第二章54 特別授業9
「シバ、これは、何のつもりだ」
胸から突き抜けているのは彰から左腕を奪った、魔力を帯びた槍、その槍のでつけられた傷は治らない、その上たとえ傷つけられたものが不死身だとしても。その再生能力を封じる。そんなやりが、ブラドの心臓を、背後から貫いていた。
「父上、いや、ブラド。この日をどれだけ待ったか、感謝するぞ、エリカの眷属、彰。この数百年一度たりとも傷ついて帰ってきたことのないこのブラドが、回復にこれほど時間のかかる傷を負って帰ってきたのを見るのは初めてだった。興奮したさ、生まれてきてから一度しかあんたが傷ついた状態を見たことなかった。だが、そこにいる眷属はお前に回復が追いつかなくなるほどの傷を負わせた。だが、“今じゃない”周りの者どもが強いのはわかっていた。この命と引き換えにお前の命をすべての世界から消すくらいの覚悟はできていた。だが、あの日襲い掛かったとしても、お前にとどめを刺すことはできなかっただろう。だが、今は違う。誰もお前を守っていない」
「お兄様……」
「エリカ、別にお前を恨んではいない、こんな男の近くにいたくないっというのはわかる」
「ほう、父のことをこの男と呼ぶか」
そう言って、シバが引き抜こうとしている槍を握る。
「!? 抜けない」
そして、なぜかはわからないが、手もはなすことができない
「何をした」
「これだからお前はまだ未熟なんだ」
ブラドから流れ出ている血は、シバの手から先には流れずに、そのまま固まった途端、マントから深紅のとげが貫き、シバへと突き刺さろうとする。そして、何が起こったのかよく見えなかったが。シバの両腕が突然ちぎれ、距離をとった。
「いい判断だ」
「わざとちぎったのよ」
?
「どういうことだ?」
「お兄様の最も得意とする技は、あなたに分かりやすいように言うと、念力よ」
「つまり、自分で自分の両腕をねじ切ったってこと?」
ヴァンパイアにも、痛みはある、それはなった自分が一番わかる。そして、ヴァンパイアにとって痛みよりもそのあとに襲ってくる激しい痒みのほうが一瞬の痛みよりも数倍つらい。人も傷の治りかけは痒くなるものだ。それをほんの5秒で直すヴァンパイアにはその痒さが回復の速さに正比例で凄まじい、ヴァンパイアになって初めて、かゆさが苦しさでもあると初めて知った。
そして知ったことがもう一つ、シバの恐ろしさと言ってもいいだろう。素早く的確な判断力と知力、魔族屈指の戦闘力、演技力はさておき、自分の親でさえも一切迷いなく殺そうとする冷血さ
「それは違うわ、お兄様は、ここにいる誰よりも……」
自分の考えが読まれたことはわかった。だが、エリカの続きの言葉は何だったのかは、誰も知らない。
一か月ぶりの投稿でお待たせしました!




