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真相を求めて

レックス達と別れ際にアキトは会議で聞いたモンスターの大発生について依頼が来るかもと(ほの)めかし特訓には丁度いいと笑って伝える。

ケインズは余計なお世話をと他の卿への協力は渋る様子で皇女暗殺未遂の事で頭がいっぱいのようであった。


帰りの馬車で協力を渋る真意を確認するとケインズはこう答えた。


「若輩の私が手を貸せば立身出世の野心と見て取られる…自身から進んで協力するのではなく要請に渋々答える程度が丁度いいんだ」


「皇女との婚姻は一気に皇帝の身内入り…じゃないのか?」


「陛下には御子息がいらっしゃる。私が娘を(めと)ろうとも立場は大きく動くことはない。ラーナが逆に貴族に格下げされる」


そういうものなのかとアキトは皇帝の権威と皇太子の存在の大きさを実感させられる。

ケインズは続けて暗殺についてアキトに色々確認してくる。


「ラーナが狙われたのは…本当なのか?」


「状況証拠から判断した。第二皇女がわざわざ帝都から離れた都市を視察、そこを急襲されて護衛の騎士を損失…冒険者が偶然居合わせなかったら…」


「ッく、卑劣な…!」


視察を提案した卿に心当たりはないかと尋ねるがケインズは首を横に振る。


「皇太子がいる上で第二皇女の権威等無いに等しい…それなのに暗殺を(くわだ)てる…私怨(しえん)の線で探るべきだ」


若干感情的になり額に汗を浮かばせるケインズ、その汗をレインがさっと拭いて平静をと領内の民を不安にさせないようにと伝えケインズも理解していると深呼吸する。


「ラーナとは知己でね、まだ両親が健在の時に城でよく遊んだ仲なんだ」


ケインズは落ち着かせるように身の上を語る。


「父も母も温和で民に好かれていたが数ヶ月前領内で職務中に賊とも言えない暴漢に襲われてポックリさ…そして残された私は使用人が離散する中で必死に政治を学びなんとか家督を維持した」


グッと拳を握りケインズは悔しそうに歯を食いしばる。

他人の苦労話には弱いアキトは優しい顔をして出来うる限りの協力を申し出る。


「そうだなアキト、私兵としての最初の任務を出す。レイズ卿の領内の冒険者組合の仕事を受けて達成してきてくれ」


「組合の?何故?」


丁度調べたかった相手であったがケインズの意図も知りたくて聞き返す。


「私はレイズ卿に嫌われているからね。もしも今回の賊の手引が彼のものなら何か情報が残っているかもしれない…些細(ささい)なものでもいい無くてもいい」


アキトは力強く頷き承諾する。するとメイドのレインがアキトの顔色を窺うようにチラッと見てくる。

ケインズは屋敷にはまだ使用人がいるからとレインを連れて行く事を進言する。


「彼女を連れて行くといい。密偵としての技量は確かだ」


「ハハッ暗殺もお手の物そうだ…」


アキトは軽口でいつも背中に感じていた殺気について笑って言うとレインに真正面から殺気を向けられ即座に謝るのであった。


ーーーーー


屋敷に一日止まってからレイズ卿の領地へと(おもむ)く事にし、翌朝。

ケインズと複数の使用人に見送られアキトとレインはケインズの屋敷を出発する。

馬車を使うかとレインは気を使ってくるがアキトは盗賊団のその後も気になると徒歩で砦跡を経由して行こうと提案する。苦い顔をされるがアキトは偵察の仕事の内と押し通してまずは山を目指すことにする。


元々人が一時的に生活できる環境に整えられた砦等の跡地には浮浪者が住み着いたりするので取り壊すか定期的に人を出入りさせるべきなのだが領地が跨っているため管理が煩雑(はんざつ)になりがちであったようだ。

アキト達が再び訪れると残党が戻って来て何かを漁っていたようだが誰か来たと感じ取るやいなや脱兎の如く逃げ出してしまった。


「やれやれ、捕まえたら何か聴けたかもな…いや、下っ端には情報なんてないか…」


「捕まえますか?」


レインは今にも走り出しそうな姿勢を取るがアキトは骨折り損だと伝えて既に目ぼしい情報は抜き取られているなと判断する。


「あの後調査団は何か?」


「いえ、解散はしたという報告だけ。しかし残党が寄り付くようなら再結成も近いかと…」


「まぁ大将が居なきゃただの小物の荒くれ者達だがな」


ガルドは面倒くさかったとアキトは思い出して疲れがぶり返したのか肩を落とす。

ふと、ずっと考えていた事を尋ねる。


「ガルドを捕縛した後何者かに暗殺されたんだが君の腕なら可能か?」


「暗殺…?いえ、よく分からない話ですね」


はぐらかされたのか本当に知らないのか判別出来ない程に感情の無い返答にアキトは頭を掻いて「そうか」と(ほう)けた返事をする。


「毒殺だから毒の判別が出来たら楽だったんだがそんな科学技術無さそうだしな」


アキトはコートの裏にしまっている暗殺に使われた針をチラッと見てまた肩を落とす。


「投擲術は?」


「私の専門は棒術と槍術です」


腰のベルトに差している如意棒を抜いて振って伸ばす。

面白い武器にアキトは関心を寄せてふむふむと頷く。


「いいなそれ。初手の奇襲力、武器のリーチ…硬度だけが問題か?」


「特注品の鋼鉄製です。刃とかち合っても簡単には折れません」


礼儀のような「触らせて」「嫌だ」のやり取りをしてアキトは面白い武器に自分もそういう珍兵器の武器庫目指そうかなとニヤニヤしてレインから気味悪がられる。

砦跡にはもう用事は無さそうだと一通り見渡した後日も暮れると一夜泊まることにする。


「野宿ですか…」


レインは嫌そうな顔をするが夜の登山下山は危険とアキトに言われて仕方なさそうに焚き火の準備を行う。


「元々ここに寄る等とアキトさまが言わなければ…」


愚痴をめいいっぱい言われてアキトは何度も謝る事になるがこれも旅の醍醐味(だいごみ)とヘラヘラ語る。

寝床は分けるようにと距離を完全に置かれているが警戒心の強い相棒は安心出来ると久々に睡眠をしっかり取れる予感にアキトはウキウキなのであった。


翌朝、交代で見張りをしたおかげで休みの時間はしっかり取れたアキトが大きく伸びをして藁葺(わらぶ)きの寝床から起床する。

レインはクラシックなメイド服の埃を払って早く出発しようと寝起きのアキトに水桶を差しだす。

顔を洗い終えてアキトは道具袋から乾燥ベリーとひとつまみの塩を差し出し二人で口に含み空腹感を多少減らす。


「いつもこんな旅とは感じなのですか?」


「宿取れたらここまでひもじくはない」


「これからは必ず宿取りましょう」


流石に貴族仕えのメイドには野宿はまだ早いとアキトも頷いてレイズ卿の領地へ足を踏み入れる。

山の丘から見える街並みにそれなりの発展が(うかが)えて昼食はうんと食べようと二人は提案し合うのであった。


山を降りる道中に獣型のモンスターを数匹相手にして人通りが少ないんだなと実感しつつ街へ踏み入れる。

先に組合に顔を出そうかとアキトは提案するがレインは空腹で息を切らしているのを見てまずは宿と腹ごしらえと宿場街へ向かう。

空腹そうな黒コートの男にメイドという組み合わせに宿の主人に訝しがられながらも予約と食事にありつけてレインは沢山の注文をしてガツガツ食べ始める。

その量や凄まじくアキトが注文したおおよそ三倍でそれでもぺろりと平らげてしまう。


「お前…結構食うんだな」


口を丁寧に拭きながら恥ずかしそうに顔を赤らめて「空腹でしたので」とレインは言い訳をしつつアキトのまだ手を付けていない皿をジッと見つめてくる。


「食うか?」


仕方なさそうにアキトは差し出すとレインは素早くまたぺろりと食べてしまう。

コイツの胃袋はどうなっているんだと不思議そうにアキトは見つめる。

この後の仕事についてどうするか話し合うつもりだったが眠そうにするレインを見てアキトは一人で組合に向かう事にする。


「俺が組合見てくるから荷物番で休んでろ…洗濯とかしてていいぞ」


石鹸を手渡すとレインは更に顔を赤らめてペコペコとするのであった。

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