第二章55 特別授業10
「ウッ」
平然としていたブラドが突如さかさまになり、地面へと落ちていく。土煙の中でゆっくりと立ち上がったブラドは口から血が出ていた。自らの体内の血の流れを操ることできても、槍によって壊された内臓は修復できない。
「回復する時間は与えない」
空から直下でシバが襲い掛かる。突如、土煙の中からもう一つ小さな影が飛び出し、シバとブラドの間に飛び込む。それにシバは気づいたが、速度を一切落とすことなく、少女とブラドを同時に貫いた。
「なぜここに来た!」
「あなたに救われた命だから、あなたのために使う」
小さな体から、赤い液体が前後から吹き出る。その血がブラドの口元に一滴。たまたま飛び込んだ。そして、ブラドは、その味を覚えていた。
「ラキア……」
ブラドは少女の首にかみつき、ありったけの血液を流し込む
「二度もお前を失うのはだめだ。おまえが死ぬことを吾は決して許さない」
「なにをしてる」
目の前の光景に戸惑いを隠せない
「なぜ、ただの小娘にそこまでする」
シバの声に一切反応せず必死に、少女を助けようとするブラド。そして、少女の亡骸を抱えたまま、ブラドの姿も、徐々に老いていき。60歳ぐらいだろうか、老化が止まったと思ったら。一切動くことがなくなった。そして、ブラドは徐々にミーラのように固まった。
吸血鬼は不老不死、不老不死という事はずっと死なないという事。ただそれだけではない。だが、死なないというのは他人から見た言い方だ。本人からしたら、永遠に死ねない、のほうが正しいかもしれない。そこから救われる方法はただ一つ、死のもう一つの呼び方。永遠の眠り。
「このまま、地下深くまで封印してやる」
シバの手が光り、ブラドに触れようとした瞬間。死んだと思っていた少女がシバの手をはじき返した。途端、周りの土が少女とブラドに襲い掛かる。それはまるで磁石に引き寄せられる金属のように二人を地面の中へと吸い込もうとする。
だがその時、紫色の光が二人を包む。それと同時に少女の姿は次第に大人の女性へと姿を変える。そして、ブラドもミーラからまるで時間が戻っているように、次第に若かく、エリカと同じくらい若くなっていった。そして、その場にいる彰を除いたすべての人が驚いた。少女を見て最も驚いたのはシバだった。光をとらえて一切逃さない黒い髪、白くて雪のような肌、太陽のように暖かい笑顔、いくら時が経とうと忘れることのない母の姿がそこにはあった。
月刊トウエン!嘘です、冗談です、すみません!
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