対抗戦に向け
コアを前に生徒達も緊張した面持ちで「初めて見た」とゴクリと唾を飲み込む。
「管理部隊は?」
アキトがエツコに尋ねると「数分後」と答えてアキトは座り込む。
「遺物か…俺の記憶じゃこんなショッピングモールは日常だったってのに…」
アキトが時を越えた存在だと隠す気も無く語ると生徒達は目を丸くして興味津々に聞きたそうな顔をする。
ハジメは唐突にダンジョン内に現れた存在としてアキトはきっと何かしらの役目があるんだよと力説し始める。
「時を越えるなんて先生はきっと何か重大な役目を持って現れたんだ!」
「何馬鹿な事を…」
エツコが否定しようとするがアキトは軽く溜め息をついてハジメの言葉を肯定する。
「そうだよ、俺は世界を救う役目を持ってこの世界にやって来た…笑えるよな?」
疲れた様子を見せるアキトに皆笑うこと無くハジメは「カッコいい!」と反応する。
「先生は正義の味方!ヒーローじゃん!」
子供っぽい例えだとアキトは苦笑いしつつ素朴な疑問をエツコに投げ掛ける。
「コアは破壊されたらダンジョンはどうなる?」
「破壊?!…えーっと破壊されたら…モンスター達の生成は止まりますしダンジョンとしての機能は失われると思いますが…それ以前に資源の損失が大きいと…」
「そうか、資源か…」
どんな資源か詳しくは知らないがそれなら仕方ないなとアキトはそろそろかと立ち上がると管理部隊が到着していそいそとコアの回収を始める。
アスカがガッツポーズして自分達が活躍して回収したんだと声を上げて顰蹙を買うがアキトはその通りだと頷く。
「トドメはススムがやったようなものだしな。お前らの活躍だ」
ススムは恥ずかしそうにするがアスカは更に調子の良いことを言い始める。
「やったぜ!これでF班の名前が伝説になるんだ!」
「調子に乗らない!勝って兜の緒を締めよ!よ?」
エツコに頭を叩かれて笑いが起こるのであった。
ーーーーー
管理部隊と拠点へ戻って来るとコアの回収がF班によって完了したと放送が流れて空気がピリッと一瞬だけする。
アキトはまだ早かったかと空気のひりつきに反応するが生徒達が気付いていなくヤイヤイしているのを見て少し過敏になり過ぎていたかと緊張の糸を解く。
「これで馬鹿にされてた事実を見返してやったぞー!」
「先輩達の雪辱を果たしたんだ!」
アスカとススムが拳を掲げ子供っぽく振る舞うが英雄視されるとカスミに言われて急にキリッとした顔になる。
「急な変化は格好悪いわね…」
その変わり様に何時も通りエツコにツッコまれてニヤケ顔に緩む。
「フヘヘ、何か頑張った分今になって手の震えが…」
「ボクも…」
二人ともダサいと女子から睨まれるのであった。
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夕食まで時間もあるしアキトは一人で休日の学校に戻ると告げると休みを堪能したい面々はそれぞれ別れる事になる。
アキトは職員室に入り学長室を尋ねる。
「放送は聞いていた。お疲れ様だ。三つ目だな」
学長は来ると思ったと目を光らせる。
アキトは生徒達から聞いていたコアの使い道について聞きたくなってソファにドカッと座り質問をする。
「コアって管理部隊が回収したあとどうするんだ?生徒達からは資源として使うと聞いているが」
「拠点内の電力エネルギーに変換する。つまりバッテリーだ。一つで一年分にはなる」
「つまり三つも回収したら…過剰になると?放置するのか?」
コアの管理は厳重にしていると学長は睨みつけるようにアキトを見つめる。アキトは破壊した場合どうなるのかと恐れ知らずに尋ねる。
「あのエネルギーの塊を壊すというのか?恐れ知らずも良いところだな」
「大爆発?その程度か?」
アキトの言葉に学長も思わず苦笑いしてちゃんと説明を行う。
「最悪新しい小さなコアを生み出す。つまり増殖する」
「成る程、増える…か。そいつは厄介極まりないな…まるで今の状況のようだな」
過去まるでそんな愚行が横行したかのような現状にアキトは鼻で笑う。学長は過去を振り返るように答える。
「エネルギー化出来なかった過去起きた悲しい事件さ…」
「エネルギー化出来る今でもこうして回収すると爆弾抱える事になる…か。回収部隊が緊張しているのが分かったよ。だがダンジョンを放置して領地を減らす訳にはいかない」
「ああ、その通りだ…」
救ったあとの後の事をじっくり考える必要もあるとアキトは理解する。
「だが俺にも使命はある。止まらないぞ?」
「キミはキミの目的を果たしたまえ。その後は我々の仕事だ」
世界の行く末に関してはアキトは気にする事は無いと言われて今後も攻略を続ける覚悟を決める。
学長はそこまで話したあとニヤついて生徒達はどうかと質問してくる。
「今日の出来事は生徒達の転換点としてよく働くと思うか?」
「空気のひりつきは感じた。だが実際の変化は明日以降だな」
「そうか、そろそろ対抗戦等を考えているが…フフフ、F班の生徒達が無双してくれる事を期待しているぞ?」
対抗戦と聞いてアキトは目を丸くする。
「聞いてないぞ!?対人の育成はしてない!」
「発布から余裕はある。頑張りたまえよ」
学長は嬉しそうにアキトの教育者としての手腕も楽しみだとゲラゲラ笑うのであった。
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夕食時、羨望と嫉妬の眼差しが飛び交う食堂でアキトに生徒達からこのピリッとした空気を訴えてくる。
「なーんか嫌な感じだ…」
ハジメが口にした言葉にウンウンと皆が同意して背後の視線を気にする。
「やっぱり班の名前出されたから皆気にしているんじゃないか?」
アスカの言葉にカスミも同意する。
「うーん…名前出したの良くなかったかな?」
不安そうにする生徒達にアキトは「気にするな」と黙々とカレーを食べていたが答える。皆はまたカレー食べてると内心ツッコミ入れつつ慣れない様子でキョロキョロする。
殺気に似た空気にアキトは水を飲み涼しい顔をして対抗戦について話す。
「お前ら、そろそろ対抗戦に備えた方がいいぞ?学長がやるって言ってた」
「「「対抗戦!?」」」
アキトの言葉をオウム返しで叫び食堂内の空気が一変する。対抗戦、そのフライングで流れてきた情報に全員努力しようという空気になりアキトは満足げにカレーを平らげる。
「どうやらやる気の方向性が皆揃ったみたいだしお前らもうかうかしていられないからな?」
コアを回収した班として当然狙われるとアキトはニヤニヤすると生徒達はすぐにでも特訓しなくちゃと燃えるのであった。
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後日、予定通り学長から対抗戦について発布され訓練の成果を見せられると各班浮足立っていた。
「対抗戦の種目は長距離ランニング、近接個人、対人タッグ。的あて精密性、連射性…うーむ微妙」
アキトは内容を確認してそう反応する。
生徒達はどれも余裕と言いたげな感じであるがアキトはどれも競技性ばかりで実戦的なものが少ないと語る。
「どのみち人を相手取る事しか思考になくて余りダンジョン攻略の競い合いにはならないなって話」
「まぁ学業の片手間…本来は対人の運動会のようなものですし」
エツコの説明に全員頷いてそれでも勝つと意気込む。
「まぁいいか。エントリーどうする?精密性はカスミ…連射性も行けるか?」
カスミは大きく頷いてどんな的でも射てみせますと力説しエツコは自分はと驚く。
「魔法だしなぁ、対人で怪我もよくないしランニング行くか?」
「えぇ…」
男子三人はどの様に割り振るかとアキトは思案するがハジメが挙手して個人で皆を見返してやりたいと語りアキトは了承して残りはタッグと割り振るのであった。




