旅の仲間 託されたもの 5
ハイエルフがアズマの連中と仲が悪いのは有名だけど、アマツカミとかよく分からないし、どんな過去があって確執があるのかまるで分からない。
神話レベルの話しで俺にどうこうできる事でもないだろう。
ただ、永遠の初芽が、アマツカミにも何らかの影響を与えかねない存在だと言う事はなんとなくわかった。
その程度の認識だというのに、タイアス殿が俺の肩を両手で掴む。
「だが、君なら或いは、と思うのだよ」
「えええ?!俺なんかに何が出来るって言うんですか!!?」
思わず叫んでしまった。
「分からんが、君ならと思わせる何かがあるとだけ言おう」
「そんな曖昧な根拠で無茶な事を頼まないでください」
俺がタイアス殿の手を肩から払い落とす。考えてみればこれは相当無礼な振る舞いだったが、これ以上の重圧を背負わせないで欲しい。だが、タイアス殿は再び肩に手を置く。
「ヒシムの言うとおり、若い者たちにとって、我らの確執など関係もない事なのだ。だが、その確執のせいで、若い者たちの夢を妨害している事に、私は忸怩たる思いをしている・・・・・・。だが、我々では解決の方法が見い出せずにいる。恥を忍んで頼む。君にアズマと我々の架け橋となって欲しい!!」
周囲を見ると、いつの間にか他のハイエルフたちが事の成り行きを見守っている。彼らの目が真剣だ。彼らは本気でアマツカミとの和解を望んでいるようだ。それも気の遠くなるほど昔から。
「ふう・・・・・・」
俺はため息をついた。
「分かりました。これは冒険者への指名依頼ですね。無茶苦茶な依頼はもうすでに受けています。1つが2つになるような物です」
俺もどうかしてしまったかな?只の自暴自棄とも言えるが、竜騎士探索行をしていれば、どうせアズマには行く事になるんだ。出来る限り足掻いてみよう。
俺がそう答えると周囲のハイエルフたちの表情が明るくなる。
「承知した。では、正式に冒険者ギルドに依頼を出しておこう」
「ええ?いまのは物の例えみたいなものですから、そんな事しないでください。『森の友人』なんだから、友の為に尽力しますよ」
慌ててタイアス殿の申し出を断ったが、タイアス殿は首を横に振る。
「そうはいかん。こういう事には形式が大切だ。その形式は君のみならず、多くの人にとって重要な事になってくる。冒険者ギルドへの依頼は出させてもらう」
やれやれ。これでまた大騒動になる。
俺は空を見上げた。




