旅の仲間 文化都市アメル 2
グラーダが支配するようになっても、旧カロン王都は、そのまま「カロン」と呼ばれていた。
しかし、グラーダの支配が完了してから16年後にその名称を変える事となる。3953年の事である。
グラーダ三世の妻、王妃アメリアが病死して1年後に、アメリアの名を取って、旧王都「カロン」は、「アメル」と改名されたのである。また、「東グラン街道」も「リア街道」に改められた。
そんな文化都市「アメル」には、旧カロン王都の巨大建築を利用して、様々な施設が作られていたが、その最大の物が「王立高等学院」、通称アカデミーである。
なんと言っても、かつての王城を改修して使用している施設で、一般学問から文化、芸術関係、科学、化学、医術も研究する施設があり、最先端の知識と技術が学べる学校である。
しかも、その門戸はグラーダ国だけでは無く、世界中に開かれていて、試験に合格すれば、誰でも自由に学べるのだ。
さらに、学費が安い。奨励金制度まである。
このアカデミーでは、かなり尖った研究でも受け入れる為、一芸に秀でた者たちも多数集まっている。中には何を研究しているのか、余人には想像もつかない事をしている集団も少なくない。
ともあれ、アメルはメルスィンとは違った賑わいと活気に溢れた都市なのである。
◇ ◇
俺がアメルを訪れるのは3回目か?
メルスィンから乗合馬車を乗り継ぎ、4日間ののんびりした旅だった。
今日は4月3日。時刻は9時。
川幅500メートルもあるユリ川に架かる、巨大な赤いアーチを持つベルーガ大橋を過ぎれば、そこは文化都市と名高いアメルだ。
アメルは3つの大きな丘に作られた都市で、遠目から見ても起伏のある中に巨大な建築物や、彩り豊かな家屋が段を作るように密集しているのがわかる。どの通りを歩いても、何処からか音楽や歌声が聞こえてくるし、街中至る所に彫像や壁画がある。
だが、その賑やかさに浮かれてはいけない。何せこの町は複雑に入り組んでいて、すぐ迷う。「迷宮都市」との異名まである。
迷っても、この都市の住人は親切で、すぐに声を掛けて来て丁寧に案内してくれる。
迷っている人が居たら案内をするのが、アメルに住む人たちにとってのステータスとなっている。
迷っている身としては助かるのだけど、その親切の裏で、アメルの人々は余所から来た人たちを、「田舎者」と見下して笑っているのだ。
「俺たちは生粋のアメルッ子だ。この都市は俺たちの庭だ。迷ってるような奴らは田舎者さ」
飲み屋では、そんな話しをしている連中が多い。
なので、馬車から降りた俺は、出来るだけわかりやすい道を進む事に決めていた。と言っても、目的地はアカデミーと冒険者ギルドで、どっちもリア街道沿いなので、今回は迷う心配は無い。
メルスィンでは、街中で俺をじろじろ見る人たちが多かったが、アメルでは誰も俺に注意を払ったりしない。ありがたいことだ。
アメルは、メルスィンに比べて冒険者たちの姿が多く見られれる。
このアメルにもグラーダ国における冒険者ギルド本部がある。
普通は各国に冒険者ギルドの本部は1つで、他が支部となって主要な街々に設置されている。一国に2つの本部があるのはグラーダ国だけである。
アメルに冒険者が多い理由として、まことしやかに囁かれているのが、ギルドの花形「司書」様である。
このアメルの本部にいる司書様たちは、それはそれは、特に美男美女揃いで人数も多いそうだ。わざわざ他地区から足を伸ばして司書様に相談に来る冒険者が後を絶たないのだとかいう噂だ。
俺も冒険者になったら、その噂の真贋が分かるだろう。楽しみだ。
少し歩くと、探すまでも無く巨大な城が屹立していて、そこが王立高等学院「アカデミー」だ。かつては高い城壁がそびえていたのだが、今は背の低い植え込みが敷地と外とを区切っているだけだ。
街路樹と植え込みを眺めながら、アカデミーの門にたどり着く。
門には守衛が常駐しているものの、中に入るのを咎められたりする事は無く、誰でも敷地内に入る事が出来る。
今は防具も革のジャケットスーツも身につけておらず、大きなリュックに荷物と一緒に装備を詰め込んでいた。腰に剣は差しているが、それでも咎められる事は無かった。
アカデミーには冒険者も割と良く立ち寄るのだ。なんと言ってもこのアカデミーの敷地内に世界で初めて設立された魔法学校があるのだ。多くの魔法使い達は、この魔法学校で魔法を学んでいる。そんな事もあり、冒険者の出入りが多いのだ。
まあ、敷地内と言っても、大きなリア街道を挟んで向かい側に位置しているのだが・・・・・・。かつては一つの敷地だったが、グラーダ三世の街道敷設で、分割されてしまったとの事だ。
そんな訳で、アカデミーの敷地は、リア街道を挟んで南北に分断されている状態なのである。
北側がアカデミーで、南側が魔法学校である。どちらも広い敷地を持っているが、北側の方が圧倒的に広く、建物も巨大だ。
ラダの丘の斜面を利用して築かれた元カロン国の王城は、石造りで重厚だが、丸いドーム状の屋根がいくつも設置されている。ドームの頂点が少し尖っていて、そのシルエットが美しい。
その周囲に高くそびえ建つ尖塔も、実に立派だ。
街道に面する城の正面は平坦だが、側面に回ると石造りの出窓やバルコニーが多く、上階に広い演台があったりする。
これは、城の庭園に人々を集めて、上階にある演台で劇や歌を披露したり、なにか演説をするのに使っていた物だそうだ。
今も、舞台として使用しているそうだ。
他にも様々な施設が広い敷地や、巨大な建物の中にあるそうだ。全部見て回るのに3日以上かかると言う事なので、たいした規模だと感心する。




