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エレス冒険譚~竜騎士物語~  作者: 三木 カイタ
第二巻 旅の仲間
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旅の仲間  冒険開始 3

 話が終わると、リザリエが「おほほほほ」と上品な笑い声を上げる。

「ジャスミンさん。その件でしたら、もう気にしなくて良いですよ。王都メルスィンでは世界中に喧伝けんでんされていますから。あなたが何もしていなかったとしても、すぐにグラーダ中に噂は広まりますよ。あなたの減給と罰掃除に関しても、私が所長に話しておきましょう」

 その言葉を聞いて、ジャスミンが涙目でリザリエを見る。

「うううう~。ありがとうございます、リザリエ様~。でも減給免除は嬉しいですが、罰掃除は続けます。あたしがやらかした事は確かですから・・・・・・」

「良い心がけですね。ではそのようにしましょう」


「それで、それで。カシムさんは何処に行ったか知ってますか?」

 リラがそう言うと、ジャスミンが申し訳なさそうに頭を掻く。

「いや~。それが、あのまま飛び出して行っちまったっきりなんだよね。普通は司書に相談したり、パーティー組んだり準備したりするもんなんだけど、あたしのせいで大騒ぎになっちまったからなぁ~。それにあいつソロでやるとか言ってたし。・・・・・・まあ、事情を知って納得だけどな」

「そ、そんなぁ~~~」

 リラが空を仰ぎ見る。


 するとリザリエがジャスミンに聞く。

「カシムさんがギルドを出た時間はわかりますか?」

「はい。昨日、4月3日の14時ぐらいでした」

「では、約1日の遅れですね」

 リラはリザリエを見つめる。


「リラさん。カシムさんは恐らく、白竜の元に向かいます。白竜の棲み家は『カナフカ国』。ここから南、エルフの大森林に沿って下る道があります。それほど広い道ではないので、その道を行けばいずれ会えるでしょう」

 リラはリザリエからの思わぬ情報に、真剣に耳を傾ける。

「ただ、この道を行くならそれなりに準備が必要ですよ。この先、町も村もしばらくありませんから。もし行き違ってしまったとしても、白竜の棲み家の近くに一つだけ村があります。白竜の山に登るなら、必ずその村には立ち寄るはずです」


 リザリエの言葉にリラは深々と頭を下げる。

「ありがとうございます、リザリエ様!私、行きます!」

「はい。行ってらっしゃい。頑張ってね」

 リザリエが微笑む。

「本当に何から何までありがとうございました!」

 そう言うと、リラは駆けだし、リア街道を横断して南に続く道を走って行った。

「リラってあんな子だっけ?何か前見た時と違って子どもっぽいな~」

 ジャスミンがポツリとつぶやく。そのつぶやきを聞いてリザリエが微笑む。

「これが恋なのですよ。良いですね、若者は」

「はあ、恋ですか~」

「あ、秘密ですよ、ジャスミンさん」

 ジャスミンは頭を掻く。

「やだなぁ~。もうわかってますって、リザリエ様」

「そうですね。では、所長の下へ参りましょう」

「お願いします!」



◇     ◇



「さて、腹がへったぞ!」

 田舎道をのんびり歩きながらエルフの大森林の方に歩いていた俺たちだが、俺の隣でファーンが言う。

「もう少し先に村があるはずだ。そこまで我慢しろ」

「あとどれくらい?」

「今夜くらいには着くんじゃないか?」

 アメルを逃げるように飛び出して2日。この辺りに来ると、道はあるが民家ももうない。それもそのはず、エルフの大森林が目前に迫ってきているからだ。

 

 エルフの大森林には「精霊界」とも呼ばれるこの地上世界の地図に載っている異世界である。

 外の世界の住人は、エルフの大森林に入る事はおろか、近付くのさえ恐れている。野生動物や虫でさえも、本能的に侵入するのを避けるという畏れて当然の森である。

 エルフの大森林に入って、出て来られた人間はほとんどいない。いても気が狂っていたり、何十年も経ってから死人同然になって帰ってくるなんて話しが、昔から言い伝えられている。

 親が子どもに言う事を聞かせるのに「言う事を聞かないとエルフの森の精霊につれていかれちゃうよ」なんて言ったりする。

 広大な森林で、小さな国であれば2~3個分の面積を持っている。


 そんな恐ろしい場所がすぐ近くにある為に、この道の先には村が一つあるだけで、後はエルフの大森林の東側を沿って進むだけの道となり、グラーダ国の国境を越えてシニスカ国、ザラ国を経てカナフカ国に達している。


 南下するこの道を行く乗り合い馬車もないので、俺たちは歩いて旅をしていた。



「ああ。腹が減ったよぅ。昨日の昼からなんも食ってないよ~」

 ファーンが喚く。俺にしてみれば、たかが1日2日、何も食わなくても問題ない。「無明の行」ではいったい何日食わなかった事やら。

 だが、食えるなら食っておくのも大切だし、ファーンもうるさいし、なんだか哀れに見える。

 本当ならアメルで色々準備してから旅立つつもりだったのだが、とにかく逃げるように出てきてしまった。東西に進む街道なら栄えているので、何処でも食事や宿には困らないが、南に進むこの道はそうはいかなかった。驚くほど何もない。完全に誤算だった。


 こういう事は、ギルドの図書館で司書様に相談すべき事だったんだ。

 それに俺も噂で聞いていたギルドの花形、図書館の司書様に会ってみたかった。皆、美男美女でとにかく丁寧に優しく接してくれる。

 戦闘色の濃い受付とは大違いだ。

 ギルドもそこんとこわかってるようで、能力以上に顔で選ぶそうだ。人気の司書はそれだけ給料も良いらしい。なので、司書も担当を指名されるよう、勉強したりするのはもちろんだが、どうもいろんな手段を使ったりするとか言うけしからん都市伝説もある。

 それが本当かは知らないが、花形職業の司書様には会ってみたかった。



「しょうがない。ファーン。道を逸れるぞ」

 俺は何もない田舎道を逸れて、西側に広がる森に入っていく。

「お、おいおい。森に入ってだいじょうぶなのか?」

 ファーンが慌てて俺を止めようとする。

「お前、ハーフエルフだろうが?エルフの大森林が怖いのか?」

 俺はあきれる。

「バッカ野郎!オレは高貴な『ハイエルフ』様と違って、うっす汚れたちんけな『廃エルフ』だぜ!なめんなよ!」

「お前、言ってて悲しくなんないの?」

「なんでだよ!!」

 なんで俺が怒られなきゃなならないんだよ。


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