自由人
対抗戦に向けてのトレーニングの日々は続き生徒達のダンジョン攻略は一旦お休みだと各自は特訓に励む。
休日返上する皆のその裏でアキトは一つのダンジョンに挑む。
自然公園を含むダンジョンで足を踏み入れると同時にその異質さに目を疑う。
(こりゃまた蜘蛛の巣だらけで気色悪いな…)
大きめの糸が目立つ蜘蛛の巣。のっけから敵の姿が浮き彫りになっていて虫嫌いのレインが居たらギャーギャー喚いて厳しい戦いになっていたなと苦笑いする。
そのへんの枝で蜘蛛の巣をどけて先に進む。すると獲物が掛かったと勘違いした蜘蛛があちこちからわいて出てくる。
「結構いるな…」
エツコから話は聞いていたマッドスパイダー、その大きさは人よりも一回り大きく何を食べてきたか考えたくもないサイズであった。
アキトは素早くブレードを抜いて一匹バッサリ切り捨てる。
蜘蛛達は油断ならない相手が来たと本能的に理解したのか遠距離攻撃の姿勢に入る。
(蜘蛛の糸か、ダルいな)
尻から射出される糸を回避しつつ一匹ずつ確実に仕留めていく。しかし想像以上に数が多く次から次へと増援がやってきてアキトもいい加減疲れた顔になる。
奥義を使うかと絶空の構えに入り精神を研ぎ澄ませる。
「いくぜ、奥義!」
なにか来ると蜘蛛達は身構えるがそんな防御姿勢すら吹き飛ばすアキトの一撃が襲い掛かる。木刀の時とは比較にならない激しい旋風カマイタチ、周囲を引き裂き蜘蛛達は文字通りバラバラにされる。
満足の行く一撃にアキトは一息ついて切り開かれた道を悠々と進むのであった。
池が見えてきてアキトは足を止める。
既に魚等はいなくなっていそうだが静かな湖面に波紋が起こる。
サハギン達が顔をのぞかせて久々の獲物だと躍り出てくる。
(海じゃないのにサハギンかよ…酷い環境だな)
内心ツッコミしつつアキトは休み無しの戦闘に入る。
池から出てくる槍持ちは問題なく処理できるが弓を池の中から構える厄介者が居てアキトを悩ませるのであった。
(遠距離か、どうするかなぁ…)
手はあるが面倒臭いと思いつつ一刀流に構えて真空波を剣の一振りで飛ばし見事に命中させる。
(息子の精霊技だがちょいと魔力乗せれば撃てるもんだな…)
綺麗に技が決まると気持ちがいいとアキトは続けて放ちまた命中させる。調子に乗っていると背後から近寄る蜘蛛の気配、挟み撃ちにされては困ると素早く立ち位置を調整する。
他にも空を飛ぶモンスターの気配が公園外のビルから向かってくるが全部相手してやるとアキトは構えて戦闘を再開する。
真空波をバシバシ放って向かって来る敵を滅多斬りにしていく。日頃のストレスをぶつける様に荒めの口調になりつつ雑魚を蹴散らす様はまさに鬼神の如くであった。
ーーーーー
ブレード一つで迫りくるモンスターを全て排除仕切ったアキトは軽く肩で深呼吸して周囲を見渡す。
(コアはまだ先か…早く行かないと雑魚に復活されても困る)
アキトは早足でコアのありそうな地点を探る。
公園を抜けた先のランドマークになりそうな豪勢な建築物が見えてくる。否が応でもここがそうなのだと理解しアキトは嫌な予感を感じつつ足を進める。
屋内は洋風の劇場のようでホコリを被った受け付けが目に入る。
「こうも分かりやすくお膳立てされると舐められてるのかとも思うね」
内部の劇場に入ると舞台の上にコアが突き刺さっていて「やっぱり」とアキトはニヤついて多分と思いながら天井を見上げる。
床に落ちているシャンデリアの代わりに巨大なコウモリがぶら下がっていてアキトは先制攻撃だとブレードを構える。殺気に気づいたか羽根を広げて降りてくる。その大きさは翼を広げたら五メートルはあろうかというサイズで身体は半人で吸血鬼のような姿であった。
「ヴァンパイア?なんか違うな…」
コアを守るボスを相手にアキトはインカムで管理部隊に連絡を入れる。
「ボスとやり合う回収部隊寄越してくれ」
それまでに終わらせるとアキトは速攻で終わらせると斬り掛かる。敵はフワッと浮いて回避しつつ小型コウモリを飛ばしてくる。それをアキトは切り裂き舌打ちする。
ちょこまかと動くつもりなら仕方ないなとアキトはスッと構えを変えて一刀流で真空波でスパスパと周囲をまとめて敵を引き裂く。それも見えているのか敵は翼を羽ばたかせて回避を繰り返すが一撃掠ってから流れが一気にアキトに傾く。
小型のコウモリだけではアキトの快進撃は止められず翼に攻撃が直撃して遂に堕ちる。
「決めるぞ!絶空!」
屋内では使うつもりは無かったが逃さないためにはコレしかないと立ち位置に注意して奥義を放ち劇場内をズタズタに引き裂く。
敵は奥義に飲まれて劇場と同じ様に引き裂かれて絶命するのであった。
戦闘終了を見計らって管理部隊が入ってきて劇場内の惨状に溜め息を付きながらコアに向かう。
「コアが無事なのが奇跡的だな…」
「一応注意しながら戦ったからな」
自慢気にアキトはコアが無事なことを語る。
回収中もアキトは建物が壊れないか心配しながら辺りを見渡す。
「道中全て倒していたようだな…怪物だな」
「勇者って言ってくれよ」
「先生やってるならそんなお子様言う歳でもないでしょうに」
呑気な雑談混じりにまた一つダンジョンが踏破されるのであった。
ーーーーー
しっかりと任務を終えたアキトは大手を振って拠点へ帰還すると飯だメシと食堂へ向かう。
いつも通りカレーを大盛りでカツも乗せちゃおうと注文して食べていると攻略のお知らせが届いて対抗戦の準備中に何やってんだと周囲はざわつく。
(生徒達と違ってやる事無かったから仕方ねぇだろ)
水を飲みつつカレーをかっ込みながら内心ボヤく。
当然F班のメンバー達はアキト先生がやらかしたと理解して全員が揃って食堂に姿を見せる。
まだカレーを食べていたアキトを見付けて一斉にツッコミしてくる。
「何してるんですか!飯食べてるし」
「自分のトレーニングに付き合って下さいよ!」
「やっぱり一人で行ってたんですね…」
一人情報を提供していたエツコは溜め息混じりにアキトの行動を呆れる。
取り敢えずアキトはこの後ちゃんとトレーニングの面倒見るからと謝り許しを請うがご機嫌ナナメになっている生徒達は鼻を鳴らして顔を背ける。
「おいおい、教えられる事が少なくて任せても大丈夫だと思っているんだが…」
「いや、正直足りませんよ…対抗戦の練習にならないし…」
男子達は相手が少なくそういうのに詳しい先生に協力して欲しいと言われてアキトは自分も我流だがと断りを入れてから夕方からトレーニングに付き合うことになるのであった。
ーーーーー
アキトは自分の知る流派を真似た姿勢を取りハジメやアスカ、ススムと対人のトレーニングを開始する。
しっかりと守りから入るハジメはアキトが放つ汎ゆる角度からの攻撃をしっかり受け止めてカウンターを放ってくる。アキトもそれを木刀で受け止め負けず嫌いを少し見せてしまう。
「あ、すまん。攻撃入らないと駄目だな」
「いえ、守られるということは攻め方が緩い証、もうちょっと続けます」
ハジメは生真面目にトレーニングを続けてアキトから必死に一本取ろうとするが中々取れなくてアスカ達が耳打ちでアドバイスする事になり三人揃って頷いてどうやら新しい策が出来たらしく、次の打ち合いで盾でアキトの攻撃を受けると同時に軽くよろけるフリをして足払いしアキトの姿勢を崩す。
「うぉっ!」
ダーティな戦い方を教えた本人として引っ掛かったのが悔しくてちょっと時を加速してしまい追撃を防ぎ「あっ」と声を漏らしてアキトは負けを認めるのであった。




