いざ冒険へ!
帝国の研究者達とアキトは面通しをする。
皇帝の指示とはいえ本当にレベル1の男が参加するなどと全員アキトのヘラヘラ顔を不安に思う。
護衛と探索の為の冒険者は他にも参加していてタロスがアキトを見つけて声を掛けてくる。
「お前か…ここでも出会うとはな」
「帝国専属じゃないのか?」
「トールと再会してな、チームの経営はアイツに任せて俺は新大陸で一儲けって話だ」
隔たりや溝がなくなり昔の友人としてタロスはトールと和解したんだなとアキトはモンスター大量発生も悪くなかったと心穏やかに微笑む。
その反応は気色悪いとタロスはアキトに嫌な顔を向ける。
「なんでお前がそんな顔するんだ…」
「冒険に胸が高鳴っててな、気持ちも穏やか…いや昂奮に包まれているぞ」
「怖い物知らずか?最近発布された魔物とやらは怖くないのか?」
人すら怪物に変える力、アキトはそれ教えたの俺と自慢気な顔をする。
タロスは手柄を立てているアキトへ苦々しい顔を向ける。
「詳しそうだな、その時はお前を盾にするか」
「勘弁してくれよ。ぬいぐるみでも持ってけ」
そんな子供じみた物を誰が戦地に持っていくかと呆れられるが身を守るには最適だと伝える。
レインが合流してきてタロスは鼻を鳴らし留意しとくと伝えて去っていきレインは不思議そうに何の話だったのかとアキトに尋ねるも雑談と返されて不服そうな顔をするのであった。
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加護を貼り終えたのか教会の一団が研究者チームに合流してくる。
その一団の中で一人白い修道服を来ている女性が恭しく挨拶をしているのを見てアキトはすぐにあれが聖女かと察して会話に耳を傾ける。
「向こうについて拠点を作成したら私は加護を貼ります。それまでは調査は控えて守りを固めて下さい」
(成る程、同行するのか)
調査用のキャンプ地と住居の作成と色々と忙しそうな前半になりそうだとアキトはどちらに協力するか悩ましいと開拓者精神を燃やす。
レックス達一行がアキトに合流し惚けた顔をしていた。
「聖女エレイン様、いいですよねー。美しい…」
ボケっとしているレックスにアキトは背中を叩いて喝を入れる。
「自分だって美人に囲まれてるのに他の女に目を奪われるなよな?」
「あぅ、た、確かに…」
正気に戻った一行の白けた目を向けられレックスはタジタジになる。
「お前、新大陸はどうする?行くか?」
「え?!行って良いんですか?!」
「ん?俺は行くよう指示貰ったからな。そっちだって開拓民とかで研究者とかに申請すれば行けるんじゃないか?」
レックスは昂奮した様子でアキトみたいにはしゃぎながら早速と冒険心に火を付けて走って行ってしまった。
「オッサン、余計な事を…」
「冒険はしたいだろ?冒険者なんだから!報酬も良いらしいぞ?」
「報酬…気になるじゃない!」
手のひら返しが早いとアリスにツッコまれつつ六人はあっさり新大陸へ向かう事が決まるのだった。
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船や物資の用意、他の冒険者達の準備等で出発は明日となり可能な限りの準備をするようにと通達を受けて港町は一気に繁忙となる。
「ま、第一陣はキャンプ程度の道具になりそうだな…建築物とかは後日になりそうだ」
場所を移したアキト達は組合酒場から外の様子を確認しながら準備について説明する。
「新航路の船旅は危険だぞ、水と食料はありったけ…腐らない程度に持ってけ。予定通り行くと思うなよ?」
「はい!」
レックスだけいい返事をして手荷物を確認している。
女性陣は燃える男二人に呆れつつ食料のチェックを行う。
「2日、3日…本当にそんなに必要なの?」
「釣りくらいでしか道中補給出来ないからな?野菜なんかは特に重要だぞ?水も海水から抽出するとかで時間も掛かる。油断したら枯れるぞ?」
現代の感覚だとものすごい速度で移動出来るが中世では風が頼り、人力にも限界があり予定通り行くことは無いし栄養不足にも陥る事がままあり生存率は高くなかった。
アキトはそれを危惧して自分達だけでなく補充不足の面々にも施せるようにと可能な限り用意するよう伝える。
「数日で壊血病なんかにはならないだろうが一応な?向こうの大陸で補給できる保証はないからな」
「た、確かに」
到着後の事を考えてアキトは伝えると全員に納得する。
会話を聞いていたのか聖女エレインが一人でアキト達に近寄って来る。
「あの、旅に慣れているご様子で…私達に何か出来ることはありますでしょうか?」
「教会側か…まぁいざという時の食料の施しとか用意されてると感謝できるが…町に残ってるかどうか…」
アキトは頬を掻いて難しい表情をするとレックスがデレデレな顔をして自分達のを分けると言い出す。
「本末転倒だからよしなさい!…共通の物資にするというのならありだが管理者に権力が渡りすぎるから俺的には否定派だ」
「教会はそんな酷い場所じゃないですし聖女様が管理者になればいいんですよ!」
「阿呆、その聖女様が困ってるだろ」
苦笑いしている聖女を見てレックスはペコペコ謝る。
実際に聖女が権力を握るのではなくその上にいる教会の組織そのものが権力を握ることになるとアキトは危惧しやはり個々でまずは持つことが大事と話し聖女側も納得してもらえた。
「まぁ後は向こうに着いたら建物が欲しいな…大工とかいると助かるんだが…皆でテントで雑魚寝は嫌だろ?」
嫌だと不満の声が聞こえてきてアキトはそういう事と聖女に伝えるのであった。
人々の意見が聞けて満足と言いたげな顔の聖女はアキトの頭の上をチラッと見て「呪い」と呟く。
「ん?あー、呪いだけど…非表示に出来る?」
「えーっと…私ができるのは加護だけで…」
無理かと肩を落とすアキト。
雑談をしたそうな聖女だったがすぐに教会のお付きの人がやってくる。
「聖女様!民草の意見を聞くのも良いですがあまりウロチョロされると困りますぞ!」
(河童だ、河童ヘアースタイルだ!初めて見た)
頭頂部を剃ってツルピカな宣教師にアキトは目を丸くし歴史の教科書でしか見たこと無いと驚く。
聖女は服の埃を払いながら謝罪しアキト達に一礼する。
「ジェレミー、ごめんなさい。では私はもう行きますので。ご意見ありがとうございました」
去っていく聖女を見てアキトは「お飾りか」と同情するような目を向ける。
レックスはどういう意味かと不思議そうにする。
「結局はシンボル的な扱いって事。彼女は後ろのお付きやお偉方には逆らえない立場なのさ」
しばらく全員が聖女の背中を視線で追って無言になるのであった。
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翌朝、出発する大型船が到着し全員が大きさに呆気に取られる。
続々と荷物が積み込まれていくのをアキト達も手伝う事になり自分達の荷物も纏めて積み込む事にする。
「船員、研究者、教会関係者、冒険者、開拓民ざっと五、六十人くらいか」
「多いですね…」
レインはそう感想を述べるがアキトは少ないと思うと船の大きさに比べての意見を述べる。
「積もうと思えば倍は乗れる。まぁそれだけ慎重って事だな」
「船倉も人詰める気ですか?!」
「ウチの世界では昔奴隷船ってのがあってな…まぁ黒歴史なんだが」
悪い歴史でそういうのもあったとアキトは苦笑いする。
今回はそこまで悪い環境じゃないと語り甲板から大海原を目にする。
「いざ、新大陸ってね」
「何日掛かるのでしょう…手紙も届くかなぁ…」
「早ければ…2日か?飛竜ってどのくらい速いのか、それ次第だ!」
不安いっぱいのレインにアキトは肩を叩いてとにかく頑張ろうと根拠の無い励ましをするのであった。




