旅の仲間 死闘 4
見ると、そこに1人の男が立っていた。派手な黄色い、妙な形の服を着ている。
「アズマ」の服のように前を重ねて合わせ、腰の辺りを帯で締める物だが、アズマの服は下はスカートのように広がったズボンだが、この男のズボンはゆったりしているが、すね辺りで細い靴下のような物でまとめられていた。
裾もアズマはゆったりしているのに、この男の服は裾を布でくるんでまとめている。動きやすそうだが、とにかく派手だ。
そして、細長い耳に少女と同じエメラルドグリーンの髪。不適ないたずらっぽい笑みを浮かべているが、若々しい顔の作りは美しい。
間違いなくハイエルフだ。
「うちの娘を救ってくれてありがとうでござる、少年」
「あ・・・・・・ああ」
俺の足の力が抜けて、その場に膝をつく。
突然現れたこの男、俺が助けたこの少女の父親のハイエルフだ・・・・・・。これで終わったのか・・・・・・。
「カシムさん!!??」
はしごを上がって来て、俺を魔法で助けてくれた女の人が俺の元に駆け寄ってくる。誰だ?俺を知っているようだけど・・・・・・。
痛みと疲労と、緊張感から解放された脱力感で動けずにいる俺の視界に、女の人の姿が飛び込んできた。
ああ。覚えがある。
王城で道に迷っていた吟遊詩人の人だ。
謁見の間で美しい歌を歌っていたあの人だ・・・・・・。
「さて、この魔法使いには眠っててもらうでござるよ。魔法も使えないようにするでござる」
黄色い服のハイエルフは、小声で空中に何かささやきかけて、空中を優しくなでるようにして指先をゼアルに向ける。そして、「昏倒の術!」と言うと、ゼアルが白目をむいて床に倒れる。
なんだ?精霊魔法じゃないのか?
『エリサール・エレサール。エリサール・エレサール。慈愛のマナを用いて彼の者の傷を癒やせ。水の神ウテナの名において、我が命ず。リアリエンス』
歌うような魔法詠唱が耳元に聞こえる。頭の痛みが少しずつ和らいでいく。回復魔法だ。
「あ、ありがとう。き、君はあの時の?」
疲労からボンヤリする頭で尋ねた。女の人は優しく微笑む。まるで美の女神のようだ。
「リラです、カシムさん」