旅の仲間 相棒 1
リラが、この場に駆けつけるまでには、こんな経緯があった。
文化都市アメルでリザリエと別れたリラは、迷いの都市を最短で抜けて南下する為に、遠慮なく現地のアメルッ子に声をかけて案内してもらった。途中で食料などを仕入れる事にも成功している。
カシムたちはまずアメルで迷って半日過ごしてしまっている。その上食料もない状態だったので、途中で狩りをしたり、タイムロスをしている。
また、リラは疲労軽減魔法、疲労回復魔法も使って歩き続けた。もちろん夜は安全なポイントでの野宿をしている。
カシムたちが村に到着した日には、丸1日休む事なく歩き続けて距離を一気に稼ぎ、その翌日、4月6日。早朝5時にカシム達が塔に向けて出発した3時間後に村に到着する。
リラが村に入ると、入り口辺りで数人の村人が深刻そうに話し込んでいた。そこでリラがすぐに声をかける。
「こんにちは。私、冒険者ですが、どうかしましたか?」
リラが声をかけると、村人達の表情が一瞬明るくなる。
「おお。良いところにいらっしゃいました冒険者様」
応対したのはこの村の村長だった。
「実は夕べ、2人の冒険者様たちがこの村にいらっしゃったのですが、その時に私が村の困り事を相談したのです」
『2人組ですって?カシムさんじゃないという事かしら?』
リラはそう思ったが、表情に出す事なく微笑んで尋ねる。
「困り事ですか?」
リラの余裕を感じさせる態度に、村長が意を決する。
「実は、この村からしばらく行った森の中に、いつの間にか塔が建っていたのです。それで我々が気味悪がっていて、冒険者ギルドに調査を依頼しようと思っていたところだと、その2人組の冒険者様に相談したのです。すると、その2人は自分たちで調査すると申し出てくれたのです。・・・・・・ですが、やはり心配で・・・・・・。」
村長が思案顔で沈黙すると、別の村人がボソリとつぶやく。
「なんかあんまり強そうじゃなかったしな~」
「こ、これ!?」
村長が慌てて窘める。
「で、でも白プレートだったし・・・・・・」
叱られた男がなおも食い下がる。
『白プレート?やっぱりカシムさんかも』
「あ、あの。その冒険者たちって、1人は片目の若い男性でしたか?」
リラが尋ねると、すぐに返事があった。
「そうです!お知り合いでしたか?もう1人はハーフエルフの若者です」
『ハーフエルフは知らないわね・・・・・・。でもこれで追いつける!』
そう思いつつ、リラは表情を引き締める。
「大丈夫です。もう1人は知りませんが、その片目の方はとってもお強いです。なんと言っても『白銀の騎士』様のお孫さんですもの」
「白銀の騎士」と聞いて、村人たちは全員目を丸くする。そして歓喜に沸く。
「な、なんと!?あの剣聖ジーン様の?!」
リラは頷く。
「こ、これは大変な事だ!!我が村始まって以来の栄誉だ!白銀の騎士様のお孫さんがいらっしゃったとは!!」
盛り上がりかけるが、リラは手を打って皆を静まらせる。
「ですが、恐らくこれは緊急事態です。大至急馬を飛ばして冒険者ギルドにご報告ください。アメルの冒険者ギルド本部が良いでしょう。『カシム・ペンダートン』が事件に遭遇したと報告すれば、すぐさま応援の部隊がやってくる事でしょう。至急報告する人の人選と準備をしてください。その間に、ギルドに提出する為、塔までの地図を作成してください。」
リラがテキパキと村人に指示を与える。
「馬は2頭いますか?いれば1頭を私にお貸しください。それと、塔まで案内できる人を1人お願いします。私も大至急塔に向かいます!」
リラの指示に村人が迅速に動く。
30分程で全ての準備が整う。
この村からアメルまでは、馬を飛ばせば夜には到着するだろう。若く、体重が軽く、馬に乗り慣れている村人が、地図と依頼書と礼金の前金を持って出発する。
リラは、カシムが絡んでくる依頼なら、恐らく依頼料を村が払う事なく、むしろギルドか国から礼金がもらえる事になるだろうと思っていた。
本来は、この時点で事の重大さに気付くはずもないのだが、リラがここまで事を大事と判断した理由は「勘」である。
カシムが巻き込まれたのであれば、恐らく大きな事件になるのではという予感があった。
なんと言ってもカシムはあの白銀の騎士の孫なのだ。大きな事件がカシムを放っては置かないのではないか。
もし何もなければ、本当はそれが一番良いのだ。大げさにしても構わない。
リラはそう考えていたが、実際はそれ以上の大事件に発展する事になる。
リラは、案内できる狩人の駆る馬の背に乗り、塔を目指した。
馬で急ぐ事4時間。
塔も近くなってきた辺りで、突然「ドーーーーーーン!!!」と爆発音がして木々の間から空を見ると、一筋の赤い煙が見えた。
「何?狼煙?!」
リラが叫ぶと、馬を操っていた狩人が言う。
「塔はあの煙の辺りです!!」
リラは、自分の予感が正しかった事を悟った。
「急いでください!!」
「はい!しっかりお掴まりください!!」
狩人が馬の腹を強く蹴り、馬が勢いよく走り始めた。
木々の間を巧みな馬術ですり抜けて、あっという間に塔に着いた。
赤い狼煙は、風に流される事なく、空に向かって赤く立ち登っているが、発煙元には火の気の物はなく、人の姿もない。
誰かがこの場所に変事がある事を知り、周囲の誰かにこの場所を教える為に打ち上げたアイテムだろう。
これは冒険者ギルドでも売っているアイテムで、見た目は小さい筒で、下側に摩擦熱を与える事で、筒の先端から発煙弾が煙を吹き出しながら花火のように打ち上がり、煙はしばらく空中にとどまる物だ。
色は数種類存在する。基本的に赤はSOSのサインだ。
誰が打ち上げた?
カシムだろうか、とも思ったが、今はそれを考えるより、塔内部の様子が気になる。さっきから塔の中で激しい戦闘音が鳴り響いていた。




