ep53 自問他答
腕が細切れになり、激痛と不快感が脳を焼く中で、俺は思った。
(……なんで、こんなことをしているんだ?)
苦しい、痛い、泣きたい、逃げ出したい。
俺は、ただの高校生なのに。
少し戦えるだけの、高校生なのに。
なのになんでこんな場所で、戦ってるんだ?
殺すとか殺さないとか、何なんだよ。
誰も殺したくないし、殺されたくもない。
でもやらなきゃいけなくて……もう頭の中がぐちゃぐちゃだ。
前までの俺は、こんなんじゃなかったのに。
(……)
そうだ。
そもそもどうして俺は、彼らを殺せないのだろう。俺の命を、みんなの命を狙う敵を殺したくないと感じるのだろうか。
同じ異世界人だとしても『亜獣の国』のゴブリンやオークたちは殺した。
三十六階層でも、エンジェル・ナイトたちの命を奪おうと考えたことも、特に忌避感はなかった。もしもう一度『亜獣の国』のモンスターと戦うことになっても、俺は彼らを殺せるだろう。
なのに『決戦騎士団』は殺せない。
違いと言えば、人かモンスターかということ。
俺は探索者として、これまでモンスターは何百体何千体と殺してきた。
(モンスターは殺し慣れてたけど、人は違うから? だから俺は殺せないのか?)
それもある。
けれどそれだけでここまで殺せないと感じるものなのだろうか。
それに、ここ数時間でより顕著に感じる自分の中の変化……これもいったい何なんだ?
最初に自覚したのは、夜叉の森ダンジョンでテスタロッサたちと戦った後ぐらい。だけど今思えば三船ダンジョンで『亜獣の国』と戦った後あたりから前兆はあった。
その頃から、俺の精神性が明確に変質し始めている。
他人をどこか見下して、傲岸不遜な思考を無意識のように働かせている。
いいや……より正確には人間のことを『守らないといけない庇護対象』として認識し始めている。
まるで、自分は人間ではないと言わんばかりに。
(……)
そうだ。
俺は人間を同じ種族として見れなくなってきているんだ。
これが、先ほどから聞こえてくる『声』の主の影響なのか、それとも俺が他の人とあまりにもかけ離れた力を持ったが故に、調子に乗った結果なのかは分からない。
しかし、俺が人間を同じ種族として見れていないのは確かだ。
特に、人外染みた力を人外たちとぶつけ合った、あの日以降は……。
(あぁ……そうか。だから俺は殺せないのか)
俺は怖いんだ。
目の前の彼らを――人間である彼らを殺してしまうことで、自分の中のタガが外れてしまうのではないかと。
敵を排除するのに一度でも『殺人』という手段を使えばどうなるか。
答えは簡単、経験して慣れる。
次も、その次も、俺は殺人で解決するようになるかもしれない。異世界人である彼らを殺し、敵を殺し、やがてその矛先は異世界関係なく、相馬創の敵というだけで殺害の対象になるかもしれない。
例えば、以前俺やおじい様たちを中傷した記者がいたが、彼女がもう一度同じことをすれば俺は歯止めが利かなくなるだろう。怒りのままに、苛立ちのままに、俺は魔法を振う。
当然、全ては推測に過ぎない。
だが殺人行為が問題解決の選択肢として現れるようになることは確かだ。
そして、今の俺が殺人を選ぶようになる可能性は……充分にある。
何しろ俺は今、人間を同類として見ていない。
鬱陶しい羽虫を叩き潰すように、邪魔な奴を殺して片付ける。
殺して、殺して、駆除して……あらゆる問題を殺人で解決し続けた先に待つ世界は、いったいどれほど歪んでいるだろう。
だから俺は縋るように、間違えないように、人類を守ることを至上命題として掲げるようになった。相馬創が生まれながらに持っていた本能……誰かを守りたいという感情を、失わないために。
(それに……)
自分が変わることを恐れるだけじゃなく、もっと単純に――俺は彼らを殺したくないと、同情してしまっている節もある。
ギュスターヴやルナリア、テスタロッサから異世界の事情を聞いた。魔王という巨悪が存在し、拒否すれば命がない中で侵略しに来ていること。みんな自分にできることをして、自分の大切な人たちを守るために戦っていること。
俺はただの高校生で、甘っちょろくて流されやすくて情けない子供だから……同情してしまう。大人のサドラたちとは異なり、割り切れない。
だから殺したくないし、殺せない。
でも、殺さないと勝てないのが現状で――。
『変ワッテヤロウカ?』
また、声が聞こえた。
相も変わらず正体は分からないけれど、頷いたら変わってくれることだけは直感した。この苦悩から解放してくれると。
――けれど。
(これは、誰かに押し付けていいことじゃない)
声の主が何者かは分からない。全ての元凶なのかもしれない。
だけど……『俺は殺したくないから、貴方が代わりに殺してください』なんて……そんな情けないことを頼めるほど、俺は落ちぶれていない。
押し付けた時点で、それこそ相馬創が相馬創で居られなくなる。
『ナラバ、ドウスル?』
どうする、か。
結局のところ、殺せないなら答えなんて一つしかないんだ。
(……死ぬ気で生け捕りにする)
『殺せない』という逃避ではなく『殺さない』選択。
全員を生け捕りにして、俺も生き残る。
それが、人を『殺せない』俺が選べる『殺さない』選択肢。
どれだけ苦しくても、辛くても、逃げ出したくても理想は手放せない、我儘な俺の自己満足な現実だ。
すると――不意に、声が笑った気がした。
『気ニ入ラナイ。ダガ、オ前ハソレデイイ』
(……え?)
『愚カナ英雄ニ、手ヲ貸ソウ』
何を……と思った瞬間。
「……ぁ?」
突然頭の中がクリアになった。
殺すとか殺せないとか、彼らに対する恐怖とか逃げ腰になっていた感情だとか、これまでの事とかこれからの事とか、様々な事がどうでもよくなる。
ただただ純粋に――死ぬ気で彼らを生け捕りにするためだけに思考が巡り始めた。やることは何も変わっていないのに、モチベーションが段違いに向上する。
(……というか、もしかしなくてもさっきまでの思考の渦は、サドラが仕掛けた策の一つか?)
気付いてしまえば単純だった。
サドラは俺に死生観を問うた。
人を殺したことのない人間にとって、最も作用するブレーキを引いたのだ。
フィカティリアを使って俺に人を害する意識を植え付け、かと思えば彼女の絶叫を使って罪悪感に変換する。肉体的ではなく精神的に、俺の攻撃を封じた。
昔の俺ならとっくに答えを出せて……いいや、より正確には思考を放棄して、目の前のことに集中するという選択を即座に取れていたはずだ。それをサドラは意図的に問答を行うことで、思考の渦から抜け出せないように足を掴んでいた。
(あぁ……本当に面倒な相手だよ)
けど、もう結論は出た。
俺は『殺せない』のではなく『殺さない』事を選ぶ。
当然難しいだろう。
決戦騎士団は強い。
生け捕りなど、不可能に近い。
(だけど、それがどうした)
『亜獣の国』と戦って勝ったことに比べれば、まだ勝機は高い。
それに、俺はこいつらよりもっと強い女と戦ったじゃないか。
褐色の肌に銀髪、凶暴な笑みを浮かべる軍帽の女――『剣聖』テスタロッサ・フィリア。
実力差は問題ではない。
問題だったのは、俺の心の持ちようだけだ。
だから――。
『英雄ニナレ』
その声に、俺は笑みを浮かべて応える。
(分かった)
結局お前の正体は分からないけど……今はいい。
そんな思考、今はどうでもいい。
長い自問他答は、実際には十秒ほどの出来事だった。
地面に倒れる俺を見て、サドラたちは警戒を解かずに遠巻きから魔法を放つ準備をしている。
俺は一度大きく息を吐くと、身体を起こしながら細切れにされた右腕に氷の義手を生成。全身を覆うように氷の鎧を纏うと、躊躇なくサドラたちへと突っ込んだ。
「……ッ、まだ動くかッ!」
「そろそろくたばるッス!」
クァンの人体切断魔法を回避しながら踏み込み、『No1.アルファ』でサドラを殴りつける。
彼は盾でガードして僅かに後ずさる……が、これは罠。
俺に『押し切れる』と思わせ、隙を誘うのが狙いだ。
故に、引っかかった素振りを見せ、静かに近づいてきていたフィカティリアの攻撃を誘う。予想通りに切り込んできた剣先を氷の義手でガードすると、今度はサドラがカウンターを仕掛けてきた。
見惚れるほどの連携により、繰り広げられるのは超近接戦。
だがそのおかげでクァンの切断魔法が飛んでこなくなった。
(これで二対一)
二人の攻撃は苛烈だが、それでもテスタロッサには遠く及ばない。
だから今度は、俺が駆け引きを仕掛けた。
剣戟の最中、わざと二人に押される演技を行ったのだ。
所詮素人の動き。サドラやフィカティリアは引っかからない。
だが――彼らの後方で戦闘を眺めていたヤトラは違う。
二人が邪魔で視認性が悪いことに加え、距離のある状況。
彼女からすれば、まさに絶好の機会に見えただろう。
(――今)
俺の誘い通りにヤトラが『ドミネーション』を放とうとした直前、彼女の足元に『フレア・バースト』を放つ。完全に虚を突いた一撃は、ヤトラの軽い身体を吹き飛ばした。
「こいつ――ッ!」
「まだ、折れない!?」
サドラとフィカティリアの表情に、初めて焦りが浮かぶ。
二人が連携攻撃を放つ間に、俺は次の手を考えようとして――それより早く眼前の二人が大きく距離を取った。ヤトラの下へ向かう気か……なんて思考は抱かない。決戦騎士団は互いのことをよく信頼している。
なら、彼らが選ぶは仲間の援護ではなく……仲間が援護しやすくなる環境づくり。
視界の隅で、クァンが指輪に触れているのが見えた。
俺は『アイススピア』を左手に生成してクァンへ投擲しつつ、サドラとフィカティリアへ向けて踏み込む。人体切断魔法がワンテンポ遅れて発動するが、既にそこに俺の姿はない。
「――っ!」
完全に油断していたフィカティリアの顔面目掛けて、アルファを振う。しかし彼女の顔に届く寸前で、サドラが庇うように間に入った。彼は盾を使ってガードするが、衝撃を殺しきることは出来ずに、大きく吹き飛ぶ。
「副団長!」
「いいから消えろ!」
「……っ」
サドラの言葉を受け、フィカティリアの身体が霧になる。
追撃に殴りつけた右腕が空を切った。
(やはり一番面倒なのはサドラか)
戦闘能力、思考力、思考誘導すべてが一級品。
しかしクァンの人体切断魔法も危険だ。
常に視界の隅で捉え続けなければならない。
ふと彼女へ意識を向けると……先ほどまで触れていた指輪が砕けて砂となっているのに気が付いた。
「……あ?」
(今のどこかで……)
見覚えがあるその光景は……そうだ。
西木先輩が見せてくれた現象と同じだ。
ほんの数時間前、夏祭りで西木先輩に見せてもらった魔石を自由自在に操る魔法のような何か。しばらく宙を浮遊していた魔石は、彼女の手元に戻った途端に砕けて今の様に砂になった。
(まさか……同じ原理なのか?)
クァンは即座に別の指輪に触れて人体切断魔法を行使する。
しかも今度は『ライトニングスラッシュ』の雨というおまけつきだ。
誇張抜きで俺が今まで見たどんな魔法使いよりも、魔法の扱いに長けている。
ロシアのSランク探索者、ルキーチ・カラシニコフですらこんな芸当は不可能だろう。当然俺にも不可能。魔力量、魔力操作技術、空間認識能力に至るまで……まさしく最強の魔法使いだ。
(それがどうした)
俺は勝つ。
全員生け捕りにして、俺の望む結果を手に入れる。
そのために、ただ全力を尽くす――。
サドラが戦線に復帰し、フィカティリアが奇襲を仕掛けてくる。
逃げ道は魔法で塞がれ、しかしそれでも『ドミネーション』が消えたのなら捌き切れる。多彩な剣戟を魔速型の最高速で、集中力が続く限り迎撃する。
もちろんそれだけでなく、返す剣でサドラたちにダメージを与えていく。
先ほどのアルファの殴打が効いているのか、攻撃が当たる。
俺の怪我も増えるが、サドラたちも血を流す。
彼らの表情からは余裕が消え、真剣な瞳が俺を穿つ。
(――行ける、このまま押し切れるッ!)
サドラが俺の腹を突き刺そうと剣を立てる。
俺は怯むことなく突っ込み、腹部に精製した氷の鎧で剣先を滑らせながら距離を詰め――。
「ッ、貴様ァ!」
「取りあえず腕は貰うぞッ!!」
俺は右手の氷を槍の形に変化させ、サドラの右肩を貫いた。
こいつの剣術は最も厄介だ。
これを封じられただけでも、彼らの攻撃力はガクッと落ちる。
「ぐぅううううっ!」
苦悶の表情を浮かべるサドラ。
俺は更に深く氷を押し込もうとして――刹那、俺とサドラを囲むように人体切断魔法の魔法陣が出現した。しかし、これは明らかに飛び退かせるための陽動。俺は無視してサドラの傷口を広げる。
「なんでっ!?」
クァンの声が聞こえると同時、背後から霧が近付いてきた。
「副団長から離れろ――!」
迫るフィカティリアに、俺は肩から槍を抜いて回避行動に移った。
決め切れなかったが、確実に削った。
俺も怪我は負っているが、彼らも着実に疲弊している。
(このまま一気に――)
と駆け出した途端、魔法が唱えられた。
それは、先ほどの爆発で意識を失っていたはずのヤトラの声。
彼女はボロボロの姿で立ちあがると、魔法を行使した。
「『ハイエスト・ヒーリング』」
光属性上級魔法『ハイエスト・ヒーリング』。
世界中でも限られた者しか使えない回復魔法だ。
実際、俺の恩人である友部さんは使えない。彼女が使うのは光属性中級魔法『ヒーリング』というゆっくり回復させていく魔法だ。
対して、ヤトラが使ったのは一瞬にして傷を回復させてしまう上級魔法。
サドラの右肩に空いていた穴が、あっという間に再生される。
「ヤトラ、無事だったか?」
「は、はい! 少し意識を失ってましたけど……」
そんな言葉を交わし、努力が水の泡になっていく様を見せつけられる。
が、別に絶望するほどの事ではない。
それ以上に、充分な結果を今の戦闘で得ていたからだ。
それは、相手の耐久力。
殺さない程度の力加減だ。
「流石はこの世界の最強……しかし、この程度はどうにもならない。これ以上苦しめるのも本望ではないし、抵抗しないのではあれば痛みなく葬ってやるが、どうする?」
サドラの言葉に、俺は笑いながら答えた。
「ははっ、冗談だろ? 俺はお前たちを生け捕りにして、みんなを守ってハッピーエンドを目指すことにした。それ以外の選択肢はあり得ない。むしろお前たちこそ、身の安全を保障してやるから大人しく投降したらどうだ?」
「……何を馬鹿な。覚悟も決まっていない子供に負ける道理はないな」
「覚悟なら決めたさ……お前らを殺さない覚悟をな! もう殺すとか殺せないとかどうでもいい! 俺はお前たちを生け捕りにする!」
その言葉に、サドラは呆れたようにため息をついた。
「はぁ……決心もつかぬ上についには思考放棄か。ここまで愚かだったとはな」
「むしろ逆だろ。思考放棄してたのはさっきまでの俺だ」
ごちゃごちゃと思考の渦に囚われていた間、俺は戦闘に集中できていなかった。
戦闘中に戦いのことを考えていないのであれば、それは思考放棄と同義。
対する今は、ノイズのような思考が消えて、目の前の決戦騎士だけを考えられている。
そして、サドラは以上のことを全て理解したうえで、今煽ったのだ。
その証拠に、彼の視線が鋭くなる。
「……この変化は一体……自己解決? いや、最悪の神の干渉か……?」
ぼそぼそと呟いたサドラは、俺を嘲るように笑みを浮かべて続ける。
「だがいいのか? 生け捕りなんて時間のかかることをしていれば、三十六階層に残してきたお仲間が全滅してしまうぞ?」
「俺はあの人たちを信頼している。格上のモンスターに囲まれようと、そうそう後れを取ることはないさ」
「その割には転移する前、随分と調子の良いことを言っていたような気がしたがなぁ」
思い出されるのは他の探索者に対する挑発と、我が愛しの猫ちゃんに告げてしまった言葉。他の探索者にする煽りは、逃げ腰にならないようにと考えての挑発だったが、猫ちゃんに対するアレは完全に失言だ。
「はぁ……そうなんだよ。よく分からないけど、あの時は一番人間を見下してたから……ちゃんと謝らないといけないんだよなぁ。嫌われたくないし」
「心配するな。まとめてあの世に送ってやる。そして……貴様がそれに抗うというのなら、容赦はしない。精々英雄的な死をくれてやろう」
その言葉と同時に、俺たちは駆け出して戦闘が再開された。サドラの剣が、フィカティリアの短剣が、クァンの魔法が、ヤトラの洗脳魔法が襲い来る。
(問題ない! まだまだやれる! 目的を達成するために思考を回せ! 身体を動かして、相手の行動を読み切って、生け捕りにするための思考を途切れさせるなッ!!)
迎撃しながら息を吐き、不意に俺は……この階層に辿り着いてすぐに投げ捨てたリュックを、視界の端に捉えた。その中に入っているのは、俺とおじい様の絆の力。
俺は『アイスエイジ』を周囲に展開させて気温を下げると『フレア・バースト』で霧を生み出す。
それと同時にフェイントを織り交ぜながらリュックへと大きく跳躍し、『アイスエイジ』で自らを囲むように氷の壁を形成すると、リュックから魔質増強剤を取り出した。
直後、クァンが風魔法で霧を払い、俺の姿を見つけたサドラが慌てた様子で駆け寄ってくる。
「――させるかッ! クァン!」
「分かってるッス!」
阿吽の呼吸で答えたクァンは切断魔法を行使。
氷の壁に四角い穴を開ける。
(マジかよッ!?)
俺は慌てて一本目の注射を腹部に打ち、二本目を――と思ったところにサドラが到着し、穴から内部に侵入してきた。俺は急いで注射して何とか二本目も打ち終え、迎撃のため氷の剣を生み出すと同時……ドクンッと心臓が跳ねて、全身から魔力が漲ってきた。
「チッ、遅かったか!」
「むしろ早いんだよ! お注射の時間ぐらいゆっくりさせろ!」
魔速型に切り替え、身体強化を施しながらサドラを殴り飛ばす。
同時に『アイスエイジ』の壁を消すことで、距離を取ることに成功。
サドラは空中で身体を捻って着地すると、小さく息を吐きながら愚痴った。
「パワーが上がっただと? くそっ、死にぞこないが……引導を渡してやるッ!」
「やれるもんならやってみろッ! お前ら全員捕まえて、狸原さんと一緒に異世界のこと吐かせてやるから覚悟しとけよ!? ふはっ、ふはははははっ!!」
強気に煽ると、ぬるっとしたのが鼻から垂れてきた。
拭ってみると、前回使用した時と同じく、鼻血が流れている。
(……)
まぁいい。
内臓が壊れようが、頭が壊れようが、もうほとんど変わらない。
死にぞこないとサドラは言ったが、間違いないだろう。
だが、それすらもどうでもいい。
(死んでも俺は、俺のしたいことをするだけだ)




