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エレス冒険譚~竜騎士物語~  作者: 三木 カイタ
第二巻 旅の仲間
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旅の仲間  謎の塔 3

 もし、この塔の中で、事件が起こっていたら、冒険者ギルドに報告しなければいけない。その時に出来るだけ詳しく、具体的に報告しなくては、ギルドの方でも適切に対応できない。

 それでは意味が無い。「なんかヤバい」なんて報告は避けなければならない。


「報酬出るかな?」

 ファーンがちょっと嬉しそうに言う。

「報告内容にもよると思うけど、出るんじゃ無いかな?」

 報酬が得られる報告内容で無くてはダメだろうけどな。

「よし!」

 ファーンがやる気を出す。



 耳を澄ませても、村長の話にあった様なうめき声は聞こえない。

 取り敢えず、壁に沿って入り口を探してみよう。


 大した大きさでも無いので、すぐに入り口は見つかった。普通の民家よりは若干大きいが、ドアノブの付いた普通のドアだ。

 俺はしばし迷う。

 この手の扉、悪い魔法使いの塔とかでは、大体罠が仕掛けられていたりする。ドアノブにうかつに触ったりしてはいけない気がする。

 あ、この場合、隣のバカにクギを刺しとかないと「どうかしたか、カシム?」とか言ってさっさとドアを開けかねない。

「言っとくけどファーン。ドアノブには罠が仕掛けられてると思えよ」

 俺が言った時には、ファーンがドアノブに手を伸ばしかけていて、俺の言葉に慌てて手を引っ込めた。

「お、おう。わかってるよ。そんなのジョーシキだろ、ジョーシキ!」

 あっぶねぇ~。



 塔の1階部分には窓はないので、このままでは入れない。


 ただし、上階には小さい開口部がある。窓なのだろうが、ガラスなどははまっていないようだ。


「ファーン。お前盗賊スキル持ってるか?」

 試みに問うてみる。

「ふざけんなよ。オレは『探究者』だ。んなもん持ってるか!カシムの方こそどうなんだよ」

「それを言うなら俺は『軽戦士』だ!」

 小声で毒付き合う。



「でも、じゃあ一体どうするつもりだ?」

 ファーンがドアノブを恐る恐る見ながら聞いてくる。

「うん」

 俺はそう言うと、ウエストバッグから、愛用のフック付ロープを取り出す。

 そして、壁から2歩下がると、15メートルほど上の塔の屋上目がけてフックを投げる。フックは見事に屋上のどこかに引っかかり、窓の横を通過して地上まで垂れ下がっている。このままロープを登れば上階の窓から塔の中に侵入できる。

「おい、『軽戦士』?」

「何だよ『探究者』!」 

 ジト目で俺を見るファーンを尻目に、俺はロープをよじ登り始める。

 断じてこれは盗賊スキルじゃない。考古学者スキルだ!文句あるか!

 ・・・・・・いや、全世界の考古学者様、申し訳ありません。普通の考古学者はこんな事しません。


 ファーンも俺の後から登って来ている。俺はスルスルッと窓のすぐ側まで登ると、外から窓の中をそっとのぞき込む。


 暑いグラーダの夏だけに、窓は開放しているし、鉄格子もない。

 塔の中は、少なくとも見える範囲は誰もいない。

 ただ、中は迷宮ではなく、それどころか壁も柱もない作りだった。

 しかも武器庫かのように、黒い大きなフルプレート一式が壁際にずらりと並べられていた。どれも同じ形の鎧だ。

 何かの人型に装着させているのか、巨人が立っているように見える。


 ファーンが俺を下からつつくので、警戒しながら、狭い窓を何とかくぐって中に滑り込む。

 すぐに、窓の横にも設置されている鎧の影に身を潜める。その隣にファーンも滑り込んでくる。身のこなしはたいしたものだ。



「なんだよコレ」

 ファーンが囁きかける。

「わからん」

 円形の塔内部の壁一面には鎧がズラリと並んでいる。

 全部で30体。


 全身黒い鎧で、縁取るように金の装飾がある。兜には2本の角と、後頭部に金糸の房飾りが付いている。

 兜の面には視界を確保するのぞき穴がなく、代わりに真ん中に黒い宝珠が付いている。まるで一つ目の化け物のようだ。小手や具足もあり、鎧としてもかなり大きい。

 この鎧を装着するなら最低でも2メートル以上の身長が必要なんじゃないかと思う。さらに体格もかなり逞しい人が着てちょうど良いくらい全体的に太い。


 近くで見るとますます巨人のように見え、かなりの威圧感がある。

 鎧が装着しているロングソードも普通の物より大きい大剣だ。盾はないようだ。

 禍々しい雰囲気がにじみ出る様なデザインだ。

 そんな鎧が30体。こうして見ていても恐ろしい光景だ。



 このフロアの真ん中にはしごがあり、上の階と下の階を繋いでいた。少なくともこのフロアには誰もいない。

 俺は素早くはしごに近付いて、まず上の階をはしごの穴から覗く。次に下の階を見る。

 上の階の状況はわからないが、下の階には驚いた。

 下の階にはここに飾られているのと同じ鎧が更に大量に並んで置かれていたのだ。100体以上はありそうだ。

 下の階には人はいないようだが、上の階で人の気配がした。


 俺は手振りで上に気配がする事をファーンに伝える。ファーンも意図を察して頷く。

 慎重にはしごを掴むと、ファーンをその場に待機させて音を立てないように登る。そしてフロアのきわからそっと覗いてみた。

 今いたフロアと違い、大きなテーブル?実験台?の様な物がフロアの中央辺り、つまりこのはしごの近くにあり、その上に例の黒い鎧が横たえられていた。壁際には棚が並んでいて、大きな箱が沢山収められていた。

 

 そして、横たえられた鎧の前に、黒いローブをまとった、怪しげな男がこちらに背を向けて立っていた。


『邪悪な魔法使い路線か』


 俺は独りつ。これは脱出してギルドに報告するべきだな。

 俺は出直すべく下に戻ろうとしたが、その前に見つかっていた。

 男がゆっくり振り返って俺に言う。

「まあ、待ちたまえ」


 待てと言われて待つ訳がない。俺はすぐに手を離して、階下に飛び降りると、ファーンに「逃げるぞ!」と声をかけて窓に駆け寄る。ところが、その窓を、側に置いてあった黒い鎧がぎこちなく動いて塞いでしまう。もう一つの窓も同じように塞がれる。

「動いた!?」

 俺はあわてて剣を抜く。だが、鎧はそれ以上動く気配がない。


「心配しなくても良い」

 振り返ると、男がゆっくりはしごを下りてくる。

「それらは未完成品だ。大して動く事は出来ない。とは言え、こうして出口を塞ぐくらいの役には立ったがねぇ」

 俺は男に向き直り剣を向ける。魔法使い相手となると俺はあまり戦闘経験がない。精神魔法の耐性は・・・・・・低い方だ。


「だがね。ちょうど今、私の研究が成功したばかりなんだよ」

 機嫌良さそうに男が笑う。

「せっかくだから実験相手になってくれないかね、冒険者くん」

 「邪悪」決定だ。

挿絵(By みてみん)


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