第一章7 エルフ姫:アルン
遠くに見えるあの大樹はまさに夢にも見た幻想的な姿をしていた。
らせん状にそらへえと向かって大きな手を伸ばしているようにもみえる。
思わず見上げながら近づいてみたいと思い、少しずつ近づいてみる。
知らず知らずに頂上を見るのが少し首がいたくなるくらいの距離まで近づいてしまった。
視線を下すと
「おっ、美人エルフがいっぱい」
透き通った肌、白と金の間ぐらいの髪、アニメでよく見る邪魔な霧。
? 霧? ハッ! ここお風呂場か! そしてなぜリアルで放送規制がかかる!
ここは身を引くべきか、いや、ちょっと待て、エルフの女性の入浴シーンなんて一生に何度も見れないぞ!(※こんな思考回路はマネしないように) だが、覗きはよくない、身を引くか
そう思って振り向くと顔を赤くして矢をこちらに向けているのがのが一名、今にも殺してやる! みたいな目つきで見下しているのが一名、布一枚まいてもう片方の手で魔法陣をこちらに向けているのが一名。
逃げ場がない、異世界生活三日目。
まさかの覗きによる逮捕、逃げようとも思ったが、足の速さはこちらのほうが速い。だが、あの距離だ、確実に矢に射貫かれてしまう。
俺は木製の牢屋に入れられた。
しかも、あの大樹のてっぺんに近い下を見ると思わず柵をぎゅっと握ってしまうくらい高い。
ほかの檻には、見たことない動物が何種類かいた。
周りにいるのはエルフそれに、羽の生えている妖精、すなわちフェアリーもいた。
どうやら木の根元はエルフの居住地で、この大樹にはフェアリーが住んでいるようだ。
「誤解ですって! たまたまこの木を見ながら近づいていったらあそこについてしまったんですって!さっきからいってるじゃないですか!」
「こんなことをほざいているがどうする?」
「乙女の裸を見たんですし、死刑ね」
「死刑よ」
「死刑でいいと思いますわ」
「この国の刑罰重すぎません!?」
その後ろからひげを生やした。
歴戦の英雄のような見た目をしたおっさんが現れた。
「はっはっは、エルフ族の女の入浴を除くとはずいぶんとうらやっ、(咳払い)破廉恥なことをしてくれたのう」
少し檻に近づき、こっそりと話しかけてくる
「で、どうじゃった? 」
「え~と、何がでしょうか? 」
「風呂じゃよ! 風呂! 見やすかったか?」
後ろのきれいなお姉さんがスゲー睨んできてるんですけど!? 何聞いてんだよこの爺! 後ろの人聞こえてるんじゃないの!?
「見えなかったよ、ちょっとうっすらとぐらいしか見えなかったよ! ちくしょ~! 正直に言うよ!! どうせ死ぬのならがっつり見たかった!」
「だっそうだ、少しくらい減刑してやれ」
「チッ」
あれ? 舌打ちした? 今あっちの少し身長の小さい子舌打ちしませんでした!?
「ヴァンパイアはさっさと殺しておくべきです!」
「そうですよ!」
「まあまあ、こいつには悪意は全く感じられない、ヴァンパイアにもなって間もないようじゃし、それにあ奴を怒らせるといろいろ厄介だ」
「確かに」
「そういえば血の匂いがあまり濃くないわね。」
「あのロリババアの眷属だったらむやみに手を出せないわね。」
「まあ、王がそうおっしゃるなら。」
三日間監禁したら出してもらえるということで了解を得た。しかし、ロリババア……そういえば年齢いまだに不詳だったな~。エルフたちは200年が寿命らしい。
そんな人たちからばばあ呼ばわりとなるとかなり高齢なのかもしれない……。
「暇だな~」
周りの看守さんのお姉さんの目が痛い。
ごみでも見てるような目でこっちを見てくる。
下を見ると、まるでスカイツリーのてっぺんから見下ろしているようだ。
いや、もはや小さすぎて人が良く見えない。
片目に意識を集中してみると、スナイパーライフルのスコープを覗いているように下が見える。
これもヴァンパイアの力か、森の奥から男が数人でかい鳥を担いで現れた。
「あれ?あれって俺を襲ってきた鳥か?ふっ、これから焼き鳥にでもなるのかな、ははは~、ハァ、おなかすいたな~」
日が沈み木が緑と白で光の粒子が木から少しずつゆっくりと出てきているのが見える、本当にきれいだ。
どうやら下では大きな鳥をメインディッシュに宴会を開いているようだ。
「はい、これあげる」
そういって下で作ったのか、鶏肉と花のような野菜のスープ、それを渡してきた。
「速く食べなさい、こっそり持ってきてあげたんだから」
「……ありがとう」
「べっ、別にちょっとかわいそうかな~って思っただけなんだから」
やばい、この状況でその優しさはなんだか少し泣けてくる。
よく見たら、あの顔を赤くし涙目でこちらに向けて矢を構えてた娘だ。
これがはじめてのアルンとの会話である。
その後もたびたびこっそりとご飯を持ってきてくれたり、話をしたり、異世界から来たと教えると興味津々に輝いた眼でこちらを見つめてきた。
血なまぐさい異世界で、久しぶりに楽しい時間を過ごせた。
朝が来た。
思ってた以上に朝の太陽はヴァンパイアにとって害だ。
まあ、体育の授業の時も炎天下は嫌いだったな~。
異世界の話をアルンと二人でしていると、知らない間にほかのエルフの女、子供や青年がきて一緒に話を聞いていた。
自分にとってはつまらなかった世界でもエルフたちにとっては面白かったらしい。
何だか話しているこちらも見ていると少し楽しくなってくる。
その後アルンがお姫様だということを知った。
あのスープもアルンの手作りなんだと、なぜか少し恥ずかしそうに伝えてきた。
ずいぶんとやんちゃで優しいお姫様だ、きっといい村になる。
そんな日々が二日続き、エルフの王、《フレイ》が自ら牢を開けてくれた。牢をでて皆の俺への態度は悪いものではなくなっていた。
あの鶏肉のスープ、本当においしかった。
料理は得意だったので作り方を教わった。
どうやらこの世界にも塩はあるようだ、そして、鶏肉は少し硬いが、味は元の世界とさほど変わらない。
ミルクの味のする樹液を流す木があり、それも教えてもらった。
そのほかに食べられる植物などなど、試したいレシピが増えたところでまだ疑問があった。
「あれ?そういえばあの温泉はどうやって?」
「あなた、炎龍の洞窟には入ったんでしょ? あそこの黄色い結晶があの泉の下に沈んであるの。どういうわけかはわからないけど、すごい勢いで洞窟のほうから飛んできたの。でその高熱であの泉の周りの部分がちょうどいい温度になったってわけ」
「絶対わざわざ命の危険を冒してまで取りにいけないものだしね~」
それはあれか、炎龍がいるからか、風呂はいいな、俺も入りたいし、今度取りに行くか。
そう言って、ヴァンパイアとして都合のいい夜にエルフたちの村を出た。
村を出て20分ぐらいか、急に後ろから爆音が聞こえ、大きな火と煙がエルフの森から燃え上がっていた。
皆さんお待ちかね!第二のヒロインです!
次は戦闘シーンを予定しています。
描写が下手だったらすみません。
引き続きよろしくお願いします。




