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遠くから見ていた理想郷(エデン)で夢を見る  作者: †リオ†
第二章 決断、そしてこれから
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第二章53 特別授業8

 大量の魔獣がまるで津波のように、欲望渦巻くこの結婚式場に流れ込む。しかし、その場にいる魔族は、どれも強かった。そこらの魔獣は一瞬で塵となって消えた。それを見ても、命令のままに魔物たちは死へと突き進む。


“もういい! お前たちはもう逃げろ”


 そう命令をしたかった。自分の目的のためだけに、関係のない魔獣たちの命を使い捨てることはできない。理性はそう語ってくる。だが、目の前にいる銀髪赤眼の美女も目を見た瞬間、彰の心から、迷いが消えた。恨まれてもいい、呪われてもいい、ただ目の前の一人を助けるためなら、どれだけ命を犠牲にしてもいい、それが彰の選んだ選択。

 そして、エリカにかかった魔法の解除方法もなんとなくならわかった。ただ叫べばいい。


「エリカ~! 自由になれ!」


 彰の叫びは、エリカに届いたように見えた。そして、エリカの精神は魔法の呪縛から解き放たれた。

 周りを見回し、エリカはすぐに理解し、そして、こっち側の戦線にすぐに加わった。そして魔獣たちを守りつつ、周囲を見回し、魔獣たちを操っている何者かを探す。

 彰の遠吠えとともに、魔獣たちが一気に去っていく。


「お前か」


 冷たい声が、そう耳元でささやいた。重い一撃が彰の体に命中し、彰は凄まじい勢いで建物を支える柱へ激突し、柱が崩壊すると同時に建物が丸ごと崩れた。魔族の上流階級の面々は全員無事に建物の外に逃れた人もいれば、がれきに埋もれたにもかかわらず身体能力だけで数百キロものがれきを持ち上げる猛者もいれば、魔法を使い身の回りのがれきをすべて吹き飛ばした者もいる。

 そして、彰は全身ボロボロになりながらもなんとか背中におちた大きなコンクリートを押しのけた。だが、見えたのは真っ赤な月、ではなく、赤く光り、そして殺意の具現化のようなブラドの目だった。


「今のでまだ死ななかったとは、ずいぶんと頑丈のようだ。だが、さっきは逃したが、この一撃で今度こそお前の息を止めてやろう」


 そう言って、ブラドは赤い光を反射した槍を頭上高く構え、そして、一切瞬きせずに衰弱しきっていた彰に向けて銀色の刃物を振り下ろす。そして、真っ赤なしずくが落ちていく。


「よく、頑張ったわね」


 見慣れた長くてきれいな銀髪、刃物は彰の皮膚に届きそうなところで止まっていた。そして、それを停めているのは、よく知っている背中だった。


“あぁ、また、助けられたんだな”


 赤いしずくが、ぽとぽとと落ち、その中の一滴が彰の口の中に流れ込む。その途端に、傷ついた獣は白く光り、徐々に人の姿へとその姿を変えた。


「えっ、あき……ら?」


「やっと、戻れた、けど、やっぱり左腕は戻らなかったか」


「これは驚いた、ずっとそこにいたのか。この吾も見破ることのできない変身魔法をがあったとは」


「そんな話はどうでもいい、ブラド、お前は自分の娘に何をしたのかわかっているのか!」


「何のことだ」


「お前は魔法で自分の家族を操ったんだぞ!」


「それがどうした」


「それがどうしただと? 自分の家族を操り人形に変えたんだぞ!」


「吾とて、この手は最後まで使う気はなかった。おまえがそうさせた」


「そんな必要がどこにあった!」


「彰と言ったか、問おう、お前は何を求めそこにいる」


「いきなりなんだ」


「不老不死が本当に意味しているのもがなんなのか、一瞬しか生きていないお前にはわかるまい。確かにお前は多くの死知ったのかもしれない。それがなんだ。おまえにわかるか、皆が自分を残し、老い、そしてあるものは安らかに眠り、あるものは命を落としてさえもそこに立ち刃を敵へ向け。その身が朽ちおちるまで立ち続けたものもいた。私は彼らがうらやましい。生き物とは自分にないものを求めるもの。ゆえに、吾は死を求める」


「何を言うかと思ったら、正直に言う! 死にたかったら勝手に死ね!」


「そうしたいところだが、吾はこの国を守らねばならない、かつての盟友とともに、築き上げたこの国を守る使命が残っている。そして、エリカが婚姻を結び子を持つことで吾はやっと死ぬことが許される」


「そんなのはただの自分勝手だ! 人のことを考えたのか! それに! エリカに結婚なんて向いてない!」


“バチッ”


「いてっ」


「失礼な。私だって、男女のうつつに興味ないわけではないのわよ」


「それはひとまず置いといて、目の前の問題をどうにかしないと」


「そうね、数百年も生きてきた老いぼれにはそろそろ退場してもらいましょう」


「いいのか? エリカの父親だろ」


「あの人にいい思い出なんてこれっぽっちもないわ」


「了解! それじゃ! 思う存分行きますか! こい! 炎龍!」


 いつの間にか手に戻っていた指輪を握り潰し、それを地面にたたきつけるとあたり一帯が一瞬で炎に包まれたと思うと、地中から巨大な手が出てきて、炎龍が地面の中から出てきた。


 貴族たちがブラドのそばに立った


「俺が中ボスを引き受けるから、エリカは、ブラドと決着をつけな」


「任せたわ、私の眷属」


「まかされました」


 そして、エリカが大きなコウモリの翼を広げ、目を赤く光らせ、一気にブラドへと距離を詰め、そして、ひとけりでブラドを十メートルは蹴り上げた。そして上空に蹴り上げられたブラドもマントだと思っていたものが翼へと姿を変え、エリカとよく似た姿へと変わった。気のせいか、若くなったようにも見える。


「ブラド様、ただいま向かいます!」


「おっと、親子げんかに他人が手を出しちゃいけません」


 魔法で空へと追いかけようとした貴族の魔族たちを全員彰が抑え込んだ。だが、そんな中で、誰よりも速いかけが空へと駆けた。


「どうやら、私の眷属につけられた傷が完治していなかったようね。もう息が上がっているわよ」


「たとえ傷を負っていようが、まだお前のような乳臭い娘に負けたりなどしない。 何しに来た。 お前の手を借りるまでもなっ」


 見慣れた武器が、ブラドの胸から突き抜けていた。

久しぶりの投稿です!

夏休み突入したのでもう少しペース上げられると思います!

バイトもちょくちょく応募していますので、決まるまでは早めに投稿します!

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