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第三章1 獣人族

 魔族の学校にも慣れてきたが、片腕のない生活に慣れるのにはまだしばらくかかりそうだ。何せ、歩き方までぎこちなくなってしまう。

「あれ? なんで」

 普通に歩いているつもりなのに、重心がいつもと違うせいで傾いてしまう。

「あちっ」

「ちょっと~、あまり無理しないでよ~?」

「ごめん、心配してくれてありがとう、リリィ……先輩」

「? 先輩? それって私の事? 私の名前を言ってたし! 私の事よね! ああん! いいわね! もっと呼んで~」

「うっ、えりか……先輩」

「そんな小さい声じゃいくら心の声の聞こえるサキュバスでも聞こえないよ~」

「? いま、なんて?」

「聞こえないよ?」

「そこじゃなくて、心の声が、聞こえる?」

「あ、あはは~。心の声が聞こえるというよりはイメージが伝わってくるの」


 リリィの反応を見て、彰は耳の先まで真っ赤になった。男の子なら仕方ないことだ。

1.露出の高い服

2.大きく膨らんだ母性の塊

3.サキュバスという種族が健全な男のこに与えるイメージ


「余計恥ずかしいわ!」

「いいのよ? お姉さんそういうの慣れてるから。むしろサキュバスとして喜ばし……」

「ごめん、ちょっと一人にさせて」

 彰がそういうと、リリィは扉をすり抜けて部屋の外へと出て行った。

「はあ~!」

 超恥ずかしい!まあ、あの人サキュバスだし、慣れてるんだろう。俺だけ恥ずかしがってても仕方ない!部屋の中にいても暇だしな~

「外に出るの? 私もついて行っていいわよね!」

 顔を声のした方向へ向くと、そこには生首があった。

「うわ!? リリィ! どっから顔を出してんだよ!」

「ベットからよ?」

「見ればわかるわ! あ~、もうわかったよ、暇つぶしに付き合うからちょっとだけ外で待ってて」

「……ねぇまだ~?」

 そう言いながらリリィが彰の部屋の扉から顔だけすり抜けて話しかけてくる。

「おい!」

 着替えていた最中の彰は焦って恥部を隠す

「見ても減るもんじゃあるまいし~、前から気になってたのだけど、なんでいつも着替えてるの? ヴァンパイアの眷属なら汗もかかないし、汚れることもないはずよ?」

「う~ん、(人間だったことを)忘れないため、かな。それで、どこに行くんだ?」

「ほら、あなたがここにきてまだどこも見に行ってないでしょ? 案内してあげる。ほら速く来て」

 彰の手を引いて、部屋の窓から飛び出ていく


―――――――――――――――――――


「そうね、まずは北から案内してあげるわ。さっさと見てさっさと次に行きましょ」


「なんか若干嫌がってないか?」


「まあね、ああいうのが好きっていう同族もいるんだけど、私はちょっとね」

 何の事だろうと考えながらゆっくりと目的地へと飛んでいく。そして、大きなドーム型の建物が見えた。

「? リリィは入らないのか?」

「私は、ここで待っておくわ。すぐに出てきてね」

 その理由はすぐにわかった

「うっ!はぁ~!まだだ~!」

「まだやれる!お前はそんなくらいでくたばったりしないだろ!あと十回!」

「これは……ジムかな……」

 扉を開けるとそこには、ゴリゴリな獣人族の皆さんがそこにいた。

「これは……俺でもきつい、教科書に載ってた獣人の特徴の猫耳はついている。だけど、あの耳は間違いなく猫耳なのだが……猫耳なのだが」

「う~! は~!」

「ゴリラしかいないのは気のせいだろうか」

「よう!そこの兄ちゃん!お前も鍛えに来たのか?って、ヴァンパイアかよ」

 どうやらヴァンパイアは嫌われているらしい

「ほう~ヴァンパイアがこんなところに来るとは珍しい、少し手合わせを願いたいがいいかね」

 そういいながら奥の方から筋肉ゴリゴリな中国の武術の達人風なおじいさんが出てきた。だが、猫耳だ。そして周囲にぞろぞろとゴリゴリな猫耳ゴリラが集まってきた。すると、さっきのじいさんが机の近くに良き、右ひじを机の上に置いて見覚えのあるポーズをとった。勘違いじゃないなら、あれは腕相撲だ。

「え、あ~ちょっとこの後いろいろいかないといけない場所が……」

「おいおい、天下のヴァンアイア族の眷属もとんだ腰抜けだな~!眷属がこれならあるじもただのアバズレ」

「ほう~(ムカ)、いいだろう、俺が勝ったらさっきの言葉を誤ったうえで、明日一日中、獣らしく四つん這いで学園敷地内を移動してもらうぞ」

「いいぜ!お前が勝てたらだがな」

「絶対後悔させてやるからな」

 にしても、触りたくね~、臭せ~。獣人族は魔族の中でも新陳代謝を行う珍しい種族。故に

「くさい」

「いい匂いだろ、これこそが漢の香りだ!」

「……」

 なんか、汗が、滴ってる上になんかテカってる。我慢だ、我慢

「準備はいいな、お前の残ったこっちの腕も折れないように手加減してやらなくて大丈夫か?」

「心配無用」

 静けさが建物を覆った。熱気がドーム状の建物に雲を成し、二人を取り囲む空間がさらなる熱気を発していた。

「この硬貨こうかが床に落ちたら合図だ」

 そして、金属音とともに衝撃音が建物を響き渡った。

「さすがはヴァンパイアの眷属、鍛えてもいないのになかなかの力、だが、力の扱いがまだ未熟」

 そして彰の腕が少しずつ右に傾き始めた

「そろそろ終わらせてやろう」

「終わるのは、あんたの方だ」

 右腕に魔力を込め、手の甲に小さな魔力の噴出口を作る。そして、一瞬っで拮抗していた力のバランスが崩れた。

「おい! なんだよ今の! ずるだずる!」

「誰も魔力を使っちゃいけないと言ってなかったが?」

「いやはや、長い間生きてきたがそのような魔力の使い方をした者は初めて見た。わしの負けじゃ」

「明日が楽しみだ」

「チクショ~!覚えてやがれ~!」


―――――――――――――――――――


「ねぇ」

「なんだ」

「臭い」

「わかってる」

「とりあえず」

「「帰ろうか」」

大学院無事合格しました~!

長らくお待たせしました

いろんな他の趣味も増えてきたので、こちらの投稿は不定期になります!

今後もよろしくお願いします。

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