様、
喜んでくれるかしら。
困っていたみたいだったもの。
これがあれば、
きっと役に立つはず。
私は椅子へ腰掛けながら、
ぼんやりとそんな事を考える。
……それに。
また、
会う理由も出来た。
そう思うと、
なんだか少しだけ嬉しくなる。
私は頬杖を付きながら、
静かな部屋を見渡した。
「お友達になってくれるかしら」
ぽつりと零れた声は、
誰も居ない部屋へ静かに溶けていく。
数千年。
ずっと一人だった。
だからなのか、
私は少しだけ不安になる。
もし。
迷惑だと思われていたら?
怖がられていたら?
もう来てくれなかったら?
「……断られたら、
どうしましょう」
そう呟いてから、
私は小さく笑った。
まるで、
昔の小さな子供みたい。
そんな事を考えながら、
ぼんやり映像魔法を眺めていると。
気付けば、
窓の外はすっかり夜へ変わっていた。
「あらぁ……」
随分長い事、
考え込んでしまっていたみたい。
私は静かに夜空を見上げる。
そして。
「……早く、
会いたいわねぇ」
誰にも聞こえない声が、
静かな部屋へそっと溶けていった。
読んでくださりありがとうございます!!
今回は黒姫視点を書いてみました!
みんなにも黒姫の良さを知ってほしい……!
そんな思いを込めて書いた回です!
次回は、
王子様がとんでもない話を持ちかけられる……?
頑張れ王子!!!
また次回もよろしくお願いします!




