旅の仲間 託されたもの 3
俺は塔の中に移動する。
行ってみると1階部分の様子が様変わりしていた。
天井から清潔な布がつり下げられて間仕切りがされている。間仕切りされた一つ一つのスペースに簡素だが、しっかりした作りのベッドが用意されていて、そのベッド一つ一つに2人のハイエルフが付いていて、救出された人達の世話をしている。
ベッドの横には小さなテーブルが置かれ、そのテーブルには植木鉢が置かれており、小さな花を咲かせていた。
また、1階の奥で、数人が心地良い音楽を、囁く様な小さな音で演奏していた。
間仕切りの隙間から中の様子を窺わせてもらったが、寝かせられている人の表情は穏やかで安らかだ。
俺は思わず頬を緩ませた。
「カシムさん?」
振り向くと、人々を見舞っていたリラさんがいた。
「あ、リ、リラさん」
さっきのミルのキス事件を思い出して、思わず声に詰まってしまった。リラさんに軽蔑されていなければ良いが・・・・・・。
よこしまな事を考えたのがバレたようで、リラさんがジ~~~ッと横目で俺を見る。
「あの、あれは事故です。不可抗力ですよ。それにミルはまだまだ子どもだから、まあ、イヌになめられたようなものです」
俺がしどろもどろに言い訳する。
「カシムさん!小さくても女の子なんですよ!イヌと同列にするのはあんまりだと思います!」
ああ。やっぱり怒ってる。確かに俺の言いようもひどかった。
「う。反省します・・・・・・」
俺が肩を落としてしょげていると、リラさんが吹き出す。
「うふふふ。もう、カシムさんってば」
おお?!何だ、この可愛らしいイベントは?
「大丈夫ですよ!分かってますから。・・・・・・ちょっとからかって意地悪したくなっちゃっただけなんです。ごめんなさい」
リラさんにそんな可愛くされたら、男は何されたって許しちゃうと思うなぁ。ずるいなぁ・・・・・・。
俺がふてくされていると、リラさんが小首をかしげる。
「でも、カシムさんにとって13歳が子どもって言う事は、どこからが大人なんですか?」
エレスでは一般的に15歳が成人年齢だ。
「そりゃあ、15歳・・・・・・」
アクシスの顔が思い浮かぶ。
「いや!やっぱり俺と同じ16歳以上かな?」
するとリラさんが笑顔になる。
「カシムさんは16歳なんですね。私の方がお姉さんになるんですね?」
あれ?コレって、年齢を尋ねなきゃいけない話しの流れだ。でも、女性に年齢を尋ねるのって、たしか最大のタブーなんじゃ・・・・・・。
モジモジしていると、それを察したリラさんが、クスクス笑う。
「私の年齢は18歳になったばかりですよ。これからは『カシム君』って呼んじゃおうかな?」
もう、俺はどう反応して良いのやら。本当にファーンに言われたように俺ってまるでダメダメだ。
「あの、好きに呼んでください・・・・・・」
「ハイ!」
何でこの人は、こんな会話でこんなに嬉しそうなんだろう。でも軽蔑とかされて無くて良かった。
リラさんと話した後、俺は他の救出された人たち一人一人を見舞って回った。
意識があって言葉がしゃべれる人たちからはものすごく感謝された。そうすると、助ける事が出来て、俺があそこで俺の命を諦めたりしなくて本当に良かったと思う。
そうして見舞っていると、1人のハイエルフの女性に声をかけられた。猫の様にちょっとつり目だが、穏やかそうな雰囲気の可愛らしい女性である。
「カシムさん」
その女性は、俺の剣鉈を手渡してくれた。だが、剣鉈は悪魔の鎧との戦いで折れてしまっていたはずだ。
「折れていたので、我々が持って来ていた材料で直しておきました」
「ああ。それはありがとうございます。とても助かります」
受け取った剣鉈を見て驚く。鋼の剣鉈がミスリル製になっている。
「ッ!!??」
「申し訳ありません。材料がミスリルしかなかった物ですから」
女性が謝るが、どう考えてもパワーアップしているだろう!
「いえ!とんでもないです!良い品をありがとうございます!」
俺が礼を言うと女性は安心したように微笑み、ハイエルフの美形光線を残して去って行った。
こうもハイエルフ光線を浴び続けていたら、普通の村や町に行った時、俺ってちゃんと人々を直視できるのだろうか?
やくたいもない事を考えながら、ミスリル製にパワーアップした剣鉈を腰の後ろの鞘に収める。
鞘に収めるとリンッと鈴を鳴らしたようなきれいな音が鳴る。
ああ、ミスリルだ~。
鍛え方によって違うが、音楽のようなとてもきれいな音を出すのがミスリルだ。どんな音にするのかこだわったりする職人が多い金属だ。
俺は嬉しさから少し鼻歌を歌ってしまった。ガトー、すまん。
俺が外に出るとミルやヒシムさん、ネイルーラさんがいた。
俺を見かけるとヒシムさんが笑顔で語りかけてくる。
「やあ、カシム君。君のおかげで助かったような、助からなかったような・・・・・・」
そして、俺の肩に手を置いたが、その力が妙に強く、今も俺の肩をグギギッと力を込めて掴んでくる。
「だが、君には娘はやれんからな・・・・・・」
く。この男、反応としては人間の父親と変わらず安心するが、すごく腹が立つ。
「心配いりませんよ、お父さん。ハイエルフのみんなは祝福してくれていますから」
俺はせめてもの仕返しにと、嫉妬に狂う父親の耳元でボソボソと囁き返してやる。
するとヒシムさんは逆上して俺の胸ぐらをつかみに架かる。
「き、貴様!!その、あのな!!」
俺は意地悪く「フヒヒ」と笑ってやった。




