5.めでたし、めでたし?
昔から、なんでもそつ無くこなせてしまったこと。
自分の顔がいい事に気がついたのは、中学生の時だったこと。
なんでも器用にできるから、周囲の人のことを見下していたこと。
大学時代からの付き合いの青山課長に、その考えを叩き直されたこと。
それでも、恋愛などくだらないと、自分に集まる女性の事は、どこか見下してしまっていたこと。
何故そんなことを語られるのか分からない私は、目を白黒させ、木村課長の話を遮ろうとした。
すると、木村課長はスっと人差し指を立て、私の唇にかざす。
『私のこの性格の悪さは筋金入りなんだ。だから、いずれ結婚するにしても、自分に利益をもたらす、そんな相手を適当に見繕って、それなりの結婚生活をしていくと思ってたんだ。でも、違った。』
そうして、木村課長が優しい瞳で語るのは、彼の意中の人の事だった。
最初に彼女を助けたのは、自分の課で揉め事があると面倒だったから。
彼女の視線を感じても、またか、と思うだけで、ちっとも心動かされなかったこと。
彼女が声を掛けてきたとしても、振るつもりだったこと。
予想に反して、彼女からの接触は一切なかったこと。
それなのに、度々部下の元に業務で来ていたこと。
毎回彼女を庇うはめになる、その不器用さにイライラしていたこと。
いつしか彼女からの視線がないと、落ち着かなくなっていったこと。
自分以外の人には話しかける彼女に不満を持っていたこと。
話すきっかけを掴もうと、彼女の好きなお菓子を差し入れていたこと。
青山課長に、それは恋だと言われ、動揺してマグカップを割ってしまったこと。
認めたくなくて、他の女性と付き合おうとして、ダメだったこと。
諦めて認めたものの、自分から動くことが無かったので、上手くいかなかったこと。
彼女の誕生日をたまたま知ったので、食事に誘おうと思ったこと。
それなのに、誕生日当日の彼女はどこか落ち込んでいたこと。
その姿に、声を掛けていいか迷い、姿を見失ってしまったこと。
諦めきれずに街をウロウロしていたら、彼女を見つけたこと。
声を掛けたら、彼女は泣いていたこと。
動揺しすぎて、彼女を食事に誘ってしまったこと。
食事をしていても、自分は味が分からないほど浮かれていたのに、彼女は別のことを考えていたように見えたこと。
当然奢るつもりだったのに、お金がないという彼女にお願いをしたこと。
『もうね、自分でも分からないんだけど。私は彼女…貴女のことが好きみたいですよ、鈴木雪さん。』
『みたいってなんですかぁ…。』
私の目からは涙がポロポロと止まらない。
『みたいかどうかは、鈴木さんの返答次第ですかね?』
『性格悪すぎじゃないですかぁ…でも、好きですぅ…。』
『私も好きですよ、雪さん。』
こうして、私のついていないクリスマス・イブであり誕生日は、最後に爆弾のようなプレゼントを貰って締めくくられた。
ちなみに、木村課長…もとい、恋人になった光さんからの誕生日プレゼントはペアリングで、彼の執着を感じて慄いたのと同時に、幸せな気分を味わうという不思議な思いをした。
会社で光さんが堂々と交際してると言うものだから、女子社員に目の敵にされたり。
青山課長に『あいつ、光とか言う名前の割に腹の中真っ黒だから気をつけろよ』と言われ、『知ってます』と答えると、『あぁー、本気かぁ。可哀想に…。』と謎の発言をされたりするのだが、それはまた別の話。
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