第二章60 特別授業15
「なぁ、ほんとにそんなものでいいのか?」
金ぴかなファッションを着こなしたイケメンがそう問いかける。そう聞かれた目立たないかっこをした少年は大きな耳をしたリスみたいな動物の頭を優しくなでながら
「僕は、これでいい、これさえあればいい」
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周囲には身を潜められるような大きな瓦礫はほとんどが砕けている。
「これは……まずいな」
エリカが空中へとマクズをさらに追い込もうとして、大きな翼を広げ、周囲に爆風を巻き起こし、一瞬にしてはるか上空へと飛び立つ。そんなエリカの姿を見て、以前エリカにコテンパンにやられた技を思い出した。
手に持っている剣で、彰は自分の左手の人差し指に剣先を少しつつき、赤い血が、流れ出る。その血の流れている手を、彰は勢いよく振り、瓦礫に数滴の血滴が付き、血液が次第に人の形をとり、彰と全く同じ姿となった。
「血液分身、といったところかな」
目的はただ一つ、同時に多くの方向からアイツを攻撃する。
「やっぱりそううまくはいかないか」
二体の分身を作り、死角をうまくつき着々と、盾の本体にダメージを与え始めた。だが、手ごたえがない、骨を砕いた音はする。肉が裂けたような感触もかすかに伝わってきたりもする、だが、どんな傷を与えようとも、ほんの一分もあれば完全に回復している。そして、
グサッっと彰の剣がついにゾンビの背後から本来心臓があるはずの場所を突き抜けた。だが、盾は左手で彰の剣先をしっかりとつかんだ、そう、抜けないように。
「まずい!」
抜けないとわかった時にはすでに遅く、大きな盾が再び彰に大ダメージを与え遠くへと飛ばす。今回、アイツは守ってはくれなかった。
「彰!」
彰が真っ向からあの攻撃を食らったのをたまたま見たエリカはすでに全身動かなくなるほど殴られたマクズをまさにぼろ雑巾のように投げ捨て、急いで彰のほうへと向かう。
盾が意識を失った彰に、さらに追い打ちをかけ突進する。そしてエリカの目の前で、彰は潰された。
そう見えた。が、次の瞬間、黄金の火があたりを覆いつくし、空すら覆い隠すてしまいそうな巨大な羽がその姿現す。
「吾を呼び戻すほど追い込まれる時がこようとは」
この世界において最大最強の生物、その火は湖すべてを蒸発させるという。そして、それらを統べる龍の王。そして今は
「わが友を傷つけた罪、万死に値する」
「はっ、けっ、え、げほ、口の中に砂利が……」
「起きたか」
「ありがと、助かった」
「では、久々に暴れるとするか、吾もずっと雑魚の相手のは退屈だ」
「あぁ、お前の力をまた貸してもらうよ」
盾のゾンビが再び襲ってくるが、今度は
「おっと、痛いではないか、この痛み、よい! よいぞ! よい盾だこの吾に触れられても溶けぬとはな」
この世界は、相性が勝敗を決める時もある。彰の攻撃が全く聞かなかった盾、だが物理攻撃に対して炎龍はどうやら彰より物理耐性を持っているようだ。
「ドンっ」
空からなまご、マクズは降ってきた。舞い上がった土煙の中
「いまのはなかなか効いた、って、そいつは! ひっ、ひいいいいい!」
なぜかマクズは炎龍の姿を見た途端に、血色が悪くなり、逃げ出しそうになっている。さては過去に何かあって、ドラゴン関係でトラウマでも持ってるな
「さっさとこいつを倒すか」
「ヴううううう」
わが主をを気づ付けた罪、再び死ぬことで償うがいい。
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炎龍との共同戦線は、実にうまくいっていると言っていい。炎龍の火炎放射はあの盾を溶かすことができない、熱が拡散し、盾の周囲はまるで火山の入り口のようにマグマで囲まれているようにもなっていた。
「足りない、アイツを殺せるほどの力が足りない」
どれだけ切っても、どれだけ燃やしても、盾のゾンビにはダメージがない。
「わが友よ、吾の血を飲め、もしお主に堪え切れることができたのなら、必ずやつを消し去る力を手にするであろう」
「……耐えるっていうのは?」
「わが血液はマグマと同じ温度、それを飲むということはマグマを直に口にすると何ら変わらぬ苦痛を味わうであろう」
そういい終わると、炎龍は彰と同じくらい大きな手を、彰の目の前まで手を伸ばしてきた
「それで、思い描いた未来が手に入るのなら」
ゆっくりと、炎龍へと手を伸ばす。熱風が彰を襲う、手が、灼熱の手に触れる。ジューっと、肉が焼けるような音が聞こえる。
「うっ」
手が焼け、肉が焦げるを耐えながら、ゆっくりとその牙を炎龍の手に突き刺す。
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