第二章51 特別授業6
(このままじゃ、死ぬ……)
城から転落した彰、失った前足から血があふれてくる
(やばい、このまま気を失ったら確実に死ぬでも)
目の前がぼやけ、ほんの少し暗くなってきた。
(もともと暗かったけど、ますます暗く……、もう全身の感覚がない。おれ、このまま死ぬのかな)
「……」
(あれ、なんだろう……懐かしい、匂いがした)
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「こんなに、傷ついちゃって」
そこにいたのは、一人の年老いた人間のおばあさんその老人は、この世界で彰が見た初めての人間だった。
「しばらくはおとなしくしてなさいな」
周りを見てみるとやはり魔都の中のようだ。しかし、なんでこんな危ないところにお婆さんが一人で暮らしているんだろ。家の周りを見ると、火柱が4本周囲を囲んでいる。この火柱は、彼女を守っているのか。それとも、閉じ込めているのか。わからないが、森に住まう魔獣たちが入ってくることはなさそうだ。
おまけに、丁寧に包帯を巻いてくれている。流血は止まっていた。休んでいる時間なんてない。
彰は、扉へと走ろうとするが、すぐにこけてしまった。当然だ、四本足から三本足になったんだ。走れるわけがない。
前足が一本ないなら。作ればいい
「おや、すごいですね! 透明な腕を自分で魔法を使って作り出せるなんて! ですがまだじっとしててください! 怪我がちゃんと治ってないんだから」
そんなわけにはいかない、エリカがあんな男の手に渡ってしまう前に。そういえば、あの指輪はどこに行ったんだ。指輪はどこに行ったかわからないだが、仕方ない。
彰は頭を下げ、そして火柱の間を走り抜けていった。森の中は魔獣でいっぱいだった。だが、魔獣どもが、すべてその行く手をふさいできた。
「どけ!」
そう吠えると、奇妙なことに魔獣たちが皆その道を譲った。
(何が起こっている)
その奇妙な光景に、思わず立ち止まってしまった。凶暴なはずの魔獣たちが、彰の声に反応し、その言葉に従った。
「どうしてかはわからない。だけど、すまないが。俺に力を貸してくれ」
? 反応がない、なぜだ
「頼む! 従ってくれ! 今は、どんな力でも必要なんだ! 頼む!」
そういっても、獣たちは理解してくれない。というよりはまるで兵士のように忠実にどけ、っという一言にしたがっているように見える。
「一歩前へ、歩け」
そう言うと、すべての魔獣が従った。命令なら、従うのか、そいつの意志も、理解できているのかも関係なく。こんな力、あったところで、誰も幸せになれないだろう。だが、今はこの力に頼るしかない。うまくいけば、このままエリカも開放できるのではないのか。そう思い、魔獣の軍団はブラドの城へ向けて、歩き出した。
読んでくださっている皆さんお久しぶりです!
近頃課題で目が死んでいる同士Aです
まだしばらく忙しいので不定期のままですが。読んでくれてありがとうございます!




