1話 出席番号1番、相澤結衣
「おはようございます。朝の準備をして、着席しましょう。
おはようございます・・」
そんな音が耳を通り抜けてることを実感しながら、結衣は席に座る。
四月十日、今日は水曜日。
鬱憤とした気分が通り抜けていくかのように窓から風が通る。
その時、目の前にふっと誰かが現れる。
「相澤さん、おはよぅ」
語尾に向かうにつれて声が小さくへたれていく。
「おはよう、矢沼さん。
てか、結衣でいいよ」
「あ、えっと、うん。ゆ、・・・」
そこで口ごもる彼女から目を逸らす。
結衣は町田小学校だった。
本来町田小学校はここ、大町中学校ではなく、
蓬田山中学校が学区外なのだが、
私はあいにく大町中学校の方が家から近かったので、
中学校はここになってしまった。
町田小学校から大町中学校に行く人は五人程度。
正直、今までの交友関係が水に返されたと同義なので、
入学式ではとても焦った。
他の皆が同じ小学校の人と少しながらも
「緊張するねえ」だとか「先生厳しそう・・・」
とか話す中、見事に同小の人とクラスが分かれた私は
話す人がいないことに焦った。
その為入学式の翌日、私は【彼女】に話しかけたのだ。
彼女は学区外の・・・
私も名前が聞いたことのないような小学校から来たようで、
それに仲間意識を抱き、ほっとした。
そして休み時間等は彼女と過ごした。
なにか性格的な不満が凄くあるわけでもない。
彼女は気弱で、なんなら優しい方だと思う。
それに、身だしなみだって、多少アホ毛はあって、
マトメージュ使えばいいのにと思うことはあるけれど、
だからといってそんな不快なほどではない。
だけど・・・
目を逸らした先の【あの子】を私は見つめた。
私の二つ後ろの彼女は、
宇野春香と言う。
三つ編みにした二つ結びに、今時のシースルー前髪と、
三つ編みのイメージに似合わず活発な性格で。
左田野小学校だったそうなので、友達も多い。
本当は・・・
「あの子と友達になりたい」
ボソッと口からこぼれ出そうになった言葉。
それが自分の本音だったことはよく分かっていた。
「矢沼さん、ごめんね、ちょっと用事があって」
そう言って席をたつ。
話しかけたい。まだ中学校始まって二日だ。
きっと大丈夫なはず・・・
どくどくと鳴り続ける胸を抑え、
私はあの子の友達があの子の席から離れていくのを見て、
あの子の肩を叩いた。
予鈴が、鳴った。
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学級日誌 1日目 四月十日(水)
1年3組 担当教諭:山田葵
日直、学級日誌担当者 :相澤 結衣
欠席者:神谷菜穂 遅刻者:いない
1時間目:総合
2時間目:総合
3時間目:総合
4時間目:総合
授業態度:
皆真面目に受けていました。
先生の言うことをきちんと聞けてました。
感想:
皆ちゃんとしてていいとおもいます
先生からのコメント:
中学校で初めての日直お疲れ様でした。
これからも頑張ってください。




