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エレス冒険譚~竜騎士物語~  作者: 三木 カイタ
第二巻 旅の仲間
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旅の仲間  死闘 2

 床に叩きつけられた事で意識が戻る。コンマ数秒の失神。右側頭部に激痛が走り視界がゆがむ。カラーーーンと音がして、ゆがんだ額当てが床に落ちる。

 そうか。鎧の剣が頭に直撃したのか。額当てがあって助かった・・・・・・。だが、ダメージがでかすぎる。意識がまだはっきりとしない。

 血が流れる感触が顔を伝う。


 何だか夢を見ているような気持ちになっていて、焦点が合わない。結局俺は何がしたかったんだろうか?


 考古学者になりたくて、騎士の家だった我が家を飛び出した。だが、訳のわからない事件に巻き込まれて王女を助け、気がつけば「竜騎士探索」だなんていう死刑同然の探索行を命じられる。

 しかもあと1ヶ月半の後には呪いでどうせ死ぬ。

 どうせ死ぬなら白竜に会って殺される事で我が家への義理を果たそうとしていたのに、こんな所で、また訳のわからない事件に巻き込まれて死ぬのか・・・・・・。


 せめて救いたい人がいるのに・・・・・・。多くの人たちが捕らえられている。

 更にこの魔法使いは、ハイエルフたちを掠いに行き、戦力を拡大させたらシニスカ国に攻め込んで、また多くの人たちを殺すと言っている。

 ・・・・・・止めなければならない男が目の前にいる。

 なのに、俺は無力で、結局何も成し得ずに、無様にここで敗北してしまう・・・・・・。


 すまない、じいちゃん。幼い頃からあんなに修行を付けてもらったのに、俺は才能がなくて、物覚えも悪いから、せっかく世界最高の教師が指導してくれているのに、何も身につかなかった。


 じいちゃん・・・・・・?

 なんだっけ?じいちゃん?修行?


「うああああああああああっっ!!!!」

 絶叫と共に俺は立ち上がる。

 背後から迫って来ていた鎧の大剣を、俺は剣の先で軌道を逸らす。続けての切り下ろしも右の剣鉈で地面に受け落とす。


 ドッガーーーーーンッッツツ!!!!


 床に穴が開く。同時にどこかでも爆発音が聞こえた気がしたが、フロア全体が衝撃で揺れたので、意識から外れてしまう。



 それよりも、俺は今まで何をしていたのだろうか?

 風魔法がよく見えない?死角?敵の動きが速い?

 とんでもない事だ。


 俺はこの塔に来てからの状況に呑まれていた。

 初めての魔法使いとの対峙、そして何より、2メートルを越える巨大で異様なフルプレートとの戦いと言う事で、完全に我を失っていた。

 魔人形の話しも俺を動揺させた。

 俺はこの状況全てにビビッていたのだ。

 冒険者としての覚悟がなかった。

 ファーンの方がよっぽど覚悟がある。冒険者としての役割、人を助ける気持ち、冒険に命がけで挑む覚悟。


 俺はあこがれだけで全然理解していなかった。

 騎士の考え方に染まっていて、冒険を乗り切っていく為にあがいていく覚悟がまるで無かった。

 そもそも、簡単に命を諦めてしまっていた。

 俺が諦める事で、救えるはずの命が救えなくなる事を考えもしていなかった。

 そうした事が、俺から当たり前の事を忘れさせていた。



「俺はペンダートンだ!!生ける伝説に修行を付けてもらって来た男だ!!」

 俺が吠える。

 忘れていた。「無明の行」。

 もう俺に、鎧の剣を視認する必要はない。風魔法も、はっきり軌道がわかる。感覚を研ぎ澄ますと、このフロア全体が手に取るようにわかる。

 忘れていた。祖父との修行の過酷さを。

 祖父の一撃はこんなもんじゃない。


 何度か本気の一撃を食らった事がある。

 良く乾燥したその辺に落ちていた小枝で、フルプレートにタワーシールドを構えた俺の意識を刈り取った一撃。

 1時間後に覚醒したが、魔法治療を受けたと言うのに全身に痛みが残っていた。枯れ枝の一撃で完全にゆがんだタワーシールド。


 普段の練習でさえ、この鎧以上の攻撃を何度も受けたし、今以上のダメージも何度も負っていたじゃないか。

 集中だ。感覚を研ぎ澄ませろ。

 もう魔法使いにも、鎧にもビビったりしない。



 剣を振るい、ギリギリの動きで避け、受け流し、攻撃を加える。

 腕の関節に剣を叩き込み切断する。

 すぐに元のようにつながるが、その間に反対の肘から下を切り落とす。


 避ける。右足を切り落とす。魔法攻撃を切り伏せる。鎧の左足を切断する。大剣の攻撃を剣鉈で弾き落とす。

 剣鉈がへし折れるが、動揺する事なく、剣を右手に持ち替えて、左手には小手の内側に装着されている短刀を抜いて逆手に持つ。

 その短刀で、ファーンに向かう魔法を霧散させる。同時に右手の剣で、鎧の振りかぶりの初動を制する。鎧は体勢を崩していて、まともに剣を振れていない。


 俺は悪魔の鎧の胴体に向かって大声で叫ぶ。

「がんばれ!がんばれ!俺が必ず助ける!」

 鎧に捕らわれているハイエルフの子どもに声をかける。俺は剣を振りながら、懸命に呼びかけた。

「がんばれ!負けるな!俺も負けない!絶対だ!」

 鎧はいくら関節から各部位を切り離しても、すぐに元通りにくっつく。


 もっとだ。もっと速く!全周をはっきり全身で感じつつ、俺は自分の剣に意識を集中する。

 相手の動きの初動も見える。

 剣がどう動けば良いのかはっきりわかる。後は速さだ。

 俺は剣を振る。大剣を迎え撃つのも、剣による攻撃として行う。腕を切り落とし、足を切り落とす。大剣を持つ手首を切り落とし、指も切り落とす。再生が間に合わない速度で剣を振るい続ける。

「うおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!!」

 剣を、短刀を振るい、剣と俺自身が一体化しつつ雄叫びをあげる。


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