三つの条件
ダンジョンを攻略したF班を敵視するようにピリついた空気が学び舎に満ち溢れアキトが朝の教室に入ると生徒達が過敏にビクッと反応する。
「空気感の違いは理解しているみたいだな」
アキトは殺気に似たひりつきを笑い慣れろと今後の活躍をやっかみされるのは確実だからと笑う。
「皆義務でダンジョン行ってるだけで攻略する気ないのに何で俺らが妬まれてやっかみに思われなきゃいけないんだよぉ…」
アスカが机に突っ伏して文句を言うがアキトは「人間なんてそんな生き物だ」と鼻で笑いながら口にして朝礼を終えると授業頑張れと嫌な空気感の中で頑張らないといけないのかと全員ガックリするのであった。
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アキトがいつも通りグラウンドをふらふらしていると偵察扱いされて邪険に扱われる。
影の立役者と知られていてどんなトレーニングをしていたかも今までの観察を受けていた事でアキトは不要だと近づけさせてくれなかった。
(ま、遠巻きに見るんだけどな)
グラウンドの外からどんなトレーニングをしているのか見て楽しむ。
(いいトレーニングだな。だが色々と足りてないな)
対人戦向けのトレーニングをどこもかしこも行っているがアキトから言わせてみれば基礎的な所、型などが足りていないと見る。
(我流と我流じゃ学びは少ない…戦いは知識と経験、敵を想定しなくてはいけない実戦になってから知らなかった分からなかったは通らないからな)
チャンバラだけじゃ勝ち目はないと後方腕組おじさんのような目線で眺める。
生徒達の使う技が単調で技術の低さが露呈するとアキトは見るものは少ないと見切って次の時間まで他に得るものが無いかと別目的で観察を始める。
(とはいえ筋トレやランニング、大人数だから出来るスポーツもあるし…そこから得られる能力も馬鹿に出来ないな)
スポーツ大会なんかあったら参加出来ず歯痒い思いするだろうなと苦笑いしているとチャイムが鳴り響いて一時限の終わりを告げる。
アキトが見ていたA班のトレーニングは終わりB班がやってきてマジマ先生がアキトを一瞥して面白がり茶化す。
「敵情視察ですか?何か得るものはありましたか?」
「特に無いかな、スポーツするのにウチは少なくて残念だなって思った程度」
「そうですか、まぁちゃんと見て行ってくれてもいいんですよ?我々はオープンですから」
ハジメの件でお互いバチバチと敵意剥き出しな社交辞令なやり取りをしつつお言葉に甘えてアキトは観察を始める。
(B班には確かオウミとかいう実力二位が居るんだっけか…どれあの時のオーラは本物か確かめさせてもらおう)
以前食堂で測った強者のオーラは本物かアキトは目を光らせる。
打ち合いが始まると隙の少ない佇まい、構えにアキトは何処かの流派を会得しているなと察する。
真正面から打ち込まれた攻撃をゆらりと避けつつカウンターを決めるその姿に流石に息を呑む。
(流石の前評判、気合の入った立ち回り…これより上がいるのかと思うと少し見学が楽しみになってくる)
オウミは続け様に二人、三人と打ち倒しバッチリ残心も決めて和の動きを見せる。
(成る程古武術の類いか。水の様に流れて…打つ)
隙が少なくてアキトは自分ならと攻略法を脳内シミュレートする。
(あの手は型にハマると激流に飲まれる様に一瞬で喰われる…ならばこそダーティな戦術が通りやすい。蹴り、目潰し流れをコチラに引き込む)
大人げない戦術を取るアキトのシミュレート、柔よく剛を制す。ならば柔には何が通るか、技だの卑だのと言われそうな手の数々をアキトはぶつけてみたくなる。
(俺が対面する訳じゃないのに熱くなるのは良くないな…しかし、何度打ち取り打ち取られた?…やめよう。生徒相手だ)
他に目を見張るオーラは無くアキトはがっつくのをやめて少し離れた位置に戻るのであった。
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F班がグラウンドを使う時間になり五人が疲れた顔をしてやってくる。
「よぉ、おつかれさん」
アスカが早速愚痴る。
「先生達まで少し敵視してくるの疲れちゃいますよ…」
「先生達にまで嫉妬されてるのか。そりゃ大変だ」
「いいですよね先生は外で見学するだけですもんねー」
そんな事は無いぞとアキトも他からやっかみされていると笑って話す。軽い様子だから余り伝わらないが外で見てきて幾つか分かったことがあるとヒントを出す。
「強い奴らにはそれなりに理由がある。『流派』だったり『型』だったりっていうやつだ」
個人戦に出るハジメは緊張した面持ちでアキトの言葉を聞いて元同じ班のオウミの事かと理解する。
「確かにオウミのやつ妙な動きしてたな…それが先生のいう?」
「そうだ、まぁ今から付け焼き刃なもの覚えるより俺流を教えてやろうかと思ってな」
アキトの言う俺流と聞いて男子達は全員興味津々な様子で耳を傾ける。
「言っとくが俺の技は柔や剛じゃない。故に気に入らないってやつも多い」
アキトはサッとコートの内側から手裏剣を取り出して土嚢に瞬時に投げつける。全員一瞬の出来事でポカンとする。
「もう一回見せようか?」
「いや、先生。試合にそういうの持ち込めないです…」
投擲物は危険過ぎて使えないと語りアキトはコレならどうだと目潰しの砂をパッと投げてみせる。
「騎士道にも武士道にも反する俺流の悪意ある技だ。まぁ卑劣だのなんだのと言われる覚悟はいる」
剣で決着を付ける中で足技や投擲物なんて使われる訳ないという意表を突くダーティな技を見せられて生徒達はドン引きする。
「外道だの邪道だの…勝って生き残ればそれでいい」
「うわ、この人根っからの悪タイプだった!」
「ガハハその通り、決闘なんざクソ喰らえの邪悪だぞ!」
流石にそれは受け付けないと生徒達はドン引きする。しかしハジメはしっかり話しを聞いた上で対策を尋ねる。
「実際そういう相手に当たったらどうすればいいですか?」
「ほう、勉強熱心だな。そうだな…ダーティに戦う相手には剛が効く。つまり綺麗事抜かす暇あるなら殴れ。真っ直ぐな剛は卑に強い」
三竦みというものを語りアキトは指を三本立てる。
「敵を知り、己を知り、有効打を知る。物事何にでも言える勝つ為の鉄則!」
「し、知らない場合は?」
「学習しろ!想定しろ!何もやらないよりはマシだ!」
アキトは続けて答える。
「敵…これは変える事の出来ない存在。だが己は変えられる。そして有効打を知ることで有利に変えられる。知識は力に、知恵は技になる」
その上でアキトは卑劣な技も時には必要になると語る。
「使いたくなければ使わないでいいが知識は必要だ。覚えておけ」
言いたいことは伝えたとアキトはそれぞれに鍛錬のメニューを渡して残った時間でこなせと結構な無茶振りをするのであった。
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お昼、無茶なトレーニングをしてぐったりしている男子三人を女子は心配そうに見つめる。女子達は競技側で殴り合いとは無縁とアキトからのトレーニングメニューはそこまで厳しくなく簡単にこなしていたからでもある。
「ちょーっと先生厳し目だったわね」
配給の弁当を続きながらエツコは苦笑いする。
「ちょっとじゃないやい…時間足りなかったって」
「話聞かなきゃ良かったかもって…」
アスカとススムはぐでっとしているがハジメは元仲間を見返す為に少しでも身に付けようとイメトレというアキトの云う学びをしていた。
「ハジメ君が瞑想してる…」
「迷走じゃなく?」
カスミの言葉をアスカは茶化すが真剣そうにイメトレしているハジメにアスカ達も感化される。
「イメトレか…仮想敵は誰だろうな…」
「知ってる相手…先生とか?」
少なからずある因縁なぞ知りもしない彼らはハジメのイメトレを影から応援するのであった。




