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エレス冒険譚~竜騎士物語~  作者: 三木 カイタ
第二巻 旅の仲間
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旅の仲間  死闘 1

『エアストル!!』


 ゼアルが魔法を唱える。

 風の刃が発生して俺に迫る。

 見えなくもないが、風の刃は空気のゆがみだけだし速度も速い。何とか右の小手で防ぐ。

 パキィッ!

 風の刃は小手に当たると、乾いた音を立てて風圧だけ残して消滅する。

 中級1歩手前の切断系の魔法だ。それでも高位の魔法使いが使うと威力は跳ね上がるが、この程度なら武器と防具でかき消せる。

 もちろん普通に食らえば大怪我してしまう。

 魔法使いとしてのゼアルの力は大した事ないかも知れない。問題は・・・・・・。


 俺は大きく飛び退くと鎧の斬撃をかわす。だがすかさず変化した2段目の攻撃は剣で受け流す。

 更に変化して3段目の攻撃が来る。


ガツッッッ!!!!


 剣鉈で防ぐが、吹き飛ばされて地面を転がる。

 この鎧、確実に速くなってきているし、変化が増えている。


『エアストル!!』


 ゼアルからの魔法攻撃が、再び俺を襲う。

 ギリギリで風の刃を剣で叩き切る。だがすぐに鎧が迫ってくる。右からの横薙ぎの一閃。

 俺の反応が一瞬遅れて転がって回避するも腕をかすめてしまう。小手をかすっただけにもかかわらず、激しい衝撃に苦悶する。


『エアストル!!』


 俺が一瞬動きを止めた隙に、また魔法を放たれた。

 低レベルの魔法ともなると連発が利く。俺は剣を身構えたが、風の刃が見えない!?

「ぐああっ!!」

 壁際でファーンが呻く。その声に慌ててそっちを見ると、ファーンが腕から血を滴らせてうずくまっている。

 しまった。攻撃をファーンに通してしまった。

「ファーン、すまん!大丈夫か!?」

 俺の叫びに、ファーンは振り返る事もなく立ち上がると、壁際の鎧に向かって剣を構える。

「大丈夫だ!気にすんな!」

 明るい口調で答える。大丈夫なはずはないだろう。


 それにしても意外だった。ファーンの性格なら、とっとと逃げ出したりするかと思っていた。いつもはふざけているが、人命がかかった今、目の色を変えて、必死に救出しようと足掻いている。

 そういえば、村でも村人にどう安心してもらえるか気にかけたり、子どもたちを喜ばせる為に冒険譚をして見せたりしていた。

 普段の言動からはうかがい知れないが、本当はとてもまっすぐで、純粋で優しい奴なのだ。

 俺はファーンと出会ってまだ数日。知らない事の方が多い。

 だが、頼りになる男なのかも知れない。



 鎧が迫ってくる。速くなっているが、まだ、攻撃行動の後の硬直と、方向転換で隙が出来るので、避ける時も相手を中心に回るように避けている。

 相手の攻撃が、変化だけで無く連続攻撃になってしまうと手に負えなくなるので助かる。

「カシム!面の目を叩け!とりあえずその玉っころは割れたぞ!」

 ファーンの声が届いた。よし!攻撃が通るならやってみよう!


 俺はすぐに攻撃の構えを取ると、回避から一転。鎧の懐に潜り込む。それを迎撃するべく下から振り上げる鎧の大剣を、すくい上げていなしつつ、目前で横一回転して勢いを付けた剣の一撃を、面の真ん中の青く光る宝珠に叩き込む。


 渾身の一撃に宝珠はパリィィィィーーーーンと甲高い音を立てて粉々に砕けて割れた。


「やった!!」

 俺が跳び退ると、ゼアルが盛大に笑い出した。

「アッハッハッハッハッハッ!!」

 何がおかしい!?と俺が言うより前に、鎧に異変が起きた。

 

 一瞬の間に俺の目の前まで駆けて来て、上段から切りつけてくる。

 ギリギリで回避するも、すぐ様、流れるように下からの突き上げ。

 ギャリリリリッッ!!

 これは剣で受け流す事に成功した。

 しかし、すぐに鎧は突きを引くと、横薙ぎで俺の首を狙ってくる。俺はギリギリでバック転して回避する。

 それから横にステップして、鎧に方向転換の隙を作ろうとしたが、鎧は瞬時に俺を補足すると猛然と向かってくる。


 どういうことだ?明らかに今までと動きが違う。「徐々に馴染む」というレベルではない。

 別物の動きになっている。


「君たちは何か勘違いをしているようだね。あの宝珠は、鎧を制御したり、中の人間を閉じ込めておく為のものでは無い」

 どういうことだ?

「あれは、私が遠隔視する為の媒体ばいたいだ。あの宝珠で私は物を見て、細かい指示を鎧に与える事が出来るのだ」

 ゼアルがまた笑い声を立てる。

「実験だって言っただろう?つまりね。今まで悪魔の鎧は、肉弾戦の素人である私が操っていたのだよ。でも、あの宝珠が壊れたら、私の大まかな命令を受けて、鎧が持てる力を最大に使って命令を自動で遂行する、正に魔人形になるのさ」

 ゼアルの言葉に戦慄が走った。背筋を冷たい汗が流れる。

「なんだって?」

 くそう。道理で、動きがぎこちなかったり、やたらと隙が多かったりすると思った。

 「馴染む」って、自分の操作が上手くなるって意味だったのか・・・・・・。

「すまん、カシム!」

 ファーンの叫びが聞こえる。

「気にするな!」

 俺は答えるが、振り返る余裕は一切ない。凄まじい速さと威力の連続攻撃が来る。


 上段、下段、横薙ぎ、突き。

 俺は懸命に剣で、剣鉈で受け流す。一瞬でも気を緩めると致命的な威力を持った攻撃が直撃してしまう。

 神経をすり減らす思いで必死に受け流す。

 とてもじゃないが反撃など出来ない。受け流すだけでも腕がしびれる。


『バリエール!!』


 ゼアルの魔法詠唱にハッとなる。

「うあっ!」

 ファーンのうめき声。

 俺は一瞬気を取られてしまった。俺のつぶれた右目の死角から何かが迫ってくる。ファーンの方に気を取られて、全く反応できなかった。



 暗転。

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