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魔族

魔族を探すアキトであったが魔物の存在が邪魔をしその日の内には発見することが出来ず、夕食時には渋い報告となる。

当然意気揚々と一人で行くと言っておいて収穫無しをシシーに指摘されて面目ないと謝る。


「街道の制圧は後回しにその元凶を皆で退治する。そっちのほうが良いかもしれませんね」


レックスの発言に全員賛成しアキト一人にはやらせないという空気感になりアキトは渋々承諾する。

一応自分が見かけたモンスターの魔物化した敵は少し強かったと注意をしておくのであった。


翌日、六人揃っての朝からの調査、出現する魔物は昨日とだいたい同じだが自然的なものが増えてきていた。


「植物型、ゴーレム型が多いですね」


植物には魔法や斬撃、ゴーレムには打撃とアキト達六人揃うことによるの分担が活きていた。

他の冒険者達の頑張りもあるのか大分数も楽で前日より進軍が進む。

この調子ならとアキトが思っていた時であった。少し遠く視界の端に人影が映る。魔物のような歪さもなく何か探すような仕草をする青い肌の魔族だ。

レックス達も気付いて緊張した空気感になりその空気が伝わったのか魔族はアキト達の方向をみる。

筋肉のついたがっしり体型の魔族は運が良いとニヤついて指をパチンと鳴らす。


「六人か、ヘヘッ、屍兵が減って困ってたんだ。その身体使わせてもらうぜ」


魔族は指で丸を作り口に当ててフッと黒いガスをめいいっぱい吐いてくる。

全員がその煙を見てアキトの言っていた意味を理解しアキトが代表して素早く身代わり人形を煙に投げつける。

みるみる内に人形が煙を吸い込み肥大化し歪なマネキンのような物に変化する。


「なんだとっ?!ッチ、リチャージまで時間使うってのに外したか?!」


魔族は舌打ちして逃げようとする。アキトは素早くマネキンを飛び越えて魔族の裏に回り込む。


「な!?何もんだテメェ!」


「お前ら!その人形を倒せ!俺はコイツを()る」


レックス達は返事をしてマネキンに挑む。

殺す宣言された魔族はアキトに対話での解決を望む。


「待て待て!は、話し合おうぜ!な?な?」


生憎(あいにく)お前達魔族と会話する耳は持たないんでな」


「く、クソがっ!」


交渉決裂と身構える魔族をアキトが木刀で相手の格闘攻撃をいなすようにボコボコにしていく。


「馬鹿な!俺の拳が…!」


「力自慢のようだが遅いな、速度を上げるぞ!」


アキトの攻撃スピードがドンドン上がり攻守が逆転して魔族は必死に受けに回るが手脚に伝わるダメージが限界になり遂に首へのクリーンヒットを許しへし折られ退治される。

すぐに仲間が駆け付けてきたが既に一人倒されているのを見て警戒の姿勢を取る。


「ガストン!…フィミー気を付けろ今迄と違うぞ」


「分かってるよサハブ!あっちの男は任せな!」


女性型のフィミーと呼ばれた魔族がアキトに向かいサハブと呼ばれた細身の魔族がレックス達に向かう。

サハブはすぐに数の優位を取ろうと地中から魔物を呼び出しガスをレックス達に吹き付ける。

読んでいたと人形を投げ付けてガスを無効化しサハブは度肝を抜かれる。


「コイツら!オレ達を知ってる?!」


サハブの様子にフィミーは大きく舌打ちしながらアキトに蹴りを見舞うが受け流し飛ばされ地面に叩きつけられる。


「お得意の煙はどうしたよ?」


アキトに挑発されて吹き出す姿勢になるフィミー、アキトは素早く手裏剣を投げ付けてその構えた腕を狙撃する。


「グァッ!卑怯なッ!」


「お互い様だろ」


「貴様は手駒にしない!殺す!」


人を手駒にする手口を卑怯と言わずしてなんと例えるかとアキトは威勢よく手裏剣の連射し敵の手脚を完全に封じ込める。

頭を狙わず痛め付ける悪辣なやり方と敵は悔しそうに膝をつく。


「話してもらいたいことがあるからな、まだ死ぬなよ?」


「外道め!」


アキトは後ろの五人とサハブの戦いをチラッと気にする。

人形をそそくさと倒し残るは呼び出した虫型の魔物、それもすぐに難なく突破しサハブと肉薄していた。


「畜生!なんなんだテメェら!」


捨て台詞には少々覇気のない言葉を最期にレックスに討ち取られる。

大したこと無かったなとアキトはフィミーの方を振り向くが這々(ほうほう)(てい)で逃げるフィミーが目に入る。


「あ、逃げてる…まぁあの手傷なら追い付くだろ」


レックス達がアキトに近寄り追いかけないのかと進言する。


「人形無いからな…下手に一人で追うよりお前らと一緒に行く方がいいかなって」


適当な言い訳をしてから逃げるフィミーをゆっくり追う。

予想通りなら三人で終わりだがまだいる場合は危険だとアキトは慎重に一網打尽の考えで進む。


ーーーーー


小さな洞穴、住処にしていた場所まで逃げてきたフィミー、アキトは五人にストップを掛ける。


「何で止まるのですか?」


レインの質問にアキトは灯りが無いことを理由に咄嗟にガスを回避出来ないと説明する。


「あら灯りならあるわよ?レックス?」


「あ、そっかサラマンドラ!」


精霊を使い火を付けて視界の確保をする。

アキトは感心しながらコレなら行けると全員に人形の準備をさせて進軍を始める。


血の跡が続く小さな洞窟、すぐにボロボロで息も絶え絶えなフィミーを発見する。

周囲の確認をしながらアキトはレインから人形を受け取りフィミーを尋問する。


「他の仲間はいるか?」


「答えるものか…!」


「飛竜は一匹残っている…帰らせてやらんこともないぞ」


アキトは乗り物を案に伝えるとフィミーは険しい顔をする。


「ふっ、アレか…しかしこの手傷、どうせ長くはない…殺せ」


()、アキトはコイツで今は最後と判断しレックスの剣を借りる。


「必ず仲間が貴様を殺す…」


「それ前も別の奴に言われたな…」


魔族とは別の悪魔達に言われたのを思い出して口にしながらアキトはフィミーにトドメを刺すのだった。


ーーーーー


港町に戻ると祝勝だと豪遊するレックス達、後は残る魔物を処理すれば平和が戻ると喜び合うがアキトは心配性なセリフを吐く。


「まぁ加護ってのが張られるまでまだ油断は出来ないからな?」


水を指すなとシシーに足を蹴られるが実際その通りとレックスは頷き他のメンバーも同意し一層気を引き締めようとなる。

今回の魔族についてレインは報告書を作成し各国へ魔物と共に対処、認識を広めるよう(つと)めるのであった。


ーーーーー


数日後、加護を張るための聖女達と共にぞろぞろと沢山の人が港町を訪れる。

最初は聖女を見るためかと思ったが冒険者や研究者な風貌等が混じっていてアキトはまさかと胸を高鳴らす。

朝から慌ただしく動く聖女陣営と研究者陣営、レックス達は聖女を一目見ようとアキトやレインと別れてそそくさと教会へ行ってしまう。


「手紙、お返事来てます」


レインからの報告にアキトは緊張した面持ちになる。

ケインズ卿からの返事は…


『新たな土地に帝国の領土を築くチャンスは物にする。ひいては研究者と聖女の護衛の任を新しく二人には与える。追伸、亜人の国の動きは新大陸調査という名目で深く関わることになり不要となった』


アキトはガッツポーズしレインに自分達は開拓者として世界を文字通り探検出来ると力説する。


「冒険、探検はいつもしていると思いますが…」


「俺にとって未開の地ってのは本当に珍しいんだよ。俺の世界は既に99.99%は解明されてて…未開って言えなくてな」


「えーっとつまり?」


割合を理解出来ないレインは首を傾げる。


「自分の脚で調べられるのは男冥利に尽きるという事だ!」


「うん、分からないです…私は不安です…」


アキトは意気揚々と外の研究者達と合流しようと拳を高らかに掲げてレインは深い溜め息をついてアキトの子供っぽいところに呆れながらも楽しそうな顔を羨むのであった。

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