猫の夢
水槽脳夢世界
アンネローゼ・アイルホルンの幻想物語
猫の夢
仕組まれた恩人かもしれませんが?
私が実父と継母から離れられたきっかけは、彼らが逮捕された事だ。
「虐待」で。
通報したのは、他でもない。
私は彼女とは、あれが最初で最後の対面だ。
アンゲリカ・アイルホルン。
私の、実母だ。
実父と継母は、勾留所で自殺したらしい。
きっと、実母に「実験」をけなされ、「研究」を否定されたからだろう。
兄と姉は、実母に相当酷い事をされたらしい。
詳しい事は分からない。
しかしまさに、劇的な対面であった。
両親は「狂人になろうとしている、凡人」だった。
「サイコパス」に憧れている、ティーンエイジャー。
もう、いい歳こいた、中年の大人であるところがまた、恥ずかしい。
分かりやすく倫理から逸脱した行動をとり、
それを「常人とは異なる、天才の言動」と、自己満足に浸る。
そしてそれを、「天才の研究」と、また自己肯定感の材料にするのだ。
今思うと、二人は「アンゲリカ・アイルホルン」になろうとしていたのかもしれない。
何度も言うが、私は母が姉・兄に何をしたのかは、知らない。
しかし、姉の怒り具合、叔父・叔母夫婦の憎悪具合、
そしてそれとは「y=a/x」である兄の「マザー・コンプレックス」を見て、
異常性には薄々知っていた。
勿論、本人と対面したのは、ほんの十数分であるので、赤の他人も同然である。
実の娘とは言え、そんな「赤の他人」の人格を勝手に決め付けるべきではない。
その事は、十二分に承知している。
しかし、良く言えば「煽り上手」であった。
あの人達の自殺を聞かされた時、私はゾッとした。
きっとアンゲリカは、この事を狙っていたのだ。
確証は無いが、そう思わせる。
でも、具体的に、何が?
アンゲリカの、不敵な笑い?
アンゲリカの、あえてと思わせる程の、過剰で異様な挑発?
アンゲリカの、超越的に最良の、ギリギリのタイミング?
少なくとも、アンゲリカは私と、このミアの恩人だ。
それだけは、揺るぎない真実だ。
アンゲリカがあの時来なければ、私はきっと…
「・・・ヴっ。」
―――――――――――――――
両親の「サイコ風」ムーブが発動する事を見通して、私はミアを隠して世話をしていた。
決して、家にも上げなかった。
何故、バレたのか。
私が、浅はかだったのだろうか。
いつもの場所に、ミアが居なかった。
そして、両親が私を「地下室」に呼び出した。
もう、その時に覚悟をした。
逆らえないよう、躾けられていたから。
きっと、アンゲリカが居ないと、やっぱりあのまま…
「っ。」
―――――――――――――――
だけど、正直。
アンゲリカに借りを作ったように思えてしまう。
何か、決定的な弱みを握られているような…
きっと、両親がなりたがっていた「マッドサイエンティスト」は、アンゲリカなのだろう。
アンゲリカの真似をして、
「猫が教材」
「女児に高校相当な『授業』をさせる」
と言った、馬鹿げた事をしたのだろう。
何より、それなら牛蛙等の爬虫類が定番だろうに。
ミアは、もう「おねえさま」だ。
既に出会ってから、6年程は経過している。
「ミアのせいで、また両親を思い出して悪夢を見るんじゃないか」
とか、素敵な忠言をして下さる方もいるが、
ミアは私がこうして眠れない時はいつも必ず膝に乗ってくれる。
何なら、心配してトイレにもついて来てくれるくらいだ。
頓珍漢で的外れな進言をして下さる、聡明な方々より、温かく寄り添ってくれる。
でも明日からは、ミアはビアンカさんに預かってもらう。
少女が、来ることになっているからだ。
「猫じゃなくて、女の子の方を預かりますよぉ?」
と言ってくれたが、ビアンカさんには言っていないのだ。
「私と、かのキャサリン・ムーアは知り合いである。」
と…(何なら、アンナにも言ってなかったかも…)
言うタイミングを逃してしまって、かなりの年月が経っている。
それに、キャサリンさんからも、「あまり広めないでくれ」と言われている。
キャサリンさんはきっと、あの少女を訪ねて頻繁に、私の家に足を運ぶだろう。
しかし、怖いのはバレた時だ。
ビアンカさんは、キャサリンさんの大ファンなのだ。
それこそ、どんな副詞を付ければ良いか、迷う程に。
(恐らく、この世にはそんな「Big love」を表すに相応しい言葉は無いのだろうが。)
ミアが居なくて、アニマルセラピーが無くなってしまう。
不安で、しょうがない。
そんな不安を知ってか知らずか、ミアは私の膝の上で寝始めてしまった。
もはや、私の分も寝ている勢いだ。
猫は、一日の内の半分以上を寝て過ごすらしい。
だが、猫は夜行性なのではなかったのか…?
「・・・ミア、やっぱり、睡眠薬って」
「ヴにゃ゛。」




