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エレス冒険譚~竜騎士物語~  作者: 三木 カイタ
第二巻 旅の仲間
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旅の仲間  謎の塔 4

 魔法使いなら、魔法を使う前に倒せば良い。

 俺は先手必勝とばかりに魔法使い目がけて走る。だが、1歩目が終わるか終わらないかの内に衝撃が走る。


 ドッゴオオオオオォォォーーンッッ!!!


 上階で大轟音がしたと同時に上階の天井をぶち破って、さっきの黒い鎧が飛び降りてきた。とんでもない破壊力だ。


 魔法使いらしき男は、笑いながら壁際に下がっていく。

 俺の前には巨大な黒い鎧が立ち塞がっている。手には巨大な剣。

 窓は塞がれ、階下に降りるはしご穴の前には、その黒い巨大な鎧が仁王立ちしている。

 退路が塞がれてしまった。


「まあ、聞いてくれよ、君たち。20年の研究が、今ようやく完成したばかりなんだ。是非聞いて欲しい」

 壁際で男が言う。何とか逃げ出す方法を考えたいので、男がしゃべってくれるなら好都合だ。

「お前は何者だ!?」

 俺が叫ぶ。男はためらいなくすぐに答えた。

「私はゼアル・ギュンター。魔道師だ」

 聞いた事がない。

「いいよ、知らんだろう?何せ、私はほとんど俗世と交わってこなかったからな」

 ゼアルが笑う。やはり魔法使いか。


 ちなみに「魔法使い」と「魔導師」の差だが、国に仕える魔法使いの役職名が「魔導師」と呼ばれている。これはかつて魔法使いが少なかった時の名残で、現在もその役職名はそのまま使用されている。

 それ以外は基本的に「魔法使い」で構わない。


 冒険者としての「魔導師」、或いは「魔道士」は、「魔法使い」の上位職名でもある。


 しかし、それ以外でも「自称」で見栄を張りたい時に「魔道師」と名乗ったりする。

 このゼアルはどう見ても国に仕えていないだろうし、冒険者でもなさそうだ。と言う事は、見栄を張りたいタイプだな。変にプライドが高い奴って訳だ。

 見た感じ、50歳前後かな?



「さて、私が何の研究をしていたのか教えてあげよう」

 よろしく頼む。この鎧の情報が知りたい。

「私の父は『ゲイル・ギュンター』。かつて魔人形シリーズを作った、狂った人形師だ」

「魔人形?!」

「ほう。そっちは知っているようだな」

 当然知ってる。怪談として子どもはみんな一度は聞いておびえる話しだ。



「私はね。その魔人形を1体持っていたんだよ」

「ええ!?あれ、ほんとの話だったのか!?マジこえぇぇぇ~~~!!」

 壁際でファーンが叫ぶ。

 「バカかこいつ」と言いたいところだが、残念ながら俺も心から同意する。子どもの頃おびえていた怪談が、完全に事実だったとわかったら、大人になっても怖い。

 むしろ子どもの頃以上の深さで怖く感じる。


「魔人形って本当に動くのか?!」

 いいぞ、ファーン。それは俺も知りたい。怖いけど単純に興味がある。

 ゼアルが笑う。

「ああ、動くよ。私も何度も殺されかけたね。あれには魔法が効かないんだ。赤ん坊くらいの大きさの人形のくせに力が強くて、私の様に非力な人間では歯が立たなくて困ったよ。箱に閉じ込めておいても、何故か抜け出してしまう」

 おお。怖い怖い。


「じゃあ、どうやって保管してたんだ?」

 俺が尋ねると、ゼアルはニヤリと笑う。

「良い質問だね。だけど残念。それは答えられないな。そうだ、怪談ついでに、もっと怖い話しをしてやろう。あの魔人形はね、体をバラバラにされても、いつの間にか元に戻っていて、気がついたら枕元に立ってたりするんだよ」

「「うおお。怖い怖い!!」」

 俺とファーンが普通に叫んでしまった。子どもの頃におびえた記憶が蘇る。ゼアルは俺たちがおびえた様子に満足した様に笑う。

「はっはっはっ。私も怖かったよ」


「じゃあ、なんで処分しなかったんだよ!?」

 そんな人形を、後生大事に持ち続ける神経がわからない。

「まあ、父のかたきでもあるけど、父の形見でもあったしね~。・・・・・・って嘘だよ。正直父はどうでも良いんだ。私はあの人形が何故動くのか知りたかったんだよ。魔法が効かないんだから、魔法で動くわけじゃない。不思議だろ?」

 俺は一つ思い当たる言葉があった。

「呪術か?」

 その言葉にゼアルが反応する。

「珍しい物を知ってるね。君は呪術師か?」

「・・・・・・違う」

「・・・・・・だろうね。そもそも私は呪術なんて信じてないしね」

 じゃあ、呪術じゃないのか。俺は呪術をこの身で受けてるから呪術が実際にあると知っているが、教える義理はない。


「まあ、その謎がわかった時には、私は『シニスカ』を追われる事になったんだよ。沢山の人間を実験台にしてしまった事がバレたからね」

 それで、シニスカ国から逃げてここに来たのか。シニスカは隣の国だ。

 エルフの大森林の近くともなると、国境警備の目も行き届かないだろう。それを利用して人が寄りつかないこの場所に塔を建てたって事か。


 しかし、今聞き捨てならない言葉を耳にしたな。「沢山の人間を実験台にした」だと?!


「で、私は魔人形が動く仕組みを利用して、この鎧『悪魔の鎧』を製作してきたんだ。ただ、色々試したけど、どうしてか動かなかったんだ」

 俺はゼアルの言葉の一つ一つに嫌悪感を覚える。沸々と怒りが湧いてくる。

「こいつを動かして何をするつもりなんだ?」

 俺は当然の質問をする。どうせろくでもないことなのだろうが・・・・・・。

「うん。たかだか70センチ程度の大きさで、私よりも力がある人形だ。大きく作ったらどの程度の力があると思う?きっととんでもない力だろうね。まあ、完成してみればこの通りだったわけだがね。さらに魔法も効かない。ただ、魔人形と違ってコントロールは出来るよ。この通り」

 男が何か口の中でつぶやくと、目の前に立つ悪魔の鎧が剣を振りかぶって俺に斬りかかってくる。とっさに後ろに飛んで避けるが、剣の風圧を身近に感じた。当たったらヤバい。


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